見出し画像

咳止め薬とプラセボ効果

地域医療ジャーナル 2021年10月号 vol.7(10)
記者:hatabo
薬剤師

薬局薬剤師のhataboです。

少し寄稿を休んでいる間に10月になりました。もう2021年の下半期ですね。毎年、何かに忙殺されて過ごしている気がします…。今年の上半期は、ワクチン集団接種が生活のメインでした。世の中もそうでしたよね。日常生活での会話や、カフェでコーヒーを飲んでいるときに耳にする会話まで、ワクチンの話題でした。集団接種では、日曜の朝8時から、新型コロナワクチンを希釈分注する作業に従事していました。私の地元では10月いっぱいで集団接種が終了します。早く、たくさんの方にワクチンが届くことを願っています。

10月号は「ノセボとプラセボ」特集です。ノセボ(nocebo)とは、ラテン語で”Ⅰshall harm”の意味だそうです。harmは害という意味ですから、好ましくない効果のことですね。一方、プラセボ(placebo)は、”I shall please”の意味だそうです。直訳すると、私は満足するだろうという意味で、好ましい効果のことです【1】。実際、プラセボの方が、一般に広く認識されている言葉ではないでしょうか。

薬局でよくある、もしくは実際にあった患者さんとのやり取りを思い返しました。

・(薬が効いているか?という医療者の問いに対して)効いている気がする(プラセボ?)

あなたから受け取る薬は良く効く(プラセボ?)

・(形が)大きい薬は強い薬ですか?(ノセボ?)

ジェネリック医薬品に変更したら、口が渇くようになりました(ノセボ?)

このジェネリック医薬品会社は、コロナワクチンと同じ会社ですか?やったね!(プラセボ?)

どうでしょう。薬の実際の効果以前に、医療者と患者の信頼関係や、形状、イメージなどの人の認識が及ぼす影響が大きい気がしませんか?言い換えると、プラスの認識を持ってもらうことで、薬の効果を上手く引き出すことができるかもしれません。わかりやすい例として、咳止め薬に関するお話をしたいと思います。

ここから先は

2,835字 / 3画像

¥ 100

いただいたサポートは記事充実のために活用させていただきます。