第11回| 21世紀の価値は需要と供給では決まらない

新しい時代のお金の教科書」を1話無料で読めるマガジン。前回は「ビジネスはモノからコトへと変化している」という話でした。

今回は、21世紀に求められるビジネスを見ていきます。編集秘話では、「思想家山口揚平ができるまで」。山口の幼少期をひもといてみます。(強烈なので有料です…!)

-------

 ビジネスの「習慣化」についてみていきましょう。

 20世紀では栄えてきた脳への刺激を利用した習慣化ビジネスですが、ジャーナリズムや政府やNPOの介入により、減少傾向にあります。

 タバコ業界でも、大手P社は将来的な紙巻きタバコからの完全撤退を掲げていますし、大手チェーン店は異物混入により、安全への配慮が求められていますし、米国でも「オバマケア」など公的な機関への保険制度の移行が行われています。

 20世紀のビジネスは標準化によってプロセスを単純化し、画一化によって商品を匿名化、習慣化することで、顧客の生命すなわち有機物を無機化する行為でした。

 これは、もう少し概念的に見ると貨幣と資本という切断機によって、有機物を無機物に変える行為そのものでした。

 では、21世紀の社会的欲求を満たしたビジネスの例をいくつか見ていきましょう。

価値概念の変化──需要と供給から文脈価値へ

 価値流通の手法が変化すると、価値概念も変化してゆきます。

 図を見てください。

 需要と供給で決まる一般的な価値概念は経済のお金の定義ですね。

 消費者の需要量と、生産者の供給量で価格が決定するというものなのですが、取り扱われる財やサービスが承認欲求を満たすものへと変化する過程で、この前提は当てはまらなくなっていると思います。なぜなら、承認欲求を満たす際に、消費と生産という境界線は曖昧になっていくからです。

 例えばホームパーティーの参加者はみんなが消費者でみんなが生産者でしょうか?もちろんわけられません。参加者すべてが場を盛り上げ価値を創り出し、それをみんなでわけあうのです。

 文脈価値は、つながりと物語の二つの要素よって成り立っています。

 空間軸的には送り手から受け手に、時間軸的にいうと過去から未来へと対象物が移動する際に価値が生まれます。つながりとは財に関係する人間間の関係であり、物語とは一定の期間を経ることによって蓄積される価値のことです。すなわち文脈価値とは、時間の連続性と他者との一体性の複合体なのです。

21世紀に人が求めるもの──社会的欲求

 それでは、21世紀の新しい産業構造について話しましょう。

 21世紀の消費行動は、「機能消費」と、「つながり・物語消費」に明確に分かれてくると思われます。それを前提とすれば、今後、業界の構造は、「何を売っているか(モノ)?」ではなく「何の欲求に応えるか?(コト)」を中心として区分けするのが重要になってきます。

 さきほどのユニクロやセブン&アイなどはインフラ化し生存欲求のために機能的に消費されていきます。

 そして社会的欲求の段階が、二一世紀のビジネスです。ユナイテッドアローズやSHIPSなどはユニクロと同じ衣服を提供していますが、機能ではなく社会的欲求つまり憧れや承認、つながりを提供しています。

 ですから、これらの産業をみてゆくときには何を提供しているのか、という業界軸ではなくどういう欲求に応えているのかを見ていく方が有効だというわけです。

 社会的欲求を憧れ、承認、つながりの三つに分類し具体例をあげてみましょう。


憧れ──下着ではなく憧れを売る

 女性の下着メーカーのヴィクトリアズシークレットは、デザインや機能性ではなく、モデルに芸能人を登用することによって、憧れや自尊欲求をくすぐるビジネスで、売り上げ約80億ドルまでに成長しています。

 下着という商品の特性をよく見切って、デザインや品質のよさよりも、ミランダ・カーなどトップモデルを起用することにフォーカスする戦略をとり、手の届かないくらい美しいモデルたちと同じ下着を自分がつけている、という自己投影の特別な感情を抱かせるブランドとなりました。

 女性をターゲットにする場合、憧れの人への自己投影を通して自尊心を満たすビジネスは枚挙に暇がありません。

 Instagram も同じです。

 他人に見せるために消費する、という評価経済の市場をInstagram がネット上に創出しました。

 これは、かつてBMWを駆って街へ繰り出したのと同じことであり、Facebook は、「いいね」がつくようなアクティビティ、ライフスタイルを意識させ、 Instagram は「見せる」ために写真を撮る文化を創りました。ナイトプールからウユニ湖、ローストビーフ丼、善光寺、海外の絶景スポットなど一見してフォトジェニックな物を流行らせました。

 これからは見栄え重視の消費者がいることに留意しないと、企業は戦略を誤りかねません。例えば、英会話などは昔から出会いの場、習っている自分を見せるという側面が強く、英語を習得するのは実は二の次の目的でした。そういう消費者の本質的な欲求をおさえた会社が勝ち残っていったのです。

 21世紀には、「芸能人」などというくくりはなくなります。メディアに出る「芸能人」よりも、100万人のフォロワーを持つひとりの普通の個人の方に人は憧れを抱くのです。

 生存欲求から承認欲求(肯定を求める気持ち)の変化は、21世紀を取り巻く様々な環境の変化として現れています。

本文:山口揚平(新しい時代のお金の教科書

ーー

<編集秘話>

 今回のメッセージは「価値は、需要と供給で決まる一般的な概念から文脈価値へと変化している」でした。

 今回もここまでお読みいただきありがとうございます!次回は、2/26「承認がビジネスになる時代」についてです。

 編集秘話では「思想家山口揚平ができるまで」についてお話ししますね。

 山口揚平に直接会われた方はお分かりかと思いますが、事業家とも学者とも分類しがたい存在です。それはなぜかというとあらゆる物事を繋げて有機化させる「メタ思考」という天才性の持ち主だから。

 「なんでこんな風になるのか?」については語られてこなかったのですが、ある取材で紐解かれた幼少期がとにかくすごかった…!

--ここからが有料部分--

この続きをみるには

この続き:542文字

第11回| 21世紀の価値は需要と供給では決まらない

大西 芽衣 | Mei Onishi

100円

この記事が気に入ったら、サポートをしてみませんか?気軽にクリエイターを支援できます。

note.user.nickname || note.user.urlname

いつもお読みいただいて、ありがとうございます。 「読んだよ」の気持ちで♥を、「役に立ったよ。もっと書いて」の気持ちでサポートをいただけると、すごく励みになります…!

ありがとうございます!(*・・*)
6

[note版]新しい時代のお金の教科書

モノをお金でやり取りする“資本主義”から、 コトを時間でやり取りする“時間主義”、 モノを信用で直接やり取りする“記帳主義”、 最後にコトを信用でやり取りする“信用主義”へ —。 【 今、お金を中心に大きな転換が起こっています。 】 お金の歴史と仕組み、変化、未来まで...
コメントを投稿するには、 ログイン または 会員登録 をする必要があります。