J2-第40節 水戸ホーリーホック対愛媛FC 2019.11.10(日)感想

 J2第40節、水戸ホーリーホック対愛媛FCの試合をざっくりとふりかえっていく。

 前節のFC町田ゼルビア同様、水戸のシステムは[4-4-2]。ゆえに愛媛は後方での数的優位とウイングバックがフリーになりやすい利点を得られる。前半たちあがりには、田中裕人選手や山﨑浩介選手から長沼洋一選手へのロングパスがとおって、水戸のペナルティーエリア内まで進入する場面がみえていた。ただ町田ゼルビアとは毛色のことなる水戸の対応にあって、左サイドからの前進はむずかしくなっていた。
 水戸のサイドバックはウイングバックをつかまえにいかなかった。代わりにサイドハーフが寄せにいく。サイドバックがつかまえにいくとその背後が空いてしまう。その空間に愛媛のシャドーが流れていってパスを受けると、マークするためにセンターバックが中央を空けることになってしまう。だからサイドバックはでず、サイドハーフが奔走する。もちろんウイングバックにボールをあつかう時間をあたえるが、前線にパスの出し所がないので行き詰まりやすいからOK。さらに、となりあうセントラルハーフ――愛媛左サイドに対して右セントラルハーフの白井永地選手の連動した守備によっても、愛媛の攻撃をおしとどめていた。下川陽太選手へ寄せにいく福満隆貴選手の左斜め後方へ白井選手が位置どることで中央へのパスコースをけし、バックパスをださせるようにしていたのだ。そして水戸はバックパスをスイッチに2トップからプレッシングをかける流れになっていた。
 左サイドからの攻撃が封じられた愛媛。だが先述したように、右の長沼選手からチャンスをつくっていった。攻撃をやりなおすためにボールを戻すとき、水戸のブロックはスライドして愛媛の左サイド側に寄っているため、右の外側に張る長沼選手がフリーになっている。彼へすばやくロングパスをだして愛媛は水戸陣内へ攻めこんでいった。また、8分にはバックパスにあわせてプレッシングをかける水戸をいなして、疑似カウンターぎみにチャンスをつくった。ペナルティーエリアへのパスがあわなかったので決定機にならなかったが、水戸の右サイドバック浜崎拓磨選手をうまくひきだすことに成功した場面だった。ところで、田中選手や山﨑選手のロングパスの質がかなりよかった。サイドのひらけたところにロングパスを送るのも充分だが、この試合では、あまり空いていなさそうなところへもパスをだしていていてすばらしかった。

 水戸のボールのすすめ方は前線へのロングボール。おもに小川航基選手めがけてハイボールを蹴りこみ、こぼれ球を回収する。回収できなくとも、すぐさまプレッシングへ移って愛媛陣内でのボール奪取を狙っていた。愛媛がよくひろえていたので、水戸が高い位置からプレッシングをかける場面がおおかった。しかし愛媛はそのプレッシングをかいくぐってアタッキングゾーンまで攻めこんでいた。ただ、ペナルティーエリア内へ進入できても、中央をかためる水戸の守備をまえになかなか決定機はつくれなかった。空中戦につよい西田剛選手やセットプレーの機会を活かしたいところだった。
 20分を過ぎたあたりから、水戸はセンターバックから前線へのパスだけでなく、サイドバックとサイドハーフのところから突破する攻撃もみせはじめた。ここで4バックと3バックのかみ合わせの有利不利が反転する。4バック側はサイドにふたりいるが、3バック側はウイングバックひとりになる。なので愛媛はシャドーの選手がいかにすばやくサイドバックへ寄せられるか、はたまた[5-4-1]ブロックの2列めの位置につけるかが重要になる。ということで、近藤貴司選手と禹相皓選手がよく走っていた。

 0-0のまま前半を終える。ハーフタイムに水戸が選手交代をおこない、黒川淳史選手に代わって清水慎太郎選手が出場する。
 後半たちあがりしばらくは、愛媛が水戸陣内でプレーする。水戸の中盤でボールを奪ったり、自陣でのボール奪取時にファウルを受けたりする場面もでてくる。54分にはGK岡本昌弘選手と下川選手がフリーキックで相手の隙をついていた。右サイド側に人をあつめてロングボールを入れるとみせかけて、左サイドにひらいた下川選手が高い位置でパスを受けた場面だ。たしかファジアーノ岡山との試合で、似たようなトリックプレーをくりだされていたのをおもいだした。
 ということで、水戸は前半にくらべて高い位置からプレッシングをかけにいく機会がなくなっていた。ただ、バックパスをきっかけに仕掛けていくプレッシングで愛媛をおしこむ場面もあった。

 愛媛はセットプレーから決定機をつくっていた。ただ、決めきれないでいると、隙をつかれた形で水戸に先制されてしまう。
 62分。野澤英之選手が前線へパスをだそうとしたところ、芝に足をとられたのか蹴りそこなって倒れこんでしまう。味方がボールを回収してGK岡本選手へ下げれば、試合をいちど切るためだろう、タッチラインめがけてけりだす。が、ミスキックになってしまったのか、はたまた負傷者がいるのだから外へだしてくれろということなのか、ボールは相手選手にわたる。ひろった木村祐志選手は、愛媛の陣形がそろっておらず、かつ水戸のアタッカー陣は準備ができているため、すぐさまドリブルでしかけ、オーバーラップしてきた外山凌選手へパス。外山選手がニアゾーン深くからパスを折り返したところ、茂木力也選手に倒されてPKを得る。小川選手がキッカーをつとめ、しっかりと決めきった。
 あまりにも苦しい失点だった。自分たちがペースを握っていただけに、意想外な形で奪われた1点は痛恨だった。リスタート後にはミスがでてさらに水戸におしこまれてしまう。
 そんなぎこちない状況をかえるべく、67分、野澤選手に代わって神谷優太選手が出場する。ボランチにはいり、水戸のブロックにできる空間へ顔をだしてビルドアップを助けていた。
 ペースをふたたびつかんだ愛媛だったが、76分、後方でのパス交換のさい、清水選手の的確なプレッシングにあってボールを奪われてしまう。清水選手はドリブルでペナルティーエリアに迫ると、キーパーとの1対1を制して追加点を決める。
 GK岡本選手は自身左側のシュートコースをけして、右側へ蹴らせるようにしていた。もしグラウンダーで流しこむようなシュートであればとめていたかもしれない。コースを限定されながらも、しっかりうかせたシュートをはなった清水選手の冷静さと技術に感服。そして悔しい。

 2点を追う愛媛。丹羽詩温選手、藤本佳希選手とつづけざまに攻撃的な選手を送りだして裏狙いの意識をつよくする。しかし、間延びしたライン間をつかれておしこまれてしまう場面も。それでも86分には茂木選手のロングスローから、近藤選手がゴール前でシュートの大チャンス。しかしGK村上昌謙選手がビッグセーブをみせる。90+3分にはペナルティーエリア内で下川選手がフェイントでひとりかわしてシュートをはなつが、ここはキャプテン細川淳矢選手が死守。こぼれ球を丹羽選手がボレーで狙うも、無情にもボールはたかくういてしまう。試合は2-0のまま終了した。

 先制されるまでは愛媛FCの試合だった。だが、それからは水戸ホーリーホックのつよさを見せつけられることになった。もっとも、水戸からすれば試合をとおしてしっかり守れていたので、わるい内容ではなかったのかもしれない。存分にやりあっていただけに、わずかにとどかず勝てなかったのは無念。残留が決まったのはよかった。
 今週、河原和寿選手の退団が発表された。言葉がみあたらない。河原選手のコメントをとおして伝わる決意をまえにして、ようやく絞りだせるのはふた言。いままでありがとう。またね!
 最後までお読みいただき誠にありがとうございました。

 試合結果
 水戸ホーリーホック 2-0 愛媛FC @ケーズデンキスタジアム水戸

 得点者
  水戸:小川航基、64分 清水慎太郎、77分
  愛媛: