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九段理江さん外伝「小説家には99.9%の人がなれない」

連載「小説家になりたい人が、なった人に聞いてみた。」は今回も特別版。「小説家になりたい人が、芥川賞作家になった人に聞いてみた。」と題して『東京都同情塔』で芥川賞を受賞した九段理江さんに取材しました。

じつは記事にしたのは、常人でも(まだ)共感できる部分。九段さんのミステリアスな微笑みの中で語られた言葉には、「AI使用率5%」のような物議を醸しそうな発言も。でも、あのおっとりとした口調で言われると、「ああ、たしかにそうかもしれない」と不思議と納得してしまうのです。

声や口調を再生できない記事では誤解を恐れて省いてしまいましたが、このnoteを読んで下さっている方なら、きっと九段さんの言葉を正しく冷静に受け取ってくれると信じ、お披露目します。(前置き長いw。すっかり九段さんのファンになったので、守りたい気持ちが強く……)


それは、この連載お決まりの質問「小説家になりたい人へアドバイスを」を聞いた時のこと。

九段さんは「ふーむ」とちょっと考えてこう言いました。

「小説家になりたくてもなれない人がほとんど。99.9%なれないです。
バレエダンサーや野球選手も生まれもった体格とかなければ、なりたくてもなれないでしょ。小説家は生まれもってのものが物を言うので、あまりなりたいと思わない方がいいと思う」

がーん! 
そんなあ… と私も思いました。が、「九段さん、ヒドイ!」とここで思わないでください。彼女はこう続けました。

「なれたからといっても幸福なわけでもないんですよ、もちろん。小説を書くって、楽しいんだけど、他の人が経験しなくてもよいことを感じなくてはいけない部分がある。たとえば、ほんとだったら考えないほうが、知らないほうが幸せでいられるようなことも、考えたり書いたりする必要がある。そういうことを感じなければいけない人生っていうのが本当に幸福なのかは私にはわからない」

そこには、それでも小説家になることを決めた人の覚悟がありました。

あなたには、その覚悟がありますか?
私はあれから、そのことを自問し続けています。

写真/武藤奈緒美




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