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貧困。助けになれると思い込んでブラジルへ。

大学を休学して、「本気の」途上国支援をしようと、ブラジルに行った。

始まりは、インドでのボランティアだった。大学の仲間と共に、大きなNGOの、家を建てるボランティアに参加したのだが、その活動には、もやもやが残った。ひたすらバケツリレー方式で砂運びやブロック運び。容器は小さく、リアカーもあるのに使わず、非常に効率が悪い。ただただ、時間がかかるだけ。

活動そのものより、参加費に含まれる寄付金の支払いこそが、彼らの助けになっているように感じた。

もっと、自分にしかできない、自分も相手もわくわくするような「支援」がしたいと思って、休学してブラジルへ行くことにした。現地の人の現状を知って、仲良くなったら、本当に必要とされていることも分かる。どこかの誰か、知らない人のために寄付をするより、自分もわくわくする。もっと面白いことができると思っていた。まずは、ボランティア団体を探して活動して、慣れてきたら、自分なりに色々工夫してやってみたいと思っていた。

いざ、ブラジル。


4月末、地球の裏側。
しばらく親しい人の家に泊めてもらいつつ、ボランティア団体探しから始まった。ネットで探したり、教会に行ったり、友人の友人の友人を当たったり…。しかしなかなか見つからない。
ポルトガル語も話せず、特に技術も知識もないのに、一人で日本から来て何ができると思っていたのか。どんどん時間は過ぎて、焦る、焦る。大学を休んで、ただブラジルでだらだら過ごしているだけのような日々。慣れないうちは、一人で散歩もできず、ほぼ唯一の知り合いは、その泊めてくれている人だけ。孤独感も募る。苛ついて、感情的にもなる。
いつまでもその家に居候させてもらう訳にもいかないが、部屋をどう探せば良いのかも分からず。

何度も、もう諦めて日本に帰ろうと思った。


でも、しばらくしたら、少しずつ、いくつかのボランティアに参加させてもらえるようになった。色々な人に会い、色々な場所に行った。

だがしかし、
何もできない。
やりたかったことを見失った。

子どもに放課後勉強を教えている所に行っても、ほんの少し覚えたポルトガル語では、教えるどころか、話を聞いてあげることさえできない。
とりあえず、仲良くなるきっかけが欲しくて、ぶんぶんごまや、手作りのパペットを持って行ったりもしたけど、むしろ、勉強の邪魔…。

元ドラッグ使用者の施設でも、他のボランティアたちが聖書を一緒に読んだり、話を聞いてあげたりしている中、小さくなって座っていることしかできなくて。神様は本当に彼らを救えるのかしらとか、考えにふけって時間をやりすごし…。

裁縫教室の手伝いに行っても、ほぼ手伝いはいらなくて、むしろ一緒に裁縫を教えてもらって、布をタダで使わせてもらうことに罪悪感が…。


他にもいくつかのボランティアに参加させてもらったけれど、
心がわくわくしなくなっていって。

必要とされていないから、別に行かなくても問題なくて。
何もできないのに、ただ辛い状況にいる人達のところに行くことは、決して楽しいことでもなく。

子どもたちのところに行って、子どもが自分のところにだけ寄ってきてくれないのが怖くなったりもして。

それでも、もう少しだけ頑張ってみようと、ポルトガル語レッスンに行き始めたり、色々手作りしてみたりもしたけど、

ある日、最寄駅まで行って、
ああ、なんだか、もう無理だなと思った。
もう、いいや、
自分が今、好きなことしよう
何か、楽しいと思えることしよう と。

諦めとも、失敗とも、困っている人を見捨てた とも言えるかも。


でも、
ここで知ったことはずっと忘れない。
スラムに住む子ども達の元気いっぱいの笑顔、
一方で、ビルが崩壊してテント生活している子どもたちから伝わって来たストレス、
ドラッグのせいで明らかに目がおかしいけれど、どこか寂し気だったほぼ同い年の少年、
道にマットレスを引いて寝ている人達、
スマホを頂戴と手を伸ばしてきた人、
ギターを弾きながら歌ってくれた人、

いつになるかは分からないけれど、いつかまた、こういう活動に戻ってこられたらいいと思っている。


来る前は、とりあえず、現地に行って、奮闘していればなんとかなると思っていた。とにかく早く動きたかった。のんびりしていたら、気持ちが保てなくて、動けなくなってしまうことを恐れた。
何の技術もないし、ポルトガル語だってそこまで勉強していなかったのに、何かできるような気になっていた。
先進国に生まれたのだから、自分は「助ける」側なんだ、「助け」られるはずなんだと、勝手に思い込んでいたのかもしれない。

渡航直前、ある方に言われた。
「助けなきゃ、じゃなくて、勉強させてもらいに行くと思えばいいよ。先進国に生まれたというだけで、自分たちの暮らしの方が『良い』とみなして、助けるべきだと思うのは違う。色々な経験をさせてもらって、勉強させてもらいに行くと思えばいいよ。」

全く、その通りだった。

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