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納得するなら信じてもいいし、信じなくてもいい。

ここ最近、ダラダラと腰を痛めていた。その結果、無気力がちな状態が続き、メンタル的にもつらいものがあったため、『ゴッドハンド』と噂の整体院へ行くことにした。

大層評判だというその整体院。予約が取れるか不安だったが、電話をした翌々日の朝イチにあっさり予約を取ることができた。中一日は痛みを我慢して過ごし、いざゴッドハンドの技を受けにいくことに…!

電車とバスを使いたどり着いたのは、閑静な住宅街の一角にある、こぢんまりとした整体院。入ってみると受付にも待合室にも、人の姿がないものだから、数分のあいだ腰を伸ばしたり仁王立ちをしながら誰かが来るのを待つ。やがて、ゴッドハンドの持ち主であろう先生とその助手、受付の女性がバタバタと上階から降りてきて、施術のための手続きをはじめた。なお受診にあたっては、アクセサリーを外すように、また携帯の電源を切るように言われた。

ゴッドハンドの持ち主は、60~70代くらいの人懐っこい笑顔を持つ男の先生。とても早口なので、もともと人の話を聞き取るのが苦手なわたしは、コミュニケーションに少し骨を折ったが、とても気さくな方で安心した。左腰を定期的に痛めており、今回もなかなか治らないことを告げて、施術がスタート。

まずベッドに腰掛けた私の左右の足を片方ずつ揺らし、『左足』の動きが鈍いことを指摘。左右の腕・手を引っ張り、こちらも『左手』に上手く力が入っていないと診断。つまり左半身がちゃんと機能していないのだ。さらに腰痛以外にも肩こりがひどいこと、それによって頭痛を引き起こしていることも言い当てる。そして最後に「あんた胃が悪くないか?」と尋ねる。確かに私は胃が弱く、胃薬をよく服用するほどである。わたしの体をくまなくチェックした先生は「これ(腰や肩こりなど)は全部胃が原因だね。相当悪いよ、放っておいたら病気になっていただろう」と総合的な診断を下した。

そのあと、専用の器具を使ってわたしを仰向け・うつ伏せに寝かせ、首を捻ったり、ツボのような部分を押したりする。そして、そのたびに「はい!これでどう?肩が上がるようになったでしょ?」などと満面の笑みでわたしに尋ねる。そのスピード感に置いてけぼり状態のわたしは、正直本当に体に変化があったのかどうか、確信が持てなかった。だから、「えっ?!あっ、ほ、本当だ、軽くなった…(かもしれない)」と戸惑いながら肩を動かしたり、腰を触ったりしたのだった。
このような、

先生「ほら!良くなったでしょ?」
わたし「えっと…そうかも、しれない!」

といったやりとりが数回続き、最後にわたしの顔を見て「おっ、ちゃんと目が開いたね」と先生が満足げな笑顔を浮かべ、施術は終了した。

整体院を出てバス停に向かっている途中、再び携帯の電源を入れた。衝撃的なことに、施術時間はなんと「10分」程度だったらしい。この整体院について事前に調べていたとき、”効果はあるけれど、施術時間が10~15分くらいで短いので、もっとやって欲しい”という口コミがあったので、あれは本当だったのか…と妙な納得感を覚えた。そしてこの短い施術時間を皮切りに、ポツリポツリと疑問が湧きはじめる。

なぜなら、わたしは結構『疑り深い人間』のようなのだ。どうしようもなくボーッとしていることが多いのだけど、本質的には簡単に物事を信じたり、相手を信頼しないらしい。いや、ただ頑固なだけなのか。とにかく、そんな性格だから、この整体院についてこのような疑問を持ってしまった。

そもそも整体院の受付時間、電話予約の受付時間がとても短かったのだが、それは”人気のある整体院”(なかなか予約が取れない=行ってみたい!という心理を掻き立てる)を演出するためなのではないか、とか。携帯を切るように指示されたのは、この施術時間の短さをカバーするためなのではないか、とか。(こんな短時間しか施術してないのかよ!と文句を言われかねないから)「ちゃんと目が開いたね」という発言は、別に施術のおかげではなく、朝イチに施術を受けたので、単に最初は目が腫れぼったかっただけでは?!とか…。

特に、施術中「良くなったよね!」という先生の発言と自信満々の笑みは、多くの人が「そうかもしれない!」と思わせるようなチカラがあった。でもある意味、この”自信”こそが、この整体には必要なのかもれない。よって、患者のみなさんはきっとこの先生の”自信”で治療してもらうため、お金を払っているんじゃないかと思った。実際、わたしよりももっと重い症状を持つ人は、まず『前向きになること』が治療の第一歩だと言う。だからこれはこれで、間違ってはいないのだろう。なお、わたしの左半身が上手く機能していなかったことや胃が悪いことを指摘したチカラは、本物のように感じた。患者さんの悪いところが”見える人”なのかもしれない。

ちなみにわたしは、自分の体に関してとても鈍いヤツだ。たとえば鍼に行っても、変化してるかな?大丈夫かな?えっ、本当にこれ効いてる?よう分からんな!…と、いつも疑問を持ちまくり。もっと言えば、こういうものは施術前・後で写真を撮って欲しくて、「こんなに変化しましたよ!」と見せてもらわなければ、その効果を信じることができないのだ。だから、今回この先生の”自信治療”では劇的な変化を感じることができず、いやあ、何ならちょっとまだ腰が痛いですわ…と腰をさすりながら、その日は職場に向かったのだった。

この話と同じような事案が、2年ほど前にもあった。(ヨガにキレる。)このときは、周りと同じように手放しでこの”特殊なヨガ”に入り込むことができず、『そう簡単に信じてたまるか!』とキレた。

この2つの話に共通するのが、信じやすい人ほど、あらゆる効果を実感しやすいのだろうということ。それは良いことでもあるけど、わたしはそこにいつも何かしら「本当に大丈夫?!」と疑問を感じているから、信じきれないのだと思う。
――そこでわたしは何を思ったか?
こういう性格ならば、確実な方法で、自分が納得した方向に進むしかないのだ。腰を痛めたくない、いつも元気でいたい!そんな健康体を手に入れるには、やはり「筋肉」をつけるしかないのだ。

ここ最近、腰痛や夏バテですっかりご無沙汰になっているスポーツジム。食生活に気をつけ、良い睡眠を取り、適度な運動をする。これが単純明快で、日々疑問を持たずに進める生き方なのだろう。

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