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看護の日に書いておきたい、日本の看護やっぱすげぇわ~ぎりぎり間に合った~

一昨年の9月に渡米を控えていたわたしは、その時目をきらっきらさせながら「アメリカの看護ってやっぱりすごいんだろうなぁ!キラキラ」って思ってたわけです。

働いてると、どうしても「これって看護の仕事なの?」とか、「これ無駄が多すぎないかなぁ」とか文句がでてきてしまう。それはまぁ、どんな仕事していても現状の課題は見えてきてしまうからしょうがないことなのだけど。

隣の芝生は青い、どころか、アメリカの看護はサファイアブルーに見えてしまっていたわけです。

そうしていざニューヨークで留学をしてみると、

引っ越した初日に食あたりで夜通し吐きつづけたり、

手術レベル手前の大きさの扁桃炎になったり、

現地の病院にお世話になることが度々ありました。

そして、感じる。

ここは、目がくらむほどのサファイアブルーに輝くアメリカの看護!!!!


・・・と、なるはずが。


あれ、気づいちゃったけど、

日本の看護って、

やっぱすげぇわ。

(※筆者は普段言葉遣いは綺麗なほうですが、ちょっと前に流行った「うっせぇわ」を真似ています。)

そうなんです、隣の芝生にいざ入り込んでみると、

あれ、うちの芝生、負けてないよね?ってか、うちの芝生やっぱ良くない?」って

気づいてしまうわけです。

アメリカと日本を比較すること自体、大きな間違いだった。

もちろん、アメリカのナースができることが多かったり、自律していたり、それはたしか。学んだこともたくさんある。

でも、それって法律や制度自体が違うから、

看護師自身のレベルの差じゃないと思ったわけです。

ここでレヴィンの法則をだしますが、

環境 × 人 = 行動

なわけで、環境が違うだけで「人」の部分は日本のナースは最高ぴかいちレベルだと思う。

どうしても、やれることが限られていたり、「自律したくても充分に力を発揮できない環境」にあるから、そう見えてしまう可能性があるわけであって。

だから、比較すること自体そもそも間違ってた、ってことに気づけたのは本当によかったなと思います

ここでは、いまいちど日本の看護の良さを私目線で見つめ直すために書いてみます。

※記事のなかで、一部アメリカと日本を比較していますが、アメリカにはアメリカの素晴らしさがあって、それはもちろん心からリスペクト。ここはあえて「日本」の良さにフォーカスをあてているので、そこんとこはご了承くださいませ。

※また、じゃあ「ベトナム人の日本のナースは?」とか「中国の日本のナースは?」とか、いろいろなことを指摘しはじめるとこれ以上文章が書けなくなってしまうので、いろんな方々を含めてざっくりとした「日本の看護」という認識でお願いします。

日本の看護の強みとは

① 看護の境界線が薄い

アメリカは良くも悪くも「合理主義」で、「分業」が徹底的に導入されている。

これは良いととらえることもできれば、逆にちょっと危険でもある。

アメリカでナースとして働くアメリカ人の友人が言っていたのは

「掃除は掃除の人。ストレッチャーで運ぶのは専用のチーム。病室の環境整備をするのは掃除とナースエイド(看護助手)。配膳するのは栄養科。でも逆に、自分の仕事じゃないことはやらないって思っているひとが多い」

これがわりと衝撃的で。

じゃあ極端な話、患者さんが水をこぼしたらいったいそこは誰が対応することになるのか。(さすがにほっとくナースはいないだろうけど、、。)

とことん合理的だと、「これは私の仕事、これは他の人の仕事」ときっちり線引きをするから境界線が明確にできる。

日本の場合、看護師があれこれ全部やりすぎてパンクしているというのもたしかに大きな課題ではある。もっと分業がすすめば看護師の負担も減るし、いろいろなことができるようになるかもしれない。残業問題や早朝出勤の問題とか解決に繋がると思う。

でも、境界線が薄いのは、プラスにとらえられることもたくさんあると思う。

私の性格の問題かもしれないけど、徹底的な合理主義は少し切ない気もする。

私は患者さんのベッド柵を拭きながら何気ない会話をしたりとか、

配膳のときに「◎◎さん!今日ハンバーグですよ!わたしもお腹すいちゃいました~」「寺本さん今日前半休憩なの?」「後半なんですよ~、◎◎さんが召し上がられたの見届けてから入ります!」みたいなちょっとした会話をするのが大好きだから、

境界線が薄いことは、逆にいろいろな可能性を広げることもできる。患者さんを知れる機会、アセスメントのための情報収集など。

だからあえて境界線が薄いことを強みとして挙げてみた。

② 一瞬の気遣いができる

これに尽きる、これは文化の違いがもちろん大きいのだけど、やっぱり気遣いができてナンボですわ

アメリカ人ナース=気遣いができない、というわけではなく、優しいしあたたかいんだけど、この「一瞬の」気遣いができるかどうか、となってくると日本のナースの圧倒的強みだと思う。

私に問診をしたナースは

「たばこは?お酒は?2週間以内に性行為した?

と他のひとがいるなかでドストレートに聞いてきて、

いや、たばことお酒と同じノリで聞かないでくれ!!!って勝手にひとりであわあわしちゃったのだけど。熱があがりそうだったわ笑

No!ってやや声がでかくなってしまったわ。

まぁこれはカルチャーの違いが大きいのだろう。

日本人のナースだったら一瞬の気遣いで「一応問診で皆様にお尋ねしているのですが」とかなんか一言いってくれるだろーなー、なんて思ってた笑

別に奉仕の精神とか常ににこにこ天使でいてくださいってわけじゃない。

「一瞬の」「ちょっとした」気遣いは弱っているときにはめちゃくちゃ心に沁みるんだよなぁ。

③ 真面目で努力家

なんか人並みのことを書いてしまったけど、結局これは絶対にあがってくる。

私が卒業論文を題材にした「プロジェクト・フローレンス日本版」というコロナに対応する看護師向けのオンラインプログラムがあるのだけど、元々つくられたのはアメリカ・ニューヨークの病院だ。

そのオリジナルを翻訳して日本に導入し、利用者が2000人を越えた。

実はこのコンテンツはアメリカをはじめ世界に広まったのだけど、

なんとダントツで日本の利用者が多いというデータが公開された。

日本の次に多かったのがサウジアラビア。

これはやっぱり、熱心な日本人の学びの姿勢へのあらわれももちろん要因に含まれるだろう。

ちょっと、というか、かなり嬉しかった(日本の棒グラフの部分だけが桁違いに長かった)

真面目で努力家なんて、恋人に求めるランキングナンバーワンかもしれないくらい、とても大事な強み。

これは看護に限らず、日本製品=信頼できる と海外のひとから思ってもらえる特徴とも重なるのかな

④ 病院がスクラブを洗濯してくれる

これはもはや看護の良さ、というか日本の病院上の環境の強みだけど、

わたしがニューヨークで驚いたことのひとつに、みんな医療者がスクラブで通勤していること。

最初はコスプレしてるのかと思っちゃったくらい。

でも、病院付近のスタバにはスクラブ着たひとがうじゃうじゃいて、後から知ったけど、アメリカでは一般的にスクラブで出勤するそうだ。

たぶんこれを読んだひとはみんな同じ言葉が脳内に浮かんでいるだろうから、ここではあえて割愛する笑

スクラブを玄関で脱いで、急いで部屋に入る、と聞いた。

しかもスクラブは自宅の洗濯機で洗濯するらしい。

※全ての病院がそうだとは限りませんが、少なくともコロンビア近辺の病院はそうでした

Forbesにもこんな記事があった。

コロナ禍でメディカルスクラブで公共の場を歩いてよいのかって内容

結局のところ、理由含めメリットがよくわからない。。。(もしメリットをご存じの方がいたら一報ください)

スクラブを病院が洗濯してくれることなんてもはやあたりまえすぎて何とも思ったことないけど、このシステム自体がありがたいことなんだと、隣の芝生をみて気づけることがある。


おわりに

渡米前、「アメリカの看護の良さを日本に持ち込むんだ!」と私は間違った方向に意気込んでいた。

でもそれはやっぱり考え方自体が間違っていたのかも知れない。

和食にはお箸、スープにはスプーン、ピザは手がそれぞれ適しているように、

日本には日本にぴったりとあった看護をやっぱり創っていかなければいけないんだと思う。

たとえ隣の芝生がきらきらのサファイアブルーに見えてしまっても、いざ目の前にするとその輝きが「あれ?」と失われることもある。

そっくりそのまま、どこかの看護の形を持ってくるのではなく、お互いの良いところを見て、まねしてみて、実験したり導入してみて、それで少しずつ自国の形に合うように、看護の姿を変えていいのだと思う。

看護は変形自在だ。

スライムのように、ぐにゃりぐにゃりとその形を変えることができる。

ナイチンゲールさんがはるか昔に、「看護覚え書」のなかで「看護とはなにか」を述べて、それはすべて必要だけど、かといってそれが全てではないし、時代は常に変化する。

国の文化に、制度に、背景に、危機的状況に、人柄に、時代に、

それぞれに合わせて、その時その社会で看護の力が最大限発揮できるように変化しつづけるべきだと考える。

比べたり、批判しあったりせず、みんなで同じ方向を向いてまた次の年の看護の日を迎えられたらいいなと思う。

全世界のナースが窮地に追いつめられた2020-2021年。

ここから1年後の看護の日は、世界の看護師達がもう少し笑顔になれる時間が増えたら嬉しい。

そして、これからはもっと日本の看護に携わっていられることに誇りを持てる。

看護の日、おめでとう。









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