ザ・ノンフィクション婚活に見た現代人の闇

先日、といっても2週間ほど前だが日曜日の昼にやっていた番組、「ザ・ノンフィクション」の婚活特集非常にスリリングな内容だったので、いまさらながら思ったこと感じたことを備忘録的に書いてみようと思う。
※あくまで個人的な感想です


はじめに


まず、この番組に顔出しで出演された方々へ敬意を表したい。
もの凄い勇気をもって協力してくださったのだと思う。

顔出しまでとはいかなくとも、きっと少なからず自身のトラウマやつらい体験をこうして不特定多数の人々へさらけ出すということは、とても簡単には
できないと思う。
改めて、感謝と本当にお疲れさまでしたと伝えたい。

それでは、ここから私が感じた各登場人物たちの印象と思ったことを書いていきたい。
 婚活としての内容よりも、個々のバックグラウンドに感じたことを記していく。
※何度も言いますが個人の主観、感想です

真面目なS藤さん

おそらく、一番視聴者の印象に残ったであろうS藤さん。
彼は最後まで顔出しを貫いてくださり、視聴者は彼が成長していく姿を間近で見せてもらった。
20代後半実家暮らし男性(番組放映時はお母さまと同居)。交際経験はなし。
実家暮らしとは言えど、家賃はすべて彼が出し、家事をやってくれている母親に対して感謝の言葉を口にしており個人的には好印象な青年だった。

異性と一度もデートしたことなかったという彼は、奥手で不器用な様子が目立ち、身なりや立ち振る舞いにもそれが出ていた。
最初にお見合いのシーンがうつされた後述のYかさんには、「お母さまとの距離が近すぎる」、しまいには「生理的に無理でした」とさんざんな言われようだった。

実家暮らしは悪なのか

両親は学生時代に離婚されているとのことで、その分親子で今まで協力し合ってきたのではないかと思う。兄弟はいるそうだがあまり触れていなかった。
このタイプの家庭環境は、日本各地で大量発生しているのではないかと感じる。
子供が自立した後、本来両親で回していくべき家庭を離婚や離別で子が代わりに補っていくパターン。私の周りにもかなり多い。

しかし、30も近くなり特別な理由なく(実際に違えども)実家に居座る人間に対する世間の目はまだまだ厳しい。
実際、彼もお見合いした中の女性(K川さん)に激しく詰られる場面があった。
ちょっとこのシーンは結構きつかったので追って後述したい。

だが、「そういう形」で家庭や家族が回るように設計されてしまった人間に対し、「自立してない」だとか、「小学生のまま」とかそういう言葉を投げかけることはもはや時代錯誤なのではないかと思うが、どうなのだろうか。

S藤さんの変化

当初こそ会話もままならないS藤さんだったが、番目のお見合い相手(テレビでは)、30代前半の歯科助手をされている女性、N田さんにぞっこんになり、彼なりに努力して一生懸命デートのエスコートを行っていた。
しかし結果は残酷なもので、S藤さんよりも年齢が少し上だったN田さんはかなり現実的な結婚観を持っており、理想よりも実現可能な未来を見据えていた。
おそらく、1年以内に結婚、何歳までに第一子出産とリアリティをもって考えていたのではないか。
それを、「これから一人暮らしして自立していく」と、まだ何ステップも残っている男性をなかなか現実的な結婚相手とは思えなかったのではないかと思う。
アドバイザーの植草さんから交際終了を告げられた時の彼の表情、思い出してもつらい。

苦難の道

S藤さんは、結構舞い上がってしまうシーンがあった。
それは彼の経験の少なさから来るが、N田さんを「天使のような女性」とやたら持ち上げ、1回しかあってないにも関わらず次回デートを取り付ける電話で「俺いつでも会うんで」とかなりめりこんでいってしまう。
これ文面だとそうでもないと思うかもしれないが、映像で見るとかなり迫っている様子である。

N田さんと終わり、次は年齢が近い高学歴の女性を紹介される。
この女性がかなりショッキングで、一人暮らしを始めたS藤さんに対し
「家事能力が心配なので毎日自炊の写真を送ってくれ」と驚異のスパルタ報告が始まる。
それに対し真面目に送る彼も律儀といういかなんというか。
K川さんに詰められたのが思ったより効いているのではないかと心配になった。
結局彼女は仮交際の期限5か月ほどひっぱった挙句、「学歴の差」、「経済力の差」と最初から分かり切っていたことを理由に終わらせてしまう。
個人的にはこの女性の相手は結構難易度が高そうなので、よかったといえばよかったのかも知れないが。

彼自身、この女性をそこまで好きではなかったのではないか。
N田さんとはテンションの上がり具合がかなり違うように思えた。

しかしもういい大人の結婚相手の学歴に対しどこどこ以上じゃないとあかんと親が口出しするのはどうなのか。最後まで疑問が残った。

余談だがS藤さん、高学歴女性とデートを取り付ける際、電話で先に「結婚条件を詰めたいと思ってまして」とまるでプロジェクトの仕様を決めるよウに言っていたのが笑ってしまった。
前回現実味がないとN田さんに言われたことがよほどショックだったのだと思う。

ゆずらないYかさん

S藤さんに思いが強すぎてかなり長くなってしまったので、ここからは簡潔に書いていきたい。
正直、今回のメイン登場人物の中で一番闇が深いように思えたのがこのYか(20代後半女性)さんだった。

Yかさんはお見合いはかなりの回数こなしていたようだったが、年齢がまだ若い方だ。
最初にうつされたお見合いのシーンは、S藤さんだった。
次にデートに至った相手のK木さんは、正直なぜ相談所を通す必要があったのか疑問になるほど好条件に思えたが、まあ人それぞれタイミングがあるのだろう。

孤独に対する恐怖

Yかさんは若くして母親を亡くされており、亡くなるまでの介護を自宅で父親とみてきたという。
しかしその父親と折り合いは悪いそうで、機嫌が悪くなりやすくキレやすかったそうで、彼女に緊張感やストレスを与える存在だったようだ。

高校卒業から実家を出て、以来東京でずっと一人で暮らしてきたという、立派に自立した女性だ。
給料は多くはないそうだが、時折VTRで映る部屋はこざっぱりとして、丁寧に暮らしている印象だった。

そんな彼女が婚活に踏み切ったきっかけはいとこ夫婦の仲睦まじい姿からだったとのこと。
「仲がいい場合もあるんだ」とそこで知り、いいなと思い「一生一緒にいてくれる人が欲しい」となり、孤独はいやだと感じるようになったそう。

彼女が求めていたもの

Yかさんは、求めていたのは本当に結婚だったのか、と考える。
それはアドバイザー植草さんへの対応から考えられることがあるからだ。

Yかさんはわりとクールでおとなしい、心優しい印象があった。
それが、回を追うごとに変わっていった点が一つある。植草さんへの距離感である。
当初は割とシンプルだった服装が、どんどん植草さん好みのガーリー風に。
そして今どきなかなか見ない縦ロールの髪型。

好み、センスは人それぞれだが、20代後半の女性におおきな花柄(結構リアル)がプリントされたぶりぶりの白ワンピ(しかもミニ)って、ちょっと古臭いと思ってしまった。本人の好みもそれならいいが、同じスタイルでももっと都会的な、洗練された格好をしてもよかったと思う。
ミニスカから見える生足が、正直痛々しく思えた。

一方その様子を植草さんが褒める。
植草さんは見ての通りピンクや女の子らしいものが好きなんだと思う。相談所の雰囲気もそれで統一されていた。
そして褒められてうれしそうなYかさんは、どんどん植草さんと似たような格好をするようになる。

そして、婚活写真の映りを指摘された彼女は、植草さんは軽い気持ちでいったであろう「やるとしたら目だね、埋没」の言葉を真に受け、二重手術に踏み切った。

その結果を植草さんに見せに行き相談所へ行った際、「先生、やりましたよ」と伝えるシーンは、胸を打つものがあった。
いつの間にか、植草さんに認められることがメインになってしまっていたように思う。
うまく行かなった親との関係を、知らず知らずのうちに、本能で植草さんに重ね、求めていたのではないか。

それを植草さんもわかっていたようで、のちに成婚退会の相手となる資産家の男性、K木さんの両親に対し、将来的に介護が必要になるのでは、と自身の過去の経験からの心配ごとを吐露し、植草さんは「今は奥さんが介護の面倒を見る時代ではない」とくぎを刺したうえ、「あなたは両親の愛が薄い印象だった、それも含めて、Yかさんに合う人なのか、気にして紹介している」と伝える。

そして「お相手のご両親にもかわいがってもらえる、かわいがってもらいな!」とエールと送ると、Yかさんは静かに泣き出した。
この言葉を植草さんが言ってくれたのは、ものすごく彼女にとって大きなものだったと思う。

結果、YかさんはK木さんからプロポーズされ、メイン登場人物唯一の成婚退会者となった。

筋トレが趣味のU田さん

50代男性、建設会社の役員で、メンバー唯一の離婚歴、ついては結婚経験ありの方だった。

憎めない昭和オヤジ

U田さんは典型的な昭和オヤジで、もうそれ以上でもそれ以下でもないという印象(笑)。
こういうおじさん会社にもいっぱいいたし、友達のおとうさんでもいた。
飲み会でくだらない下ネタを飛沫飛ばしながら話しながらも、家では奥さんに白い目で見られ、息子には舌打ちされ、娘には無視される。
日本の家庭のオーソドックスな風景だ。

おそらく違うのが、彼には前妻との間に子供ができなかったこと。
それを理由にだんだん夫婦仲が悪くなっていったこと、子供なしで夫婦を運営することが難しくなったこと。それだけだ。

おそらくたくさんいるのではないか。
子供なしでは夫婦が持たない関係は。
正直、彼はピンポイントにそれにあたってしまったように思えた。
子供が生まれていたら、嫁や娘に「キモイ」となじられながらも、しっかりと稼いで家庭にお金を入れ、夫婦を続けていたのではないか。
おそらくそのルートをたどるはずだったのでは。

結婚や子供がすべてではない。そうじゃない生き方を選択する人も多く、これからもっと増える。私自身もそうする予定だ。
嫁やこども、家族にしいたげられながらも、黙って稼ぐ人生など嫌だと、
そういう考え方は一つの主流の生き方になる。
しかし、少なくとも彼自身は「孤独死はいやだ」とそうじゃない未来を望んだ。

中年の婚活の厳しさ

キモイお父さんにならなかった彼は、婚活中の中年男性になった。
お見合いでは筋トレ自慢をしてしまい、「なんかよくわからない」と言われてしまうなど、なかなかうまくいかない。
極めつけは、本人はうまくいったと自負していたお見合いの場で、旅行の話をしてた際「夫婦だったらラブホに泊まるのもいいよね」と、とんでも発言をかましてしまう。
完全に、その先にある女性とのセックスのことを考えていなければ出てこない発言である。
女性はその言葉にぞっとしてもちろんお断り、植草さんからは「初対面の人にラブホという言葉は使わない」と厳しく叱責されていた。

そんな彼は、おそらくこれも植草さんから勧められたであろう全身脱毛を施し、筋トレにいそしみ、まったくあさっての方向へ努力を重ねていた。

これがとんでもないズレである。
全身つるつるでムキムキになっても、それがデリカシーのないおじさんと結婚しようと思う理由にはならないだろう。
もちろん、自分磨きをすることは素晴らしい。
ただ今の彼にはそれ以上に相手を思いやったり、健全な形で歩み寄ろうという姿勢が気持ちが重要に思えた。

違和感ありまくりの中国人女性


これは本当に放送していい内容だったのか(笑)。
次に紹介された女性は同じ経営者で中国人女性だった。
お互いに対等な関係を築きたい、とのことで仮交際へと進み、ごちそうしてもらったりと順調に進むかと思われた。
ようやくU田さんにも春が訪れたかと。

そしてU田さんは植草さんに黙って成婚退会をしてしまう。
これは前代未聞ということで急遽よびだされ、驚きの内容が明かされた。

U田さんの言い分はこうだ。
・プロポーズという言葉はないが、大人だからもうわかっていること
・結婚に向けての話会いしかしてない

果たしてこれあが成婚と言っていいのが疑問だったが、たいして相手の女性の言い分はもっとパンチのきいたものだった。

・まず真剣交際していない
・結婚するなら生活費はすべてU田さんもち
・自分の成婚費用もすべて出してほしい

とまあこんな感じだ。

完全に認識がずれまっくているが、U田さんは「文化が違うのかな」とまたここでも明後日の方向へ勘違いしていた。
これはもう文化の違いとかではなく、もっと別の目的があるように思えたがそれについては触れないのか?
番組の思惑が知りたいところだった。

結局、この女性とは成婚せずあらたなスタートを切ることとなった。
番組の終わりでは、確か学校の先生と仮交際をされているとのこと。
根はいい人なのでうまくいってほしいと願う。
しかしこれ、前妻が見ていたらどう思うのだろうか(笑)

サブ登場人物たち

この番組を彩ってくれた方たちも少し語っておきたい。

K川さんは悪なのか

おそらく視聴者に強烈な印象を与えた人物、S藤さんのお見合いシーンで2番目に流れた女性K川さんだ。
この女性がX(旧Twitter)でとんでもない炎上の仕方をした。

問題のシーンは、S藤さんがほぼ実家で今までの人生を過ごしていることに対して、彼が「一応半年くらいは寮で過ごしたことがある」と何気なくいうのだが、それに対したかが半年で経験と言えるのか?とか、ほとんど今も親に家事を頼っているのだろう、というようなニュアンスなことを、ちょっと意地悪な感じに彼女が言った。

それに対しS藤さんもちょっとムッとした。

K川さんは事務の仕事の傍ら、専門学校に通いながらプログラ
ミングを学んでいると話していた。これは直に素晴らしいことだと思う。

そしてよせばいいのにS藤さん、「プログラミングなんてAIに取って代わられる仕事なのに、今時ちょっとめずらしいなって思いました」というよな、彼女が今努力していることをやんわりと確実に馬鹿にするようなことを口にしてしまう。

もちろん大激怒のK川さん。
「私のやっていることは無駄だといいたいのか?」とまくしたて、
お見合いは最悪なムードのまま強制終了となった。

K川さんの年齢はミドサーくらいか、未婚の方は婚活の本腰を入れる年齢であろうと思う。

実際K川さんは怖かった。会社にいたらフツーに怖い。
もっと言い方考えてくれと思う。

けれど彼女は婚活、ひいては結婚にすべて頼らず、自分でも生きている力を身に着けようとしていた。
これはこの番組では彼女だけだったと思う。
そして、植草さんの話によると、彼女は高校生から家を出てているとのことで、自立への気持ちは人一倍強いであろうということがうかがえた。

K川さんがなぜあそこまでけんか腰だったのかは想像の範囲を出ないが、
おそらくいつまでも自立しない(ように見える)S藤さんは最初から射程圏外だったのではないかと考える。

まともそうでやっぱりまともだったN田さん

S藤さんが天使のような人だとぞっこんになり、あっさり2回目のデートで振られてしまった相手だ。

S藤さんの女性慣れしていない姿にも一切嫌な態度は出さず、今回の登場人物で一番の人格者だった印象だ。
彼女は結婚観が非常にしっかりしていたようで、いついつまでにどのような
ステップを踏んでいきたい、としっかり計画があったように思った。

S藤さんが婚活を自己成長の場というようなことを口走ってしまったため、自分が求めるスピードとはこの人は異なるだろうと至極真っ当な理由でそうそうに見切りをつけていた。

X(旧Twitter)では彼女を選べる立場ではないだとか、上から目線
だとか心無い言葉も少なくなかったが、婚活は慈善事業ではない。
結婚観が異なる相手の練習相手はとてもじゃないが付き合っていられないだろう。

一番のモンスターは誰か

それは、この番組を見てあーだこーだ口出しをし、持論を並べる私たちだろう。
中島みゆきの「ファイト」という歌に、「闘う君の唄を闘わない奴等が笑うだろう」という歌詞があるが、まさしくこのような場面のことを言うのだろう。

みんなそれぞれ、戦っている。
懸命に生きようとしている。
それを嘲笑う資格など、だれにもない。

誰にもないはずなのに、近頃のSNSには他者へのヘイトが蔓延している。
今回の番組をみて、婚活が一種のミームとなってしまったことをとても悲観的にみている。

長くなってしまったので、ここらで終わりにしたいと思う。
改めて、今回の番組にご尽力された方々へ賞賛を送りたい。
彼らの人生がより良いものに、幸せな日々へとなることを、心から願いたいものだ。






この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?