J2-第28節 鹿児島ユナイテッドFC対愛媛FC 2019.08.17(土)感想

 J2第28節、鹿児島ユナイテッドFC対愛媛FCの試合をざっくりとふりかえっていく。

 システムの噛みあわせ上、愛媛はウイングバックが、鹿児島はサイドバックの選手がフリーになりやすい。
 愛媛のウイングバックにボールがわたると、鹿児島のサイドバックがでてきてつかまえようとしていた。なので空くことになるその背後をインサイドハーフの選手がつかおうとしていた。その動きに対して、鹿児島のセントラルハーフの選手がついていくことになっていた。ということで次に中央が空く。丹羽詩温選手がそこへ顔をだせばセンターバックがひとりついてくることになり、今度はその背後に空間ができる、というような仕組みになっていた。32分にはこの流れから逆サイドでフリーになっていた下川陽太選手がシュートを放つ場面となった。

 たいする鹿児島は同じような動きで愛媛の2列めの選手たちを動かしながらも、サイドを攻めるのではなく、ひたすらに中央を突破しようとしていた。
 たとえば14分。ニウド選手が愛媛陣内で右サイドバックの藤澤典隆選手にパスをだすと、そのまま斜めに走りだした。この動きに神谷優太選手がついていくと、愛媛の1-2列めがわずかに空き、そこへしっかり位置取りしているのが八反田康平選手。藤澤選手からパスを受けると、裏抜けを狙う枝本雄一郎選手へスルーパスをだしてチャンスをつくった。

 愛媛がウイングバックを攻撃の起点にするのに対して、鹿児島はサイドバックを最前線まで上げて攻撃に厚みをもたらしていたという感じだった。両サイドバックを高く追いだしてもなおビルドアップが可能だったのは、愛媛がつよくプレッシングにいかなかったことと、愛媛の選手たちのあいだでパスを受けるのがうまかったからだろう。
 鹿児島は両サイドアップが高い位置へでていくと、2センターバックと2セントラルハーフの4人+GKの5人でビルドアップをおこなうことになる。
 愛媛は丹羽選手と神谷優太選手ないし近藤貴司選手のどちらかが前にでていくことになっていた。なのでこの試合、相手陣内では[5-4-1]というより[5-3-2]でまずブロックを敷いているようだった。ハーフウェイライン付近まで押し下げられると[5-4-1]になっていたけれど、鹿児島のビルドアップを阻害しようと試みていた。ただ、鹿児島の選手たちはワンタッチやすくないタッチ数でボールを扱えるし、愛媛の選手同士のあいだに顔をだしてパスを呼びこむのがうまかった。愛媛はなかなか高い位置でボールを奪うことができなかったので、ずるずるとラインを下げていくことになった。
 さらに鹿児島の選手たちはライン間を突破する縦パスをいれることに執念を燃やしているようだった。とにかく2ライン間へ縦パスをとおす。八反田選手が幾度となく縦パスをとおしていたし、前線の選手たちも2ライン間でパスをもらうのがうまかった。さらにいえば前をむくのもじょうずだった。とくに枝本選手はかならずといっていいほどボールを受けたら前をむいていた。
 縦パスを入れられ、前も向かれてとなると、愛媛のラインはさらに下がっていってしまう。ボックスぎりぎりまで押し下げられ、そこからさらに縦パスを入れられてゴール前での攻防になることがおおかった。この傾向は試合全体をとおして一貫していた。
 ただ、先制点は愛媛が奪った。先述のとおり、この試合で愛媛は2トップぎみにして規制をかけようとしていた。19分の場面では鹿児島にロングボールを蹴らせることに成功し、そのこぼれ球を拾ってすぐさまカウンター。丹羽選手がGKアン・ジュンス選手を躱して2試合連続の得点を決めた。
 後半立ち上がりの49分、野澤選手がこぼれ球に飛びこんで追加点を決めて0-2とする。野澤選手が攻撃参加したさい、ゴール前でこぼれ球につめる場面をよく見かけるので、今回しっかり得点に結びついたのは感慨深いものがある。
 さて、後半にはいって2点差にしたのだから、勝ち点を1はとれてもいいのだけれど、なぜかそうならなかった。
 62分。ルカオ選手に代わって韓勇太選手が出場する。すると直後の65分にコーナーキックの流れから韓選手が1点を返す。さらに67分にはボックス近辺でのフリーキックからオウンゴールをさそって同点にする。77分も67分と同じような位置でフリーキックを獲得し、今度は途中出場の五領淳樹選手が虚を突いて直接ゴールへ決める。最後は83分。サイドをえぐって中央へグラウンダーのクロスを入れると、牛之濱拓選手が飛びこんでダメ押しの4点めを決めた。
 後半からの鹿児島の選手たちの前への勢いがつよかったのは確かで、その勢いに愛媛の選手たちがのみこまれてしまったようにみえたのも確か。とはいえ、ゴール前まで攻めこまれていたのも、球ぎわのところで鹿児島の選手たちが勝てていたのも前半からのことだったので、試合全体の形勢はそれほどかわっていなかったんじゃないのかなとも感じられる。
 ボールをもちたがるチームと対するときは、相手からボールを奪ってしまえばいいといったのは西部謙司さんだったか。ボールをもちたがるというのが、たんにポゼッションをしたいチームだけでなく、負けている状況でなにがなんでもボールがほしい相手だと敷衍してとらえるならば、この試合ほど愛媛がボールを保持していたかった試合はなかったかもしれない。

 ということで、今節はざっくりとさぼった感想でした。枝本選手のすばらしさに目を見張りました。鹿児島の選手たちのうまさを胸に刻んで、これから大宮アルディージャとの試合をみようとおもいます。
 最後までお読みいただき誠にありがとうございました。

 試合結果
 鹿児島ユナイテッドFC 4-2 愛媛FC @白波スタジアム

 得点者
  鹿児島:韓勇太、65分 オウンゴール68分 五領淳樹、78分
      牛之濱拓、83分
  愛 媛:丹羽詩温、19分 野澤英之、49分