育児本

妊娠中は妊娠中で、ありとあらゆることが不安でしたが、産んでからの育児についてももちろん不安でした。でも、無事に生まれるかわからないから、生まれたあとのことは生まれてから考えよう、と正直妊娠中の不安に向き合うので精一杯の状態だったのです。それでも、知識ゼロじゃさすがにまずい。ただ、それなりの予習は必要だとは思うものの、あんまり読み過ぎても情報の取捨選択が上手くできなくて逆に不安が募る一方な気がしたので、ものすごく厳選しました。出産前に読んだのは『フランスの子どもは夜泣きしない』というエッセイ本と、1967年に刊行された『育児の百科』、そして私のバイブル『きみは赤ちゃん』の3冊のみ。

『フランスの子どもは夜泣きしない』は、アメリカ人の女性ジャーナリストがフランスに移り住み、米仏の子育て文化の違いを記者&母親目線で書いたもの。泣いたらすぐに抱くのではなく、10分ほど観察をする。そうすると、おっぱいなのか、おむつなのか、はたまたただ泣いているだけなのかがわかるようになり、赤ちゃんも無駄な夜泣きをしない、というもの。その他、フランスでは子どもをやたら子ども扱いせず、ご飯にしても、さながらコース料理のようなご飯を幼稚園/保育園で出す、など。夜泣きにしても食事にしても、親がなんでもほいほいと先読みして動くのではなく、子どもに待つことを覚えさせることが大事なんだとか。そんなにうまくいくんかいなーと思いながらも、実践はできなかったとしてもほんの少しでも頭のどこかにこのことを覚えているだけで、なにかのときのヒントになるのかもしれない、と読み物としておもしろくサクっと読めました。

『育児の百科』に関しては、ツイッターでその存在を知ったのですが、流れてきた文を見て、とても感動し、出産前から勇気づけられました。

「毎年何十万という人が働きながら子を産み、働きながら子をそだてている、それはけっして楽ではなかったろう。妊娠の初期のつわりをこらえながら社員食堂でみんなといっしょに食事をするのは、苦しいことだったろう。外から妊婦とわかるようになってからは、胎児をかばいながら働く親の姿は、同僚や上司からまだるっこく思われたろう。陰に陽に退職をすすめられたろう。彼女たちは、それにたえて子を産んだ。」

「以前の大家族の時代には、古い世代がそばにいてくれた。いまは若い母親が一人でせおわねばならぬ。父親が手伝わなかったら母親はせおいきれない。」

妊娠中は神経症かと思うほどなにもかもに過敏になり、常に心配と不安に支配されていました。が、この本を読むと、心がふっと軽くなるのです。育児本って、あれをしてはいけないとか、これをしなければいけないとかが多くて、そういうものにがんじがらめになってしまう気がしていました。私のような性格だと特にね・・・。自分で自分にプレッシャーをかけて夢にまでうなされそうなことは簡単に想像できる。でも、この本は違いました。昭和に書かれた本ではあるけれど、今の時代に生きる私の心を本当に軽くしてくれる、子育てのプレッシャーから解放してくれる、そして励ましてくれる本。何十年も前に、こんなにも母になる人のことを気遣ってくれる本があったなんて(裏を返せば、何十年も前からの課題が解決されていないとも言える)。もう、この本だけでいい、という気すらしてくる。ネガティブな私をほんの少し強くしてくれる、ありがたいありがたい本なのです。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?