局収支を掲載しなかった理由
ネマタ氏が次のURLにて私の書籍のレビューに関し以下のようなことを書いていた。
(以下、上記URLの第6章Q3のレビューより引用)
局収支が表記されていないのが気になります。(以下略)
(引用終了)
ネマタ氏が「局収支が表記されたいないのが気になります」と書いたこの問題、ページは179ページと180ページ、内容は
「先制ツモり四暗刻聴牌における立直判断」
である。
その際に、局収支を掲載しなかったのが「気になる」のだそうな。
もちろん、局収支を出せと言えば、出せる。
はるか昔、私は麻雀一番街というサイト(今は閉鎖している)において
「先制ツモり四暗刻聴牌の立直判断において、四暗刻ツモ効率、つまり、役満和了率は立直の方が高いことを理由として立直すべき」
と書いたことがある。
その際に、局収支を掲載した。
具体的な内容は次のとおりである。
なお、少し補足するために脇道にそれる。
上記URLと本の数値を比較すると、リーチの数値はあまり変わっていないのに対して、ダマの数値が相当程度違っている。
これは、上記URLの数値の根拠はシミュレーション(しかも凸理論局収支シミュレーション)であるのに対し、本のデータは牌譜解析から求めた数値だからである。
その関係で、本におけるダマの数値は少し高めの数値が出ている。
詳細は次のURLの記事を参考にしてほしい。
少々話が横にそれた。
本筋に戻そう。
この数値で局収支を掲載しなかった理由はちゃんとわけがある。
局収支を比較することに意味がないからである。
局収支は何のために掲載するか、
それは、試合終了時の指標たる半荘収支、平均順位の大小関係を予測するためである。
その前提として、局収支と半荘収支や平均順位は比例の関係にあるのか、という問題がある。
そうでなければ、局収支を比較する意味がないからである。
現段階で分かっていることを言えば、
① 東場、または、平たい場、つまり、4人の点棒が大差ない状況で、かつ、
② 通常の点数変動の範囲(目安として±10000点の範囲)であれば、
局収支と半荘収支は比例の関係にあるとみなせる(多少歪みはあるが)。
本の15ページ以下の文章では①しか書いていないが、実は②も要件になっている。
②についてあまり書かれないのは、倍満以上の和了が頻度として小さいからである。
つまり、
南場、または、圧倒的に点棒に大差がついている状況、または、
点数変動が通常の範囲を超える場合
は局収支と半荘収支は比例の関係にない。
例えば、東1局0本場(持ち点全員25000点)の1000点和了の価値は平均順位に換算して0.09ではあるが、32000点和了したからといって1000点和了の32倍の価値があるわけではない。
これは平均順位が1から4までの値しかとらないので自明であろう。
イメージできなければこのように考えればよい。
そして、ツモり四暗刻では少なからぬ確率(10%以上の確率)で32000点変動する。
本件事例で局収支を持ち出すことは妥当ではないだろう。
以上が、本件事例で局収支を持ち出さなかった理由である。
なお、地和チャンスの問題において局収支を掲載したが、それは地和の和了率がそれほど高くないからである。
あと、地和が役満でないとしても局収支が高まるという事情があったため数値を書かざるを得なかったという事情もあった。
ただ、掲載すべきは地和がない扱いでの局収支だったかもしれない。
まあ、それでも9000点以上あり、7700点よりもはるかに上なんだが。
以上が局収支を掲載しなかった理由である。
参考にされると幸いである。
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