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内受容感覚

ハグをするとハッピーホルモンであるオキシトシンが分泌されるという話がテレビで紹介されたことがありました。赤ちゃんを抱っこしたり、マッサージをすることでもこのオキシトシンというホルモンが分泌されます。わたし達の身体には内部環境を一定の状態に保ちつづけようとする傾向(ホメオスタシス)があり、オキシトシンは身体の内側の状態についての情報を脳へ送ることに関係しています1)。

わたし達が身体を感じる体性感覚は、視覚や聴覚のような身体の外側を感じる外受容感覚(exteroception)、身体の位置や動き、力などを感じる固有受容感覚(proprioception)、そして身体の内側を感じる内受容感覚(interoception)と分類することもできます。これまで内受容感覚というのは内臓感覚だけに重点が置かれていましたが、最近の概念では身体の生理学的状態の感覚として内受容感覚が説明されています。この内受容感覚では空腹感や口渇感、心拍を感じるなどの内臓の感覚だけでなく、筋肉がどのくらいの活動をしているか(muscular effort)も含まれています。マッサージのようにやさしく触れられた時の気持ちの良い感覚も内受容感覚のようです。

内受容の感覚受容器は自由神経終末であり、そのほとんどは身体全体を通して筋膜組織に位置しています。内受容の感覚は固有受容感覚と比べ伝導速度が遅く、脳へと感覚情報が送られる時には固有受容感覚とは違う部分である島皮質と呼ばれる部分へと送られます。つまり、固有受容感覚と内受容感覚は脳内で別々に構築されており、島皮質は感情や情動にも関わっています。

図:wikipediaより

内受容感覚に関連する神経は、固有受容感覚に関連する感覚受容器からの求心性神経よりも、7倍ほど多いとされています2)。身体を軽く触れるようなマッサージであっても身体の内側の広さや流れの感覚、拍動、温かさなどが変化するように感じられるのはこの内受容感覚に関連しています。運動中の身体の状態を固有受容的な感覚だけでなく内受容感覚も意識すると、動きの質やその動きから生まれる感情が変わってくるかもしれません。

参考文献:
1) Autism, oxytocin and interoception, E. Quattrocki and Karl Friston, Neurosci Biobehav Rev. 2014
2) Fascial plasticity – a new neurobiological explanation: Part 1. Robert Schleip, J Bodyw Mov Ther. 2003

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