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セクシーに解決するフードロス

先日のことです。

国際舞台デビューを果たしたばかりの小泉進次郎さんが
「環境問題は楽しく、そしてセクシーに取り組んでいかなきゃね」と言った時、
多くの人々は

せ、せ、せくしぃ!?

……とギョギョッとされたのではなかったでしょうか。私もです。
思わず久しぶりに広辞苑を開き、そのワードに他意がないかを調べてしまったほどです。
辞書が教えてくれた定義は下記のとおり。

「性的魅力のあるさま。肉感的。」

やはり我々の「ギョギョッ」は、それほど見当違いではないようです。
地球がやがて滅びるかもしれないという大問題を、
肉感的に蠱惑(こわく)的に、解決できるかもしれないという発想自体は
ある意味、すごいことかもしれません。
そこに具体案があればもっと良かったと思うのですが、言葉を商売道具にする身からすれば、
新たな表現を用いてその問題に人々の目を向ける、というのは
なかなかクリエイティブではないかと、ちらっと思ったりします。

しかし、同時に思い出した記事がありました。
昨年6月、ジャーナリストの仲山今日子さんが書かれた記事です。
世界的に有名なイタリア人シェフ、マッシモ・ボットゥーラが、
パリに新しいレストランを出したというニュースでした。

美しくスタイリッシュな内装のガストロノミー「レフェットリオ」は、
昼間は有料で世界中から集まるフーディーを相手にし、
ディナータイムは路上生活者に無料で料理を提供するというのです。
しかも、
①使用食材は廃棄処分前のものを多用してフードロス問題解消を目指し、
②店を訪れる元路上生活者から、志の高い人をスタッフとして雇用していると。

さらにおまけがあって、
③世界中の有名シェフたちがここの厨房で、短期でいいから働いてみたいとボランティアに押しかけており、
さながら、料理シンポジウムのような態をなしているというのです。

(記事はこちら)
ボランティアが殺到 世界一のシェフが手がける「無料レストラン」

これは!こんなすごいやり方があったなんて!
これこそ、なんだかよくわからないけど「セクシーに楽しく環境問題(フードロスは環境破壊に繋がります)の解決を目指し」ていると思うし、
きちんとビジネス的収支での成功も狙うという点でも、
素晴らしいぞと感動したのでした。
みんながこぞって絡みたがる、つまり、
この活動に参加すると楽しそうだし、参加してる俺(私)、なんかイケてる
……と思わせる点も、すごい。
すごいすごい、すごい。
一休さんのように見事なソリューションに痺れ、しばらくの間、このレストランを特集したいといろんなところで言い続けました。

最近、フードロスについてリサーチをする機会がありいろんな方にご意見を伺っていたのですが、
「Mr.CHEESECAKE」を主宰する田村浩二さんがおっしゃった言葉が印象的でした。

(フードロスを考えるNPO団体などの一部は)自分達がいい事してる!て思うあまり、少し攻撃的になったりもするので、常に客観視して現状を見つめる目を養わないと解決策は浮かばないかもなって思ってます。
そして基本的にはフードロスに貢献する事が金銭的なメリットにも繋がるようにならないと大きな企業は動かないと思ってますし。
まずはムーブメントを作ってそれが企業価値を高めるものにならないとダメでしょうなー。

確かに……。
レストランビジネスのあり方に疑問を呈して、新たな飲食ビジネスを始めた方ならではの言葉だと思います。

環境問題やフードロスは、
ビジネスにすることで、「他人事」だった問題も「自分ごと」になるんではないかという気がします。
「儲けに走ってる」とか「売名行為」とか、
あきんどに何故か厳しいこの国ですが、

お金も名声も成功も環境問題解決も全部手に入れてやるぜ!

と豪語するセクシーあきんどが登場して、
エッジィな環境レボリューションを起こしてくれたら面白いのにな。
お前がやれよ? そうですね。考えてもいい時なのかもしれません。

#フードロス #COMEMO #料理


フードトレンドのエディター・ディレクター。 「美味しいもの」の裏や周りにくっついているストーリーや“事情”を読み解き、お伝えしたいと思っています。