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江戸時代の妄想力に私たちは勝てない

今日、なんの日か知ってますか?

坂本龍馬暗殺の日

です。
慶應3年11月15日(1867年12月10日)、
京都の近江屋で、33歳の生涯を無念な形で閉ざされた龍馬。
来月は赤穂浪士による忠臣蔵の日もあります。
ほんの少し歴女の私にとっては、胸がザワつく季節です。

ところで
暗殺の前年には、同じく京都伏見にある寺田屋でも殺されかけた龍馬。
ずーっと暗殺の気配を薄々感じながらも京都に居続けたというのは、
肝っ玉が座ってるのか、使命に燃えていたのか(たぶん両方)。
が、先日食事をご一緒した年配者が言うには

写真が今ほど出回ってなかったからだよ。

あ、なるほど!
令和元年の今、「坂本龍馬、暗殺」と打ってGoogle先生にお尋ねすると、
10秒と経たないうちに
相当詳しく龍馬の最期を知ることができるのですが、
江戸末期、写真は希少品。
寺田屋や近江屋に潜入したヒットマンは、
宿に押し入ってからも

坂本先生!

と声を発しながら目の前の相手の表情を確かめつつ、
確実に目標を仕留めるべく動いたそうな。
いきなりワシ(坂本龍馬)が斬られるなんてへへ、と、
もしかしたらそこに安心があったのかもしれません。

以上、食となんの関係もない話です。

が、私はこの話を聞いた時にふと、
人類史における写真の登場って

人間の想像力にも影響してるよな、絶対

と感じました。
例えば、龍馬と同時代に生きた西郷隆盛。
あの有名な肖像画が実は本人とは似ても似つかないものだってことは有名な話ですし、
(顔が売れて暗殺されやすくなるのを防いだという説アリ)
憧れの歌舞伎役者、お伊勢参りの華やかさや楽しさ、黒船に乗っていた異人の形相など、
写真が広く一般的に広まるまで
人々はみな、伝聞と絵、そんなものを手がかりに、
まだ見ぬ人、場所、モノ、そして味わいを
必死で妄想したり想像したりしていたわけです。

逆に、今の時代にこういうことが起こると、
妙に新鮮でびっくり。
私は昔、稲垣潤一さんのお顔写真を初めて見るまで相当長い間、
歌声の主の顔を
今でいう羽生結弦さんのような感じだと勝手に思い込んでました。
(稲垣さんのお顔がどうこうという話じゃないです)

数年前にNHKでやってた

妄想ニホン料理

という番組。大好きでした。
日本の料理を、三つのヒントだけを聞いた外国人が
勝手に自らの解釈で作り上げるというもので、
「大学芋」の回とか抱腹絶倒の面白さでした。
人間は、知らないもののことでも
ことほどさように、いじらしく妄想しないではいられない、
ましてや美味しいものと聞けばなおさら!
という事実を、ありありと表現していました。

で、前出の80歳。
彼曰く、

戦後間もない頃、初めて食べたアイスクリームの美味しさときたら!
冷たいとか素晴らしく美味とか聞いて、いろんな想像をしていたが、初めて舌にのせた瞬間、大袈裟でなく失神しそうに感じたの。

だそうです。

私は歴女ではありますが、
テクノロジー推進派でもあります。
最新ガジェット、だーい好き。
SNSも仕事柄やりますし
Instagram、Facebook、Twitter、そしてnote。
ベースは同じ人格でありつつ、ベクトルは変えて展開しています。
その方が、読んでくださる方にとって読みやすいだろうから。

しかし、プリミティブな感情を抱きつつ
初めての食材や料理に触れるときは、
そういうものを全部取り払って
できれば事前に最大限の妄想タイムを持ちたいなぁというのが本音です。

先週、LAのレバノン料理店で食べた

ババガヌーシュ

焼きなすの香り、フムスに似てる、スパイシー
という三つの要素を聞いていましたが、
初めて出合う味も食感も、想像を超えてました。
知らない料理&前知識が一切ないシチュエーションは
逆に昨今では贅沢なのかもしれませんね。

開国し、SNSですっかり狭くなった世界を
龍馬先生が見たら何て言うかなぁと考えつつ、今日を偲びたいと思います。

#料理 #COMEMO #坂本龍馬


フードトレンドのエディター・ディレクター。 「美味しいもの」の裏や周りにくっついているストーリーや“事情”を読み解き、お伝えしたいと思っています。