トリカブトようかん

この世には「見て楽しむ」お菓子が存在しています。
食べることを目的としていない、目で楽しむお菓子です。
いわゆる工芸菓子と呼ばれるお菓子たちのことですね。
その中には、決して食べてはいけないお菓子も存在しているのです。
トリカブトようかんはそんな「食べてはいけないお菓子」 の1つなのです。
甘味として完成された羊羹に、あえて毒物であるトリカブトを使用することで、食べてはいけないタブーにより、見る者に背徳感を味合わせるのを目的としています。
トリカブトようかんは実に様々な形をしているのが特徴です。
蓮の花、梅の木、鳳凰・・・・・まるで彫刻かのようにトリカブトようかんを様々な形に彫り上げ、見る者の心を和ませる役割を持っています。
中にはロへ運ぼうとする者も決して少なくないといいます。
そうなるとどうなるかはお解りですね?
嘔吐、呼吸困難、臓器不全、痙攣などの症状に見舞われ、 最悪の場合、 心停止による死さえ免れぬといいます。怖いですね。
しかもその毒は即効性。 数十秒であの世行きとは実に恐ろしい。
なぜこのような食べられないお菓子を作ったのでしょうか?
一説によれば、菓子の細工師が自分の彫った菓子の出来映えの可愛さ故に、 人に食べられることを拒んでこのような羊羹を作ったのが始まりとされています。
我がお菓子の可愛さのあまり作られた狂気の産物こそが、 トリカブトようかんなのかもしれませんね。人の業とはどこまでも深いものだと思わざるを得ません。
しかし、それが却ってトリカブトようかんの美しさを引き立たせているのかもしれませんね。美と狂は紙一重とも言えますのでね。
決して食べてはいけないけれども、お菓子として作られたという矛盾。 その矛盾こそがトリカブトようかんの魅力にして魔力なのでしょう。
その芸術性故に、優れた作品は防腐処理を行って、まるで宝石かのように保存されているという例も聞き及んでおります。
トリカブトが入っている以外はただの羊羹なのに、なんという背徳的行為なのでしょう。
お菓子がお菓子であることを辞めようとする一連の流れは、まるで我々人類への反逆や警告であるかのようにさえ感じられます。
お菓子であってお菓子では無い、 それこそがトリカブトようかんという存在なのです。
さて、そんなトリカブトようかん細工職人なのですが、 その労力に見合った対価は得られているのでしょうか。噂ではかなりの高収入で、菓子細工職人の憧れだとか。
トリカブトようかん自体が非常にマイナーなお菓子であることもさることながら、その技術を継ぐ職人も不足しており、業界では職人志望者を喉から手が出るほど欲しがっていると言われています。
これは好機です。是非貴方もトリカブトようかん細工職人を目指してみてはいかがでしょうか。今なら好待遇で迎え入れてもらえるでしょう。
さらになんと、トリカブトようかんも1棹ついてくる!!
これはもう、はじめるしかないね!! さあさっそく入会だ!!
世の中そんな甘い話ばかりじゃ無いってことでね。

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