見出し画像

今話題のマイナス金利解除を3年目銀行員が紐解いてみる

マイナス金利政策とは

そもそもこの2016年1月から導入されたこのマイナス金利政策とはどのような仕組みだろうか。18・19日と連日で行われる日銀の金融政策決定会合を前に『マイナス金利政策』についての概要と変遷を振り返ろう。

概要

民間の金融機関が日銀に預ける当座預金の金利をマイナスにする。つまり、私が勤務する銀行などは日銀に余分なお金を預けると金利を支払わなければならなくなるため、投資や融資などにより余剰資金が市場に流通するようになり、景気を刺激する効果が生まれる。つまり、デフレ脱却からのインフレを狙うイメージですね。
下記日経新聞が出している記事がイメージしやすといと思います。

政策導入の変遷

金融市場調整方針の変遷
・1994年に金利自由化が完了
・1995年からは、短期市場金利を誘導するオペレーションを通じて金融市場調節を行うようになった
・1998年以降「無担保コールレートを、平均的にみて○○%前後で推移するよう促す」というような誘導目標を具体的に定めた
・1999年から2000年にかけては、「ゼロ金利政策」が実施され、「無担保コールレートを、できるだけ低めに推移するよう促す」方針
・2001年には、「量的緩和政策」が開始され、金融市場調節の主たる操作目標は、無担保コールレートから日銀当座預金残高に変更
・2013年には、「量的・質的金融緩和」が開始され、金融市場調節の主たる操作目標は、無担保コールレートからマネタリーベース変更
→つまり、市中に出回っているお金の流通量
・2016年1月に導入された「マイナス金利付き量的・質的金融緩和」のもとでは、政策金利として日本銀行当座預金のうち「政策金利残高」に-0.1%のマイナス金利を適用することが決定
以下日銀の掲載記事参照


影響

この政策により、金融機関の貸出金利の低下が中小企業の借入に大きく影響しました。また、日本の金利が低下することは原理的に海外との金利差が生じ、金利の高い海外に円からその国の通貨に転換する動きが強まる。要するに、円が売られるため、円安になってきますね。マイナス金利や量的緩和政策前にドル資産を持ってた人は、円転すればこのマイナス金利政策は大いに資産形成上有利に働きましたね。
ここで注目していただきたいのは、この政策により各金融機関が設定する短期プライムレートの変化です。当行では、”短プラ”と呼んでいます。譲渡性預金(CD)などの市中金利に連動して決められています。そもそもプライムレートは、銀行が企業に貸し出す際の金利なので、一般の人には関係ないと思われるかもしれません。
しかし、住宅ローンの変動金利は短期プラに連動して決められています。つまり、一生に一度と言われる大きなお買い物に関しても関わってくる話なのです。
この金利決定の土台になる短プラは、マイナス金利政策導入時変化がなかったということを念頭に入れてください。

今後の日銀の政策と私たちへの影響とは

18・19日に行われる日銀の政策決定会合で噂されるマイナス金利解除ですが、政策変更はどうなるでしょうか。

マイナス金利を解除するのか

様々なメディアに取り上げられているように、大規模な金融緩和策の柱であるマイナス金利政策の解除を決める見通しとなっていると伝えられている。もうこの方針はほぼ確定路線だろう。決定すれば、2007年以来17年ぶりの利上げ?(マイナス金利解除なだけで実質的な利上げとはほど遠いのでは?ゼロ金利になるだけ)で、正常化を開始する転換点となるのは間違いないだろう。
この決定に大きく影響したのは、日本がインフレに転換したかどうかだ。15日に発表した今春闘の平均賃上げ率は5.28%と33年ぶりの高さで、日銀は賃金と物価が揃って上昇する好循環が実現する角度が十分高まったと判断したとみれる。ただ、個人的には大企業による春闘の結果だけで判断するのは危険かなと。

どのような影響が考えうるか

注目は、上記でも記載した短プラへの影響でしょう。
マイナス金利導入時は短プラが下がらなかったことから、マイナス金利解除しても短プラが上がらなければ実体経済への影響は限定的となることが予想される。為替に関しては、預金金利の変化がなければ皆さんの円を買う動きが発生しないため、円高方向には作用しないと考えられる。つまり、為替レートは146円前後でインパクトは限られると予想される。しかし、短プラが仮に上がることになれば、すでに変動金利で住宅ローンを借りている家計や、銀行から短期資金(当貸、手貸、商手等)を借入している中小企業にとっては、利払の負担増になることから警戒が必要になる。現在私の担当している企業の規模は、中小・零細企業であるため、そもそもゼロゼロ融資(コロナ融資)の返済開始による返済負担が増したところに本件の金利上昇は、相当厳しい。約定返済の軽減、返済期間の見直し等後ろ向きな対応を迫られると思う。いずれにしても、マイナス金利解除以外のYCCや量的緩和面での変更やマイナス金利解除以降の日銀のスタンス次第で影響は変わってくるだろう。
一番懸念しているのは、日本の雇用の大部分を生み出している中小企業の設備投資の機会が減少することだ。経済合理性を図る代表者が多いイメージのある中小企業ですが、それはごく当たり前のことで企業を守ることに繋がるから。そのような中小企業の意思決定における金利の影響は大きく、設備投資には間違いなく慎重になる。あえてここで簿記1級の知識を活用すると利息支払は単にCFのマイナス要因でタックスシールドに当たらないため、設備投資意思決定会計におけるIRRの算定やNPVで考えてても厳しくなる。つまり、意思決定における負の判断材料になる。
このような世界に変わるのか。ものすごく気になります。

来週頭にある植田総裁の発言には、みんなで注目しましょう。
ここまでお読みいただきありがとうございました。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?