ニートが異世界転生したらニートだった件 #2



前世でみた不良マンガでは、ボコボコにされた人物は口から血を流し、目はパンパンに腫れていた。

実際に初めて不良たちにボコボコにされたとき、自分もあんなふうになるんだと思っていた。

しかし、この世界の不良たちは、前世の漫画で見た不良たちと違った。

彼らは一歩間違えば重症になる腹や顔などの箇所は避けて、殴る蹴るの暴行を加えてきたのだ。しかも加減もしていた気がする。

おかげで、今の僕の被害状況はふとももや肩がじんわりと痛いだけだ。

そうか!これは物語を盛り上げるための演出なんだ。最初に敗北を味あわせて、そこから成長していく系のストーリーだ。そのために配役されたのが不良たち。だから主人公である僕をボコボコにしつつもあんなに手加減していたのか。

僕は気づいてしまったが、神的な存在にそれを知られると良くないと思ったので「なるほどな」とだけつぶやいた。

僕は公園を出て街へ向かうことにした。

僕が成長するためには事件に巻き込まれたり、仲間と出会ったりしてこの物語を動こす必要があるからだ。

前世の日本そっくりな住宅街を抜けて、大通りに出ると見覚えのある光景が飛び込んできた。

あれ? ここってうちの近所じゃ…そういえば、今まで通ってきた住宅街も一度自転車で通ったことがあるような気がする。

僕は、もう一度周囲を確認する。

カナート洛北にイズミヤに郵便局……間違いない! 前世の様子が完全に再現されてる!

「ということは」

僕は前世で自分の家があった場所へと走り出した。



「あった!」

そこには新妻(にいづま)の表札のある家が確かにあった。

さっそく家に入るが、家の様子も前世となんら変わりない。

14時にだれも家にいない点も同じだ。

そっか、この世界でもお母さんはパートに行ってて、お父さんは会社に行ってるのか。

早く顔を見たかったが仕方ない。二人が帰ってくるまで自分の部屋で待つことしよう。やりたいこともあるし。

僕は前世で自室だった部屋に入り、中から扉の鍵を締めた。


20時。3人での夕食を終えた。

ここでうち(家)のパーティ編成を紹介しておく。

まず、居間にはビリーズブートキャンプを座って鑑賞している不思議系な魔女のような女がいるが、この人物は僕の母である。

一方、台所で母に洗い物をさせられている汚い髭面の奴隷獣人が僕の父だ。

そしてパーティの最後の一人が僕だ。

せっかく不思議系魔女、奴隷獣人がいるパーティにいるので、僕もキャラをはっきりさせておこう。

僕は賢者だ。正確には今だけだが。

そう、僕はこの家に帰ってきて、自室に入り、扉の鍵を締めた後、やりたいことをやるために情報端末を起動した。

そして女神の姿を拝見した。僕はこの女神に3億もの子孫の命を生贄に捧げ、賢者になったのだ。

新妻斗夢(とむ)、29歳。もちろんこのままでは駄目だとは分かっている。もし、このままだと来年から僕は魔法使いだ。




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