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ソラを見上げて #11 夢を見るのはいけない事?

人は思わぬ時に壁にぶつかる事がある。そして……
思わぬ場所で運命の出会いをする事もある。

―○○の部屋・夜―

  今日は○○の様子がおかしい。帰ってきてから、ため息ばっかり。

ソ:元気ないけど、どうしたの? 好きな球団がサヨナラ負けしたの?


〇:なんで野球? ていうかそれくらいで凹まないでしょ。

ソ:それくらいってどういう事よ! あと少しで勝てると思った所からひっくり返された時のショックと言ったら  

〇:その話、長そうだから中止。雨天コールド。

ソ:あら? 野球に例えるなんて中々やるじゃない。


〇:そこ褒められても嬉しくない。

ソ:んもぅ、どうしたの? お姉さんに話してみなさいよ。

〇:人と話せないと良いデザイナーになれないって言われて。

ソ:ほぉ

〇:良い作品を作るには、手先の技術や色彩感覚、想像力やインスピレーションを養っていけば良いと思ってた。でも、今日の講義に来てたプロのデザイナーにそう言われて……

ソ:じゃあ、沢山お話すればいいんじゃない?

〇:僕、極度の人見知りだし、初対面だと緊張して頭が真っ白になるんだよ。

ソ:私とこんなに話してるのに?

〇:ソラは別。

ソ:何が違うのよ!


〇:人が契約した部屋に備え付けの家具みたいに住んでる上に、許可も無しに取り憑いちゃう地縛霊に気を使う必要ないでしょ?

ソ:ぅぐ……悔しいけど、何も言い返せない


〇:プロが言うから正しい、とは思わない。けど、言われた事に対してぐうの音も出なくてさ。

ソ:他に何か言われたの?

〇:デザイナーはクライアントの代弁者。クライアントが考えるイメージ・要求している事を実現するために入念に打ち合わせを重ねる。相手が思ってる事を上手に引き出せないと良い仕事は出来ないって。

ソ:超ド級の正論ね


〇:うん。だったら、人見知りの僕はデザイナーになれないんじゃないかって……

ソ:そっか。それで○○は元気が無かったのね

〇:はぁ、人見知りは夢を見ちゃいけないのかな……

ソ:そんなに落ち込まなくてもいいじゃないの


〇:でも、言われたことは正しいし。

ソ:むぅ……よし! 訓練しよう!

〇:訓練?

ソ:そう。人と話す訓練

〇:どうやって? ソラと話すの?

ソ:こんな事もあろうかとポストに入ってた求人チラシを持っていたのよ!

〇:求人? え? どゆこと?

ソ:これよ!


〇:ん? スタッフ募集? 勤務時間自由……ってこれバイトの募集じゃん!

ソ:そうよ? 場所見てごらんなさい。

〇:野球狂の詩(うた)……スポーツバー? いやいやいや! ハードすぎるって!

ソ:○○から声をかけ辛いなら、自然と会話が生まれる環境に身を置けばいいのよ。そしたら、何が何でもお話するでしょ?


〇:人見知りがスポーツバーでバイト? 一日でクビにされるに決まってるよ! ていうか面接の時点で落とされるって!

ソ:大丈夫! 私がついて行ってあげるから。面接は私に任せて!

〇:えぇぇ……人が沢山いる所なんて僕には無理だよ。

ソ:○○選手!

〇:は、はい!

ソ:ファッションデザイナー。なりたいんでしょ?


〇:……はい

ソ:自分の夢を、性格のせいで諦めるの?

〇:それは  

ソ:夢は人ぞれぞれ。叶えられる人なんて僅かしかいないと思う。でも! だからこそ挑戦するんでしょ? どんなに困難でも叶えたいという想いがあるから立ち向かうの! だから夢なの!


〇:ソラ……

ソ:なんの為に仙台まで来たの? ○○はこんな所で立ち止まっちゃ駄目だよ!

〇:……うん、そうだね。ソラの言う通り、こんな所でつまづいてる場合じゃないし、くよくよ悩んでる時間も勿体ないよね。

ソ:人見知りが何よ? ちょっと会話に慎重なだけじゃない。コツを掴めばきっと克服出来るわ


〇:不思議だな……ソラに言われると、何とかなる気がしてきたよ

ソ:ふふ……苦手な事も、嫌いな食べ物も、生きてるうちに克服出来た方がいいでしょ?

〇:ソラがそれを言ったら誰も言い返せないじゃん

ソ:死人の言葉は重みが違うのよん♪


〇:ありがとうソラ。元気出たよ。

ソ:どういたしまして

〇:さっきのソラ、なんか別人みたいだった……カッコ良かった

ソ:ふふん♪ 今からエリカ様に改名してもいいのよ?


〇:再び却下という判決が下りました。

ソ:異議あり!

〇:お静かに。

ソ:酷い!

ーつづくー



【おまけ】





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