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【916/1096】「人の世話をする」という防衛

心理的な防衛反応のひとつに、迎合がある。
子どもの頃は「闘う」というのは本能的に考えられないこと(ウサギがライオンに闘いを挑むことはないのと同じ)なので、身体の神経システムが選択肢から除外するということが起きる。そして、子どもにとっては家庭が逃げ場となるが、そこが逃げ場として機能しない場合、逃走も除外される。
すると、取り得る防衛は「動かなくなる」「感覚を麻痺させる」「従順になる」しかない。

そして、その迎合のひとつに、「人の世話をする」がある。
人の世話をするのは、一般的には「いい」ことだと認識される。特に女の子はジェンダー役割で、世話をすることを強いられる傾向にあり、人の世話をする子は「いい子」と褒められたりする。
だから、それが防衛反応であるということに気がつかないでそのまま大人になる。

周りの人の世話をすることに夢中になる。
他者の世話をすることが「私」であると感じる。とても自然なことで、しないなんて考えられない。
関係性が変わっても(帰属する組織が変わっても)いつもなんらかのお世話をする役が私にまわってくるし、私はそれに徹することができる。
ものすごく細部まで気を使ってお世話することが得意だけど、そこまで感謝されない。
疲れ果てるまでやってしまって、もう嫌だと思うこともあるけど、結局この役割しか自分にはできないと思う。
人のことより、まず自分のことというのは、ものすごく自分勝手で自己中心的なことに感じる。
具合が悪い時でさえ、人の世話を優先して、全然大丈夫じゃないのに大丈夫と言ってしまう。
誰からも「ありがとう」と言ってもらえないと、時に傷ついてしまって、感謝しないことに腹が立つこともある。

これは、私の幼少期からの防衛反応である。
これが防衛反応であることに、私はまったく気づけなかった。気づいたのは、身体が悲鳴をあげて、もう耐えられなくなり本当に動けなくなったあとである。
ほとんどの関係性において、同じパターンで関わっていたため、私はこれを自分の性格だと思い込んでいた。

家庭の中に不和や不調和(暴力や病気の家族がいるなど)があり、愛着が安定しなかった場合、自分が親を保護する役割をとることがある。
この防衛反応の問題点は、「自分の欲求にはほとんど注意を払わず、他者に献身する」という点である。
世話をされるより、世話をする方が快適であると感じて、他者から世話を受けることをよしとしない。
誰かから世話(助け)を受けると、不快で、不信感がわき、その助けを拒絶する。

これは、健康的で良好な関係性を築くことができないという点で、深刻な問題となる。
どんなに周りに世話を焼いても、本当の意味で他者とつながれない。
なぜなら、自分とつながっていないからである。
自分のニーズを自分で満たすという自分を大切にすることが内在化されていないので、主体がない。
世話をする人がいなくなると、自分が無力に感じるので常に誰かの世話を焼いているが、自分の中で虚しさが消えることがない。

また、世話をすることで他者をコントロールするような行動パターンに発展することもある。この場合、保護能力としては非常に高いので、これを肯定的に捉えられることが多い。
人に拒絶されることは少ない。特に子どもの世話をするとき。
けれども、世話をして、「消耗する」ということが起きる。自分を満たしていないから。
これが防衛反応としての世話をするである。

「自分を他者に完全に捧げなければならない」という信念があるので、世話をする相手に問題があっても(自分を害する相手など)ずっと世話をし続けてしまう。
そして、自分が期待した反応をしてもらえないと混乱することになり、感謝してほしいと思っているのに、そうしない人のことを責めたりする。しかし、そのようにして強制した感謝を受け取っても満足することはできない。

久しぶりに会いに行ったら、実家の母親が不平不満ばかり言う、などは典型的な例である。

ちなみに、防衛反応だからよくないことというのではない。
人の世話をするのは、人間として必要な能力であり、バランスがとれていれば問題ない。

けれども、人の世話をすることで、疲れ切ったり、消耗したり、感謝をしてほしいという気持ちが湧いてくるようであれば、それは調整が必要ということだ。
自分の内側に意識を向けて、自分が大切にしたいことに気づき、自分の欲求を満たすことにも世話を焼く能力を使えばいいのである。

でもまあ、けっきょくのところ、息に教えてもらうのが手っ取り早くて確実だというのが私の実感である。
人の世話をしていて、息が上がったら、もう自分に適っていない。
だから、調整すればよい。
実にシンプル。

では、また。


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