【ブックレビュー】THE MODEL

諸々キャリアの見直しの時期に差し掛かり、このタイミングで改めてSaaSの勉強を一からやり直そうとしているこの頃。
カスタマーサクセスとして色々経験してきたことの気づきを改めて整理するといった意味で、2月は「SaaS関連書籍の再読月間」にしてみました。
第一弾は「THE MODEL」。SaaSに携わっている方なら皆さん読んでいる内容だと思いますが、改めてブックレビュー。

【THE MODELとは】
顧客の獲得から育成、拡大までのプロセスを分業制で大きく回していくことで、自社の売り上げ拡大を図っていくためのレベニューモデル。私達がTHE MODELのプロセスを捉えるスタンスにおいて、重要ポイントとしては2つある。

その1.再現性
成功モデルとは、完成したモデルではなく、完成に至る過程で行われた何千という意思決定のプロセスである。プロセスにおいて重要な考えが「再現性」。
大事なのは、プロセスそのものだけではなく、その間にある意思決定のポイント。これを自分のものにすれば環境や条件が変化しても自ら再現できる。プロセスと意思決定のポイントを上手に取り入れれば、THE MODELは新しいビジネスに取り組む人たちにも役立てられるプレイブックになり得る。

その2.ヒューマニティ
科学的なプロセスをいくら導入したとしても、すべての間に介在するのは人間。ヒューマニティを無視してはこのモデルは絶対に機能しない。
▼最新のレベニューモデル
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【レベニュー(循環型)モデルとは】
SaaSに携わっている皆さんは、一度はこの流れは見た/仕組みを作った/経験したことがあるかと思います。改めて整理をすると…。


 1.ターゲット市場に対する認知拡大(コンタクト情報の取得がキー)
 2.リード獲得後、顧客を育成/対象外のステージに切り分け
 3.育成対象者には、適切なナーチャリングにより、商談に繋がるかの
  クオリフィケーションを実施(リードスコアリングやinside sales(以下IS)etc.)
    4.有望リードに対して、営業がアポイント・訪問を実施し、クオリフィケー
  ションが正しいかを確認。商談/受注フェーズへ。
 5.受注後、オンボーディングで顧客がサービスを利用できる基盤を作り、
  トレーニング/コミュニティなどを通じて顧客体験を支える。
 6.顧客満足度が高まった顧客は、リテンションやアップセル/クロスセルに
  つながり、アドボケーターとなるロイヤルカスタマーはサービスの評判を
  口コミで伝え、新しいリード獲得や市場認知に貢献してくれる。


【顧客ステージの設計】
上記を実際の現場オペレーションに落とし込むうえで重要なのが「顧客ステージ設計」。ステージ設計で重要な概念は「チャネル」「施策・コンテンツ」「移行の判定基準」の3つ。
伝えたいメッセージをコンテンツ化し、様々な「チャネル」を使って顧客データを収集し、パーソナライズしたコミュニケーションを行う。あわせて、データを通じて顧客がどのステージにいるかを判断する。顧客が次のステージに移行したことを判定する客観的な「移行判定基準」が必要である。

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【分業化のデメリット】
それぞれの部門毎で個別にKPIが設定される(マーケはリード数、ISは商談/受注数、CSは継続率/チャーン)によって、部分最適(自チームの目標達成のことしか見なくなる)が進んでしまう。

たとえば、ISが無理やり受注/アップセルして、導入後に顧客との連携がうまくいかずカスタマーサクセスでオンボーディング失敗。結果として、顧客に迷惑が掛かってしまうケース等はSaaSあるあるのひとつ。双方の部門で異なるKPIが設定されることによって「目の前の顧客は自社のプロダクトやサービスをどのように使って支援ができるか?」全体最適の面を深く考えずにパスしてしまうことです。社内の業務プロセス視点で作られたチーム体制の場合、「自分たちの仕事の範囲だけやってればいい」という思考が働きがちになってしまいがちなので、ここは変えていく必要がある。

ではどうすれば、顧客視点で双方のチームが「必要な顧客に必要な支援を手掛けるための情報」をパスできるのか?

【グループに分けると、人は敵対する】
社会心理学的な観点として「人は、所属グループを分けた時点で「内と外」と言う判断をして敵対意識を持ちがちであるということ。人間の行動心理として既にあるものなんですね。なので、これは私達の心理として抗えない事実であるということをまず理解しましょう笑

その上で、それぞれのグループ間を良好なものにするにはどうすればいいか?
本書では2つの改善案が記されている。

1.チーム全体一丸で協力せざるを得ない共通目標を設定する
 自社の売上目標を達成することは前提として、顧客に対してプロダクトの
 価値を最大化させていく上で、以下のような「逆の流れ」をイメージして
 「共通のゴール」に向かうための共同作業をする仕組みをつくる。

たとえば以下のような感じ

■CS→開発/マーケ:顧客接点の中で困ること、成功事例
■CS→営業:提案活動の中で期待値設定をミスしていないか?顧客満足度を上げるためにどんな必要なリソースやプログラムが必要か/取り組んでいるか?
■営業→IS:営業にパスされた時の内容と実際の商談に乖離が起きていないか
■IS→マーケ:コンテンツへの感想、効果的なキャンペーンなどユーザーからの
定性的な評価をFB


2.「CHRO(チーフ・レベニュー・オフィサー」全体最適プロセスを見渡す役割を設ける
 顧客のライフサイクル全体を俯瞰して、関連部門をどのように機能させるか。人を採用するのか、techで自動/効率化するのかといった、常に状況をチューニングしながら全体最適を図る役割が必要。

【気づきと学び】
1.特に分業化の件はまさに直に過去経験したことだったので、頷きすぎて首が痛くなった。 
2.全体の売上目標を達成するうえで、各部署で設定されたKPI要素がひとつでも欠けてはならない。この状況を明るみにしたうえで、社内メンバーとの協業関係をいかに築き上げていくかは仕組みとして工夫が必要なポイントだなと。長距離のタスキリレーのように、全長距離のうち、どのポイントに重点を置いて全員で走り切るか、足りないところをお互いに補っていくかが常に議論されているチームづくりが大切。




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