J2-第18節 ツエーゲン金沢対愛媛FC 2019.06.15(土)感想

 北陸に乗りこみ愛媛FCが対するはツエーゲン金沢。次節のアルビレックス新潟戦は、ファッション雑誌『egg』とコラボするという。その告知画像で4選手がギャル男になっていた。ギャル男。
 そのうちの1人がJリーグで令和第1号のゴールを決めた元愛媛の杉浦恭平選手だった。元気そうでなによりだった。ところでギャル男ってまだ市民権をえているのでしょうか? マジ絶滅危惧種な気がするって感じぃ? みたいな?
 ということで、J2第18節、ツエーゲン金沢対愛媛FCの試合をざっくりとふりかえっていく。

・相手の土俵にあがらない

 実力に敬意をはらい、相手の土俵にあがらない戦い方を選択した愛媛。ロングボールを蹴ることがおおかった。ここ数節の愛媛の戦い方の流れではあるのだけれど、こと金沢戦では意味合いがすこしちがうようにみえた。
 金沢は球ぎわで激しくいける選手がおおい。強烈なプレッシングからボールを奪って攻撃に移っていく。ならば球ぎわをつくらせなければいい。愛媛は寄せられるまえに前線へロングボールを入れていた。この試合、愛媛の1トップ2シャドーはハイボールに競れる選手たちだった。
 金沢はボール非保持のときにおもしろいふるまい方をしていた。【4-4-2】の布陣なのだけれど、セントラルハーフの大橋尚志選手は吉田眞紀人選手をマークして最終ライン近くまで下がることもあり、5バックぎみになることがおおかった。またもう一方のセントラルハーフである藤村慶太選手はゾーンを守る意識がある。
 両サイドハーフは内側にしぼり、クルーニー選手とともに愛媛の3バックにプレッシングをかけにいく。そして加藤大樹選手は野澤英之選手をマークしていた。金沢はボール非保持のときに【5-1-3-1】ないし【4-2-3-1】にみえる形になっていた。

 金沢はボールをまえから奪って攻めにつなげたい。なのでフォアチェックにいくのだけれど、球ぎわをつくるまえにロングボールを蹴られてしまう。となるとショートパスを見越してコンダクターの野澤選手へ寄せていっても背後を突かれてしまう。そして愛媛の前線はハイボールに競れる。競り勝てなくとも金沢のディフェンス陣が余裕をもってはじき返せないようにできる。ということで間延びしがちな金沢の2ライン間で愛媛の選手たちがボールを回収しやすくなる。
 前線と後方とが分断する隙をついてロングボールを入れ、こぼれ球を回収。そのまま相手陣内での攻撃をおこなうという流れは、前節柏レイソル戦と似ていたといえば似ていた。ただかなしいかな。得点が奪えなかったのも似てしまった。
 さて、愛媛のロングボール戦法は15分をすぎたあたりから落ち着く。落ち着くというより、ボールをもったらとにかく前線へ! だったのが、後方でボールを保持して相手をゆさぶりながら、隙をみつけてロングボールだ! という戦い方にマイナーチェンジしていた。もっとも17分にはサイドでボールを奪われて危ない! ともなったが。
 愛媛が狙いはじめたのは金沢のサイドバックの裏だった。とくに右サイドバック長谷川巧選手の背後を狙っているようだった。
 金沢の【4-4-2】と愛媛の【3-4-2-1】を噛みあわせると、愛媛のウイングバックがフリーになりやすい。なので金沢は愛媛のウイングバックをサイドハーフかサイドバックがみることになる。
 金沢のサイドハーフは内側へ絞るのでウイングバックまでケアすることができない。なのでサイドバックがでていくことになる。もし愛媛のウイングバックがミシャ式(ボール保持で【4-1-5】になる形)で最前線まであがっていくのならわかりやすいのだけれど、中盤ぐらいの高さまでしか上がってこないと面倒くさいことになる。
 寄せにいかなければもちろんウイングバックはフリーになってしまう。寄せにいったら背後を空けてしまう。愛媛は前半にいくつか左ウイングバック下川陽太選手からチャンスをつくれていた。
 下がりぎみの下川選手に寄せていった長谷川選手の背後を丹羽詩温選手が使ったり、丹羽選手を意識したら下川選手に裏抜けさせたりと、長谷川選手を困らす愛媛だった。

 ウイングバックをどうみるの? という問題は逆サイドでも同じ。長谷川選手が下川選手をみるために飛びだしていくと、金沢の最終ラインはスライドして空間を埋めるため、左サイドバックの毛利駿也選手が最終ラインからでられず、愛媛右ウイングバックの近藤貴司選手がぽつんとフリーになっていることもおおかった。13分には下川選手から近藤選手へサイドチェンジのボールがでている。ゾクゾクするサイドチェンジだった。逆パターンでも同じで、右サイドから下川選手へのおおきなサイドチェンジという場面もあった。
 金沢の選手たちは攻撃に転じるとスピーディだ。なので愛媛は球ぎわをつくって金沢に攻撃させない展開にもっていっていた。
 金沢もロングボールをクルーニー選手に入れるか、愛媛3バックの脇に流して2トップないしサイドハーフを走らせるといった形で攻撃のスイッチを入れていた。愛媛は金沢のディフェンス陣やセントラルハーフの選手がロングボールを入れてくるまえに寄せていってボールを奪うか、できなくともタッチラインを割らせて、ボール保持から攻撃へ移させる余裕をあたえなかった。
 ということで、前半愛媛は金沢に攻撃の面でいいところをつくらせなかった。とはいえ、愛媛が決めきれなかった面があるものの、金沢は迅速な帰陣で決定機まではつくらせなかった。その分ボールを奪ってもすぐに攻撃に転じられなかったわけでもあるのだけれども。

・後半からの金沢の変化

 後半から金沢は変化する。具体的には両サイドバック、とくに左サイドバックの毛利選手が高い位置をとって攻撃参加する機会がふえたことと、加藤選手が野澤選手をマークしなくなったこと。そしてロングボールの種類の三つだ。
 先述のとおり、前半は下川選手のサイドから愛媛の攻撃が機能していたことで、毛利選手は最終ラインからでていけなかった。
 しかし【4-4-2】と【3-4-2-1】を噛みあわせると、3バック側のウイングバックをフリーにさせるのと引き換えに、4バック側はサイドバックがフリーになりやすい。金沢は後半からボール保持の時間がふえ、両サイドバックのところで時間をえることができるようになっていた。サイドバックのところでボールを奪おうと連動して愛媛が奪いにいったら、ロングボールを背後に突かれて裏抜けされかける場面もあった。
 また、加藤選手が野澤選手のマークをしなくなったことで、金沢はボール非保持のときに2トップが前線に残るようになる。となればボールを奪ったあとに前線へパスをだしやすくなる。
 なおかつ、ロングボールの種類の変化にもつながるのだけれど、クルーニー選手のポストプレーから加藤選手が飛びだしていくという形もでるようになっていた。
 前半の金沢はハイボールをクルーニー選手へ入れる場面がおおかった。おそらく本意ではなかっただろう。というのもクルーニー選手がハイボールの争いで勝つ場面はみられなかったから。
 しかしだ。クルーニー選手の本領は空中戦ではなく地上戦にあるようだった。
 後半から金沢はグラウンダーや低い弾道のロングパスをクルーニー選手へ入れるようになった。彼が足もとや胸もとでおさめられるボールだ。するとどうだろう。クルーニー選手はあっさりキープしてしまう。ああいうのを懐の深いプレイヤーというのだろうか。とにかく愛媛は奪えない。サイドに流れたクルーニー選手が足もとでボールをおさめたとき、愛媛のディフェンス陣はボールを奪えず、けっきょくタッチラインを割ってスローインになる場面がそういえば前半にもあった。
 クルーニー選手がボールをおさめることで、加藤選手が裏抜けを狙えたり、金沢の陣形を前進させる時間をえたりしていた。
 ということで両チームとも自分の土俵へもってきて戦いあった試合はスコアレスの0-0に終わった。

・終わり

 愛媛FCが連勝できなかったので残念だったけれど、おもしろい試合だった。下川選手のサイド突破の活かし方が整理されてきているようにみえるし、序盤ロングボールで相手陣内でのプレーを強いてから、しだいにビルドアップの時間をふやして相手をかわしていく展開も興味深い。自分たちの持ち味の出し方がはっきりしてきたような気がする。
 ツエーゲン金沢は前後半で見事な変貌ぶりだった。クルーニー選手の特徴を活かすつもりでできなかったのか、それとも試合のなかでこっちのほうが効果的だと趣旨変更したのかはわからないが。うまくいかない時間帯を守り切ってしまうのだから手ごわかった。
 最後までお読みいただきありがとうございました。

 試合結果
 ツエーゲン金沢 0-0 愛媛FC @石川県西部緑地公園陸上競技場

 得点者
 ツエーゲン金沢:
 愛媛FC    :