祇園祭りに神輿を担ぎに行って、いつのまにかポケモンゲットしてた話

京都の祇園祭りに助っ人として参加したことがある。

もともと全く乗り気ではなかったが研究室の先生にハメられて参加することになった。

・・・

「前田(僕)が参加しないとA(研究室の先輩)が1人で参加することになる」
先生はこう言ってきた。

祇園祭で神輿を担いだり、指示を出す拡声器を担ぐ人が不足しているのだそう。

しかし、僕はわざわざ重いものを担いで歩く意味が分からない。
というか『神輿を担ぐ』という祭りのルールを決めた奴が無能だと思う。

もし自分が祭りのルールを決めれるなら神輿なんか担がずに、「祭り!」と大声で叫べば奉れたことにする。

それほど、僕は神輿を嫌っていたが「研究室の先輩を一人にするわけにはいかない」と祭りへの参加を決意したのであった。

しかし、祭りの当日、会場に行ってみると
僕、Aさん、そして同じ研究室で同学年のBがいた。
なぜ、Bがここにいるのかを尋ねたときに初めて僕たちがハメられたことにやっと気づいた。
Bは「Bが行かないとAさんが一人だけで頑張ることになる」と先生に聞かされてここに来たという。
おかしいなと思ってAさんに聞いてみるとAさんは「Aさんが行かないと後輩が一人ぼっちで祭りに参加することになる」と吹き込まれていたとのこと。

つまり、先生は3人に同じようなことを言って3人とも祭りに来させたのである。
「人ってこうやって騙すんだ」と感心したのと同時に感謝した。

このような経緯で集められた3人はローテーションで神輿や拡声器を担ぐことになった。
こうすることで一人は休憩できるのである。


祭りが始まって1時間ほど経った頃、僕は腰を抑えながら拡声器を担いでいた。
拡声器係は拡声器を高く掲げて指示役の声を全体に届けるという役割があるのだが、これがなかなかツライ。
15分交代のローテーションを組んでいたが、腰を痛そうにしていることに気づいた先輩Aが早めにローテーションを回し、僕が休憩できるようにしてくれた。

しかし、僕の腰が痛そうな素振り、
これは全て嘘である。

最初から役割をBや先輩Aに押し付けて
祭りをバックれる作戦だった。
先生が3人を集めてくれたおかげで、自分ひとりがバックれても祭りに支障がでなくなったのである。

そう、この世には担ぐ者と担がざる者の2種類の人間しかいないのだ。


そのまま家に帰ろうと思ったが、誤算があった。
祭りを手伝っている地域の人から法被(はっぴ)などを借りていたのである。
そのため、返すために祭りの最後にはそこにいなければならないし、よくよく考えたら僕の行動によって研究室の先生の信用も落ちてしまう。

そこで、神輿から離れたところでブラブラしつつ、30分に1回は神輿の周りに行って地域住民に「参加してますよアピール」をしようと考えた。

あらかじめ、神輿の進行ルート上のカフェでコーヒーを飲んでゆっくりし、神輿が前を通りがかったら、横から祭りに参加、5分ほど無駄に神輿の周囲を周り、アピールができたら、京都特有の細い路地へと消えていく。

この作戦はかなり上手くいった。
特にコーヒーを飲み終えたタイミングで神輿がちょうど通りかかった時は、
「ああ、自分は祇園祭りのなんらかの神さまに愛されてるんだなー。ありがとうございます」と心から思った。

神輿が通り過ぎた後のその道路は独特な空気に満ちていた。
風の気持ちいい夜、浴衣を着た子供たちは道に出て花火をし、大人たちは軒先でお酒を飲んでバーベキューしている。
とても風情のある景色だった。

僕はこう思った。
「この道でポケモンGOがしたい」と。

僕はポケモンをゲットしながらその風情のある道を進んでいく。
そして、僕はいつの間にか風情とかどうでも良くなって、アイテムがより入手できる大通りへ来ていた。
車が、ビュンビュン走っていた。

神輿の最終目的地は八阪神社であり、そこでフィナーレっぽいのを迎えるわけだが、そこから自分はかなり離れた場所に来てしまっている。

そろそろその八阪神社まで行かないといけなかったが、徒歩では間に合わない。

僕は法被を着たまま、地下鉄に乗り、高速移動した。


このようにして到着したのが円山公園。
八阪神社神社の隣にある公園であり、ミニリュウの巣でもある。

この日の僕は祇園祭りのなんらかの神に愛されていたのか、驚くほどミニリュウがゲットできた。

そろそろ八阪神社に向かわないと本当にまずい時間になってきたが止まらない。
遠くから聞こえる神輿の掛け声に囃し立てられたかのようにミニリュウを乱獲していく。
祭りだ。

しかし、祭りには必ず終わりがやってくる。

祇園祭りのお隣で開催されていた小龍祭り(ミニリュウまつり)は『モンスターボール不足』によって終わってしまった。

京都らしい風情を感じる道など歩かず、
もっと早くから大通りでモンスターボールを集め歩いたら良かった。

後悔の念を抱きながら、八阪神社に行くと、ちょうどフィナーレを迎えている。
僕は、そこに紛れ込み、何かをやり遂げたかのような顔をしながら地域住民と感動を分かち合った。

祭りが終わり、
ずっと神輿と拡声器を担いでいたBと先輩Aに合流したが僕に怒ったりはしていなかった。
「どつき回したろか」と言っていたが。

そして地域住民はというと
そもそも僕が祭りに参加していない事実に気づいていなかった。

僕は顔のないただの「学生さん」であり、
もはや、誰が祭りを手伝っているのかはどうでもいいのかもしれない。

ただ、感謝の言葉はもらった。
「ありがとう。来年もよろしく」である。

僕は「とんでもないです」と、ひとこと返した。



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