見出し画像

飲食にドMを求める人が多すぎる

日本にデビューしてまだ1年という、
Rococo Tokyo White」というビールに注目しています。
このロココ、ファウンダーは30代の男子3人組。
カナダ人とアメリカ人、そして日本人という組み合わせで、
全員、金融やマーケティング畑の出身です。
つまり、飲食の経験もゼロなら、造り手としての修業もゼロ。
そんな彼らが、

こんなビールがあったら楽しいのに

という発想で創り上げたピュアでラグジュアリーなテイストは、
デビューわずか1年ながら、
フーディーが思わず「Wow!❤️」と声を上げるような、話題のファインダイニングでのみ、
味わうことができます。
小売もオンライン販売も現時点では行わず
レストランでのみ、という展開には、
彼らの専門知識やクールな作戦も感じられます。

思えばここ最近
飲食の世界でたびたび考えさせられるのが、
日本という国は初心者や未経験者に寛容なようでいて、実は

何よりも苦労人が好き

ということ。
「大成功を収めた“元”初心者」には賛辞を惜しみませんが
基本的には、
コツコツと長年修業して
黙って鍛錬の時に耐え
夢が実った後も変わらず、言葉少なに技で勝負

……みたいな料理人や職人が大好物。
(と、私には感じられるのです)

もちろん、伝統工芸に近い和菓子や日本料理、フレンチガストロノミーの世界では、

修業してない奴が何も語るな

みたいな部分があっても当然です。
技なくしては何の表現も叶わないので。

しかし昨今、その頑ななまでの日本人の趣味嗜好が災いし、
センス抜群の天才予備軍的なシェフやパティシエたちがどんどん海外に流出していっているような気がしてなりません。

現在、飲食の世界にはさまざまなコンペティションがあり、
中でも、35歳以下の料理人の器量と可能性を競う「RED35」や
30歳以下の料理人の世界の頂点を決める「Young Chef」などは、
「親方の元でコツコツ修業15年」をやっていると、出場すら出来ないということになります。

「伝統を曲げてまでそんなの出なくてもいい」

のかもしれません。
しかし悔しいのは、その間にも、世界中の才能溢れる若者が光を浴びながら表舞台へと上がっていること。
海外発の日本料理さえ、最近では見かけるようになりました。

また、前述のRococoのような
専門職技術者ではない人たちによる試みも、
飲食業界では目立つようになった気がします。

食の世界で、大谷翔平や大坂なおみのような
世界に通用するスターの出現を願うなら、
彼らが歩んだのと同様、正攻法にのみ縛られていては、殻を破ることはできません。
どんな例外も含め本人の努力や意志を尊重し、
前例を理由にチャレンジの芽を摘んじゃダメ。
……そんな覚悟を、そろそろ周りも持たなくてはいけない時なんじゃないでしょうか。

Photo by YUKA YANAZUME

#料理 #令和時代にやりたいこと #レストラン #ビール

フードトレンドのエディター・ディレクター。 「美味しいもの」の裏や周りにくっついているストーリーや“事情”を読み解き、お伝えしたいと思っています。