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IKERU展覧会:伝えたいと思っていたことがそのままみんなの作品になっていた

私がIKERUを通じて伝えたいと思っていること。

一言でいえば「花をいかす」。ただそれだけ。
自分の心を無にして、でも感じ取るセンサーは最大にして
花の声を聞き取り、その声に従って、いける。

これは、私自身が自分の師匠である
古流松麗会家元の梶川理仙先生から、学んできたことだ。

特に組織向けのIKERUワークショップをしている時に、よく受けるのが、
「最初にこういけようというビジョンを持っていけるのですか」という質問だ。

これに対して、「私は持たずにいけています」と答えている。

まず最初の枝をいれる。
すると空気が流れ出し、
その空気の流れをいかすために
どこに2本目をいれたらいいかが、自ずとわかる。
それを繰り返す。

枝をいけおわると、
そこに立体の空間が生まれる。
その空間をいかすと同時に
個々の花材もいきるところに
花や葉をいけていく。

そしてあるとき「あ、ここで完成」
という時が訪れる。
個の美しさと全体の調和が
同時に実現しているポイント。

だから、最初に自分の頭の中で
「こういうふうにいけよう」というビジョンがあった上で
いけるのではなく、
花をいける中で、ビジョンが立ち現れる、プレゼンスする。
そしてそれを頭というよりは身体で受け止める感覚。

うまくいけられるかわからない不安や
うまくいけたいという欲があると
事前にある程度デザインしたくなってしまう。
でもそうすると、頭の中にある形が邪魔をして
花の声を聞き取れなくなる。
立ち現れる姿を受け止められなくなる。

だから、毎回、ばかみたいに、ぶっつけ本番。
そして、ばかみたいに、ドキドキしている。
でも、これが大切って、信じているから
花との対話を通じて、
調和が自ずと立ち現れてくる、その感覚を
いろんな人に味わってもらえたらと思っているから
IKERUをやっている。まあ、ばかなのかも。

湯島聖堂でのIKERU展覧会には、
IKERUコミュニティから13名が参加。
1年半近く毎月来ている人もいれば
展覧会で4回目、ぐらいの人もいた。

でもどの作品も、
濁りのないエネルギーが流れていて
花と空間がいかされ合っていた。
前に立つと、身体にもそのエネルギーが
流れ込んでくる、そんな作品群。

私がIKERUを通じて伝えたいと思っていたことが
そしてきっと、いけばなという伝統を
これまで続けてきたたくさんの先人たちも
伝えたいと思ってきたであろうことが、
そのまま作品になっていた。

とってもとってもうれしかった。

Top Photo By 玉利康延


Photos by 下瀬成美


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