無題

思い出の味は「ビタミンC」

「梅雨」――この季節は心にも体にもさまざまな不調をもたらす。気分はゆるやかに落ち込み、なんとなく頑張れない、ぬるくダルい状態になる。そして安定しない気圧のせいで息苦しく、また湿気のじめじめが蕁麻疹体質の肌を刺激し、チクチクむずむずとさせた。

そんな、なにひとつ良いことのない「梅雨」という季節。その影響は、例年よりもひどく体に表れていた。つまり、現在進行形でわたしの肌の状態は絶不調なのである。


そこで生活リズムの改善、食生活の見直し、スキンケアの強化…等々、いろいろと実践している中で、新たに生活に取り入れたことがある。それは、レモン果汁入り飲料「キレートレモン」を毎晩飲むことだった。

ビタミンC、クエン酸、ポリフェノール、リモネンといった成分が含まれるこのドリンクは、疲労回復・美肌効果に良いとのことで、健康志向の方にはお馴染みのドリンクらしい。わたしもドラッグストアで6本入りのキレートレモンを購入すると、毎晩飲みはじめた。

もともとレモン味や酸味のあるドリンクが好きだったので、毎晩美味しい美味しいと飲んでいる、このキレートレモン。これを飲むたびに少しだけ思い出すのが、同じ”ビタミンCを摂取できるドリンク”に位置する「C1000ビタミンレモン(C1000タケダ)」である。

なぜこの「C1000ビタミンレモン」を思い出すのかというと、実はこのドリンクには思い出があるのだ。そう…「C1000ビタミンレモン」を初めて飲んだのは、小学校1年生のときのことだ―――。


当時、兵庫県に住んでいたわたしは、今じゃ考えられないほどハツラツとした元気な関西少女で、毎日楽しく小学校に通っていた。給食は美味しく、広々として、遊具も充実していたあの小学校。学校の敷地内には”ザリガニ沼”なんかもあった。また当時のわたしは人見知りな性格ではなかったのか、クラスも違う、学年も違う生徒たちと、自然と友達になっていた。のちに引っ越してしまうのだけど、短くも楽しい学校生活だった。

しかし、ある日わたしは風邪をひいてしまう。当然学校を休み、家で静かに療養するしかない。きっとつまらない思いで横になっていたはずだ。ところが、そんなわたしのお見舞いに来てくれた友人がいたのである。

その友人は2人組――同じ小学校の太っちょ兄弟だった。体格がよく、でもどこか愛嬌のあるこの兄弟。彼らはわたしよりも学年が上だったはずだが、登校・下校時にわたしを見つけると、気さくに話しかけてくれた。ある日わたしが授業で作った”船の模型”を持って下校していると「なんだい、それは」とヤンチャな表情で覗いてきたものだ。

そう、彼らはいつもいたずらっぽい顔をして、おどけたように学校に通っていた。しかし、わたしの家に来た彼らに笑みはなく、心配そうに、言葉少なに、あるものを渡してくれた。それが、なんと「C1000ビタミンレモン」だったのである。


正直「なぜ……?」と思った。それまで「C1000ビタミンレモン」を飲んだことがなかったし、これがどういうドリンクかもよく分からなかった。(そしてこれは余談なのだが、実はこの「C1000ビタミンレモン」が誕生したのは、わたしの生まれ年、1991年のことらしい)
でも、とにかくとても嬉しかったのは覚えている。まるで「はやく元気になれよ」と言われたみたいだったからだ。

彼らが帰ったあと、わたしはこの小瓶に入った飲み物を飲んでみた。黄色くて、炭酸で、甘酸っぱくて、よく分からないけど”ビタミン!”という感じがして、なんだかすごく美味しかった。

それからというもの、コンビニやスーパー、ドラッグストアで「C1000ビタミンレモン」を見かけると、ちょっとだけ懐かしい気持ちになる。その割に、このドリンクを積極的に飲む、ということは全然なかった。たぶん、今もずっと『あのときの味』を覚えている気がしたからだ。

でも、せっかくだから、今度どこかで「C1000ビタミンレモン」を見かけたら、買って飲んでみようと思う。大人になったわたしが飲んだらどんな味がするのか、少しだけ楽しみだ。

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