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「するする」のこと

文章を書くときの話。
1ヶ月かけて進めてみたものがいまいちで、またやり直すことにした。「ふりだしにもどる」のは今までもあったけれど、今回はその後も停滞して足踏みをくりかえしている。

もどかしさがつのると、自分の体なのに思うように動かない感じがして、そもそもどうやって自分の筋肉に指令を出していたのか、最初の1歩をどうしていたのか、自分の歩き方そのものを疑いたくなってくる。体の筋肉がかちこちで、意識すればするほど足がかたまる感じがして落ち着かない。行きたい場所は決まっているのに。

それでも朝起きると一番に文章のことを考えた。ただパソコンを立ち上げても時間だけがすぎてしまうときは、あきらめて別のことをする。友だちからもらったアドバイスを実行したり、本を読んだり、人に会いに行ったり、書くことに直接関係ないことでも思いつくことはなんでも。そしてまた朝がくるとパソコンを立ち上げる。繰り返し。

突然書きはじめられたのは、それからさらに数日後。偶然ともだちからなげかけられた言葉がきっかけで、するするとタイピングがすすみ出し、なんだこれはと心のどこかでふしぎに思いながらも流れに身をゆだねた。それはいまも続いている(たぶん)。向かうのはどうやら当初の「行きたい場所」とは全然違う方向だ。

この「するする」には前にも一度だけ会ったことがある。そのときも作りかけたものをふりだしにもどし、違う仕事に集中したり、人に会いに行ったり、なんだかよくわからないことをたくさん試していた。そうしたらある日突然、前ぶれもなく「するする」が現れて、もう一度作り直したものを最後まで導いてくれた。

「するする」が現れるのには法則があるのか、必然なのか偶然なのか、「するする」は本当に「するする」なのか、そもそも「するする」とはなんなのか。わからないことだらけだ。

唯一いまわかることがあるとしたら、じっとして待っていても「するする」は現れないのかもしれない、ということくらい。それ以上はわからないままの方がいいのかもしれない。

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