見出し画像

Find Modelという会社の創業から売却を通して学んだこと【前編】

2016年8月にFind Modelというインフルエンサーマーケティング支援を行う会社を創業し、昨年の5月にソーシャルワイヤー社にM&Aされました

創業から売却までの約1年9か月のプロセスと、子会社化後に学んだことを書いたブログです。長くなったので前半と後半に分けました。

前半は事業立ち上げから軌道に乗るまでに学んだことを、失敗談や主観も含めて書いています。事業アイデアの取捨選択のプロセスについても触れています。
後半は実際のM&Aプロセス(相対×入札のハイブリッド型)から売却後のロックアップ期間のことを書きました。「M&A仲介会社/アドバイザーの選び方チェックリスト」も作成しました。

1.自社サービスの検討プロセス

2016年当時、独立したての私は採用コンサルティングを主な収益源にしながらも、何かしら自社サービスを作りたいなと思い色々と模索をしていました。
事業化の意思決定のために重視した判断軸は4つあります。

画像1

(1) 伸びる市場である「確からしさ」
成功した起業家が「運よく市場が伸びた」という趣旨の発言をしているのを良く見かけますが、「伸びる市場に、伸びるタイミングで」参入することの重要性が伺えます。
私はそれを「市場ポテンシャルの大きさ×数年以内に伸びる確からしさ」の掛け合わせで定義し、事業アイデアをマッピングしていきました。
野球に例えるなら市場ポテンシャルの大きさ≒飛距離、 数年以内に伸びる確からしさ≒打率、といったイメージです。

「数年以内に伸びる確からしさ」よりも「市場ポテンシャルの大きさ」を重視した事業は、いわばホームランか三振か。ユニコーンを目指すことにも夢はありますが、甲子園で優勝を目指すよりも難易度は高そうです。
資金面に余裕のある大企業の新規事業であれば、市場ポテンシャルの大きさを重視すべきだと思います。
スタートアップでも「色んなものを犠牲にしてでも、成功するまでやり続けられる」と思える事業アイデアであれば、エクイティ調達を行い5年~10年かけて(上場した後も含めるとそれ以上)目指せば良いと思います。

当時の私はゼロから一人で事業を作るのが初めて、かつ家族持ちの状況でしたので、いきなり甲子園優勝を目指すよりもまずは「起業家としてやっていける」自信が持てるような結果を出すことが大切だと思い「数年以内に伸びる確からしさ 」の方をより重視しました。
以下は2016年当時、インフルエンサーマーケティングの領域を検討した時に考えたことです。

‐ 情報入手を行うメディアがマス媒体からスマホに移行する傾向はまだまだ続く。スマホの中でも、Instagramは特に伸びている。
‐ Instagramは周りの女性が使っている様子を見る限り、飽きも来ていない。まだまだ伸びるはず。(身近な人達をよく観察して検証)
‐ 海外でインフルエンサーを活用したマーケティングが伸びており、日本でもインフルエンサーを活用して商品が売れた成功事例が出てきている

結果的に、サービス開始からM&Aまでの 約1年9ヶ月の間もその後も、想定以上に市場は伸びました。

‐ 国内のInstagramユーザー数は約1200万人→2000万人以上に(それぞれ2016年3月と2017年10月時点の発表数字。最新では2900万人以上まで伸びています)
‐ 2017年の流行語大賞が「インスタ映え」に
‐「インフルエンサーマーケティング」というワードの検索回数は7倍以上に ※2016年8月14日週と2018年5月13日週のGoogleトレンド比較。直近だとさらにその1.5倍伸びています

(2) 現在何に使われているお金をリプレイスするか、明快なこと
B向けサービスもC向けサービスも一緒だと思っているのですが、何かを購入する予算が突然、魔法のように増えることはありません。基本的には、いま何かに使われている予算がリプレイスされるだけです。
インフルエンサーマーケティングは特に当時は、TVや雑誌のような認知広告に近い側面がありました。

20代を中心とした若い人が「テレビの代わりにスマホを見ている」とか「Instagramを見て買いたいファッションやコスメを選ぶ」ということは当時からすでに言われていました。
インフルエンサーごとにフォロワーの属性が明確に異なるため、ターゲティングも行えるという優れた点もあり、テレビや雑誌(合わせて市場規模2兆円以上)の認知広告市場をリプレイスできるであろうことは明確でした。

(3) 自分の心が揺れ動く、使命感を持てる事業であること
成功するためには、成功するまでやり続ければよい。とはいえ、心の底からやりたいことでないと、やり続けることは難しい。

私の心が揺れ動くことの一つに、父親の労働環境があります。
建設業界で、個人で小さな会社を経営しているのですが、業界内の立場としては決して強くなく、複数の大手・中堅企業からの中抜きを経て父のところに仕事がやってきます。
仕事をもらうためには(時には)何の役割を果たしているか分からない中抜き業者に頭を下げないといけない。
そのような父の姿を見ていて「ワーカーが中抜き会社に搾取されているような業界」を是正することに貢献したい、という意思がありました。

ただ、それは必ずしも 建設業界に限定しなくてもよい。他の業界でも、「中抜き業者の駆逐」というワードだけで心が揺さぶられ、自分自身の使命感を十分に感じることができる。
大切なのはモチベーションのガソリンになり続けてくれるかどうか。

広告業界にも、建築業界と同じような中抜き構造は存在しました。
インフルエンサーのキャスティングの流れには、お金の流れの実例として以下のようにたくさんの会社が介在しているケースが一般的に存在しました。

画像2

広告代理店、代理店子会社やPR会社(もしくは制作会社やメディア運営会社)、キャスティング会社 etc…

それぞれの会社が「中抜き」をした結果、広告主の支払い金額の約80%が間に入った会社のマージンになっている…!というケースもありました。

クリエイティブを作成して投稿まで行うインフルエンサーよりも、仲介会社のマージンの方が多いのは一体なぜか?
もちろん、間に入っている会社がそれぞれの価値を発揮しマージン額以上の利益貢献ができている場合は問題ないのですが
そうでないケースにおいては、ディレクションの介在者を減らすことができれば、広告主にとっては1投稿あたりの発注単価が下がり、同額の予算でリーチ量を増やすことができるというメリットが生じます。
また、インフルエンサーにとっても中抜きが減る分、1投稿当たりの報酬が増えますし、広告主の発注総量が増えれば仕事の機会も増えることにもなります。

(4) 顧客(orユーザー)基盤の強い大企業が競合にならないこと
「顧客基盤が強い企業」というのはリクルートのように優秀な営業部隊が各業界の顧客との強固な接点をすでに持っている企業のことを
「ユーザー基盤が強い企業」というのはLINEや楽天、大手キャリアのように数千万単位のユーザーにいつでもアプローチできる接点を持っている企業のことを、それぞれイメージしています。

どれだけ先行してよいサービスを作っても、顧客基盤やユーザー基盤の強い会社がパワープレイに出てくる可能性がある事業領域だと、あっという間にリプレイスされるリスクがあります。

今回のビジネスはインフルエンサーと広告主のマッチングビジネスなので、そのどちらかと強い接点を持つ企業がその対象となります。

Instagramのインフルエンサーについては、強い接点を持つ会社は存在しなかったですし、魅力的な仕事を提供できるプラットフームについてきてくれるはずなのであまり気にしませんでした。
広告主については、既存の大手代理店が同様のサービスを展開した場合は間違いなく脅威になります。とはいえ大手代理店が自らのビジネスモデルを壊す直接マッチングを行う可能性はまず低いだろう、と判断しました。

開発前に同様のサービスの有無についても調べたのですが、開発を始めた2016年5月当時は広告主とインフルエンサーを直接マッチングさせようというサービスは(私が調べる限りは)存在しませんでした。
UUUMが最近M&Aしたレモネードというサービスが同様のマッチングサービスで2016年8月リリースだったようなので、同じ時期に同じ課題感を持っていた方がいたんだと思うと感慨深いです。

以上①~④の判断軸を踏まえた上で、インフルエンサーマーケティングサービスを最初の事業にすることを決意しました。

2.その他に検討した事業と選択しなかった理由

画像3

(1) 画像解析を活かしたファッションECレコメンドサービス
当時、すでに「Instagramを見て買いたい服やコスメを見つける」女性は多く存在していたので、アプリ上で見つけたアイテムがどこでいくらで売っているかレコメンドしてくれるサービスを考えていました。
画像解析の技術が必要なので開発できる人は限られていましたが、無事にパートナー候補も見つかり話は進んでいました。

しかし、「この機能、Instagramが公式機能として出してくる可能性も十分にあるな。そうなったらサービスの存在価値がなくなるな…」という考えが私の頭をふとよぎり、開発を開始する手前でクローズしました。
2018年6月にInstagramショッピングという公式機能が出てきたので、結果的にこの判断は正解でした。(ちょうど最近も、新しいEC機能の発表がありました)

(2)HRテック系全般
私が前職で採用担当を経験していたことや、働き方改革という言葉も流行り始めていたのでこの分野でのサービスを作りたいという思いは強かったです。
一方で、HR出身だからこそ思っていたのは、「新サービスを作っても(採用部門以外の)予算を確保しにいくハードルは高い」ということでした。

‐ 採用以外の部門に大きな予算がある企業は少ない
‐ あったらよいね、レベルのサービスに新しい予算がつく可能性は低い。出ても次年度
‐ 既存サービスからのリプレイスコストが高い

すでにSmartHRのような便利なサービスも出ている中で、同じようなサービスを出しても成功確率は決して高くないと判断しました。

採用についても、マッチング系のサービスはレッドオーシャンだったので採用管理システム(ATS)の開発提供を考えていましたが(ひと昔前は使いづらいものばかりでした)、ちょうどその頃にビズリーチやネオキャリアから使いやすいサービスが出てきて、これは厳しいと思いました。
サービスのクオリティが高かったですし、ビズリーチやネオキャリアは私の中で「顧客基盤の強い会社」にあたるからです。

(3)シニア求人
(2)で採用のマッチングサービスはレッドオーシャンと書きましたが、本格検討したサービスもあります。

求人数に比べて働き手の数が圧倒的に足りていない中で、定年後のシニアに限っては「スキルを活かした仕事をしたいが良い働き先がない」という「不」を抱えています。
人が採用できないと困っている企業はいくらでもあるので、「その仕事、シニアに任せてみませんか?」という提案をすることで大きな価値提供ができると考えていました。
労働者人口が減っていく日本を救うのは、シニアしかいない!と熱くなっていた時期もありました。

実はこのアイデア、エンジェル投資家の高野さんに打ち明けたときにメッセージで返信頂いた「シニアの求人ニーズがある具体的な会社はどこなのでしょうか」という一言に、「あ、あまりいないかも…」と気づかされました。

顕在化しているニーズではない以上、他ニーズの代替ソリューションの提供になります。シニアの方々の活用イメージやマネジメント経験のない会社にこのソリューションを提供するには、個社ごとに課題解決型営業やオペレーションサポートが必要になります。
それこそリクルートのような顧客接点の強い企業が行えば成功する可能性もあるかもしれないが、私が1人で開始してもスケールする可能性は低い、と気づき断念しました。

他にもいくつかシニアやママ、地域創生など社会貢献性の高そうな事業を検討したのですが、社会貢献性が分かりやすい事業ほど、ビジネスとしての成功ハードルは高くなります。
何を社会貢献と定義するかにもよりますが、どんなビジネスを行っていても利益を出し税金を納めていればそれも十分社会貢献ですし、社員が幸せに働く環境を整えればその幸せは社員の家族や周りの人にも伝播し、確実に世の中は良くなります。

検討の末、開発に踏み切ったFind Modelは広告関連のサービスではありますが「インフルエンサーの仕事を増やす」ことに貢献できていると思っているので、かなり広義で考えるとHRサービスにも当てはまると考えています。
「本当に良い商品を、必要なユーザーに効率的に届ける」ことに貢献していることも、これはこれでひとつの社会貢献性の高いビジネスだと思っているので、私はこのサービスが大好きです。

3.外部パートナー選定の失敗

開発当時、社内リソースは私1人だったので、デザインとWeb開発は外部のパートナーにお願いをしました。

結論から言うとWeb開発については途中で開発会社を変更せざるを得ない状況になり、予定していたリリース時期も2か月以上遅らせることになってしまいました。

なぜそのような事態になってしまったのか?
私が開発会社のディレクションに慣れていなかったことが一番の原因ではありますが、振り返ってみると「紹介」の際に気を付けるべき汎用的な要素が見つかりました。

一緒に仕事をしたことの無い人からの紹介は、仮にスキル面に問題がなくても「仕事の進め方やスタンス」にズレが発生する可能性があるということです。

画像4

(1)デザイン
元同僚のデザイナーに副業でお願いをしました。UI設計やデザインはもちろん、どうやったらよいサービスになるかを一緒に考えてくれたり、私が詰め切れてないところを指摘してくれたり、たくさんの手助けをして頂きました。

(2)開発会社A
プライベートで仲の良い、コンサルタントをしている友人が紹介してくれた開発会社に最初は依頼しました。スキル面は問題ないはずだったのですが開発はうまく進まず、リリースに至ることはありませんでした。

(3)開発会社B
元同僚のエンジニアの方が紹介してくれた開発会社に、開発会社Aが開発できなかった部分を依頼をしました。作りかけのとっちらかった状態のものを、リリースできる状態まで仕上げてくれました。

開発会社AとBの違いですが、最初は「開発会社はエンジニアに紹介してもらった方が間違いないということ…?」と思いましたが、今回はそれが要因ではなかったと思っています。
というのも、スキル面では開発会社Aも問題ないことは確認できていました。あくまで仕事の進め方やスタンス、コミュニケーションスタイルの問題でした。
私とコンサルタントの方との関係性はあくまで友人なので、仕事の進め方やコミュニケーションスタイルを理解しあっているわけではありませんでした。
一方で、開発会社Bを紹介してくれたエンジニアの方は、仕事のPRJを一緒に進めた経験もあり信頼関係も出来ていました。その上で私に紹介してくれた開発会社なので、私との相性的なものを考えて紹介してくれたと思います。

開発会社Aについては、こういう依頼をすればここまでやってくれるという私の期待値と、先方の認識に大きなずれがあり、それは最後まで埋まりませんでした。
「この人たちは、仕事を舐めているのか?」とまで思いましたが、それは仕事に対する価値観の押し付けだったと反省しています。

4.サービスリリース

新しい開発会社Bの協力の元、サービスをリリースできる目途が立ったのでリリース内容の検討に入りました。

新しい広告手法が出てきたとき、企業のマーケティング担当者や広告代理店は、「その広告手法を用いた成功事例の有無」を活用の判断材料にします。
なので新サービスのリリースや新しい機能や使い方の発信をするときは、実際の活用事例をセットで伝える方が効果的だと考えました。
また、同じ業種内の事例を求められることが多いので、出来るだけ幅広い業界の事例を発信すること+マーケティング担当者にも認知度のある広告主であることを重視しました。

リリース後4か月で10個のプレスリリース配信をしていますが、事例で広告主の名前を出させて頂いている案件のアサイン費用は当社負担でやらせて頂いてます。(広告主の方々も取り組みを少しでも良いものにしようと、多大な工数を費やして取り組みに協力をして下さりました。)
サービスリリースのタイミングでは、ユニリーバのLUXというブランドでの取り組みをご一緒させて頂きました。
元々ユニリーバの方で「ラックスガール」というアンバサダー活動をやられていて、そのメンバーの追加募集を Find Modelのシステムを使って行うという企画でした。

リリース文面の添削やリリースのネタ出しは起業同期ということで仲良くしてもらっているそめひこに手伝ってもらいました。

画像5

最初のリリース(2016年9月1日)は、同日のリリースだった「AnyPay」を 超えて一時は PRTIMESの「新着」の1位になり、デイリーランキングにも入りました。

5.誰も使わないマッチング機能

画像6

リリース後、登録インフルエンサーと広告主の数は順調に伸びたのですが、サイト上のマッチングは3か月たっても1件も発生しませんでした。

マッチングが発生しないどころか、広告主がインフルエンサーを「お気に入り登録」する機能や、サイト上でダイレクトメッセージをする機能も1回も使われませんでした。

サービス開発前に、仮説検証のために広告主の方々に「こんなサービスがあったら使いたいか?」という聞き込みを行った際は「とても良いと思う」「使ってみたい」という回答がほとんどでした。
どうして実物ができたのに、広告主はインフルエンサーとの直接マッチングを実現しようとしないのか? 再度ヒアリングした結果、私が「真のニーズ」をつかめていなかっただけだと気づかされました。

画像7

サービス開発前のヒアリング時点では、私はこのサービスが実現したときのメリットを重点的に伝えていました。

✔︎ 間に入る仲介会社が減る分、これまでよりも安価での発注が可能
✔︎ 間に複数の伝書鳩がいるよりも直接コミュニケーションした方が早いしスムーズ

ただし、広告主はサービスの内容を深く理解して「Good」と言ったわけではなく「安くなる」「早くなる」「スムーズ」という私が推しだしたメリットに対して「Good」と言っただけでした。

広告主が限られたリソースの中で「インフルエンサーマーケティング」というひとつのチャネルに対して、最良の手法や企画を考えて数千のインフルエンサーの中から適したインフルエンサーを選定するというのは非常にハードルの高いことです。
それを外部の専門家にまかせた方が効率的なのは当然のことでした。

✔︎ インフルエンサー選定やディレクションはやってほしい(MUST)
✔︎ 有効活用方法や、効果を出すための企画を提案してほしい(MUST)
✔︎ コミュニケーションコストや費用は少ない方がベター(WANT)

というのが真のニーズでした。
顧客の求めるサービスではなく自分が作りたいサービスを作ってしまった。
事前調査時に自分の仮説を正当化させるバイアスをかけてしまった。
これがサービスがうまくいかない原因でした。

とはいえ、登録をしてくれたインフルエンサーに仕事を提供したいという気持ちも強かったですし、リリースを見た広告主からの問い合わせも継続的に来ていたため、私がディレクション介在をして事業を継続しました。
ディレクションフィーも広告マージンとして良識の範囲内に収めて提供をした結果、広告主からの引き合いはどんどん増えていきました。

6.炎上し即日取り下げた新機能

画像8

「Find Model」とgoogle検索すると、サジェストで「炎上」と出てきます。2017年1月、「インスタアフィリエイト」という機能をリリースした時に起きた事故が原因です。
リリースした内容がInstagramのポリシーに合っていないためインスタグラマーのアカウントがBANされるリスクがある、という理由で広告業界の方々が異論を発し、結果的に多数の方々がSNSで問題を指摘する投稿を行い、炎上しました。

当時、プロフィール欄にASPの成果計測用URLを貼っているインフルエンサーが増えていました。完全成果報酬の取り組みに対するクライアントからの問い合わせも増えていたため、ニーズの大きさを感じていました。

通常の認知獲得重視の案件ではフォロワー数の多いインフルエンサーに依頼が偏るケースが多かったのですが、フォロワー数百人~数千人のマイクロインフルエンサーもFind Modelに登録してくれていたので、どうにか仕事を提供したいという思いもありました。

プロフィール欄への成果計測用URLの掲載がOKなインフルエンサーをネットワーク化できれば、広告主にとっては効率的に獲得件数を稼げる有効なチャネルになります。
同時に、インフルエンサーにとっても案件数が増え、かつ単価も上がるので(成果報酬系の案件は獲得件数が多い媒体がより高単価な成果報酬金額になるので)両社に良い取り組みだと思い「インスタアフィリエイト」というネットワーク広告をリリースしたという経緯がありました。

とはいえ指摘されていた内容はその通りだったので、当日中にリリースは取りやめ、この商品の販売には至りませんでした。
炎上している最中、「大丈夫?」と気にかけてくださった広告主はいらっしゃったのですが、これを原因に取引を停止される広告主はいませんでした。信じ続けてくれた方々に心から感謝していますし、思い返すと頭が上がりません。

7.マーケティングメディアのリリース

画像9

「インフルエンサー」や「Instagram」に興味を持つ広告主は多かったですが、それをマーケティングにどう活かせば良いか?という知識を持った広告主が当時はほとんどいなかったことに気づきました。

一方で、検索をしても客観的かつ体系的に解説をしているメディアは存在しませんでした。
知識やナレッジを積極的に発信していくことはマーケット拡大に寄与できるだろうと考え、インスタラボというメディアを2017年3月にリリースしました。

このサービスは2016年の後半にジョインした飛田がプロデューサーを務めたのですが、「インフルエンサーマーケティング完全ガイドブック」をダウンロードできるようにしたり、各SNSのユーザー数を(広告主が社内で使用しやすいように)エクセルで配布したりしました。

工夫の結果、リリースからわずか3か月後の6月には「問い合わせ数」と「資料請求数」が合わせて月間70件近くになり、大きな手ごたえを感じました。
メディアは今も成長を続けていて、「インフルエンサーマーケティング」や「インスタグラマー」といったキーワードでは検索上位に位置しています。

8.三か月以内リピート率は約67%

自分が商売をやっていると、リピートしてくれるお客様のありがたさを骨身にしみて実感します。また、お客様が他社の大切な知人様を紹介してくださったりすると、紹介者の期待を絶対に裏切りたくない…という気持ちになります。

なので私は、リピートと紹介のお客様を最優先に対応をしてきました。
リピートし続けて頂くために気を付けたことは以下のポイントでした。

画像10

(1)効果を返す
  →KPIを明確にし、達成する

まず、広告主にとって継続的に活用できる良質な広告手法でありたいというスタンスを伝えた上で、今回のプロモーションによりどういう状態になったら継続的な活用につながるか?を聞くようにしています。
こうすることで広告主が目指すことと当社が目指すことの視点が合います。
ありたい状態に近づいたかどうかを現実的に計測できる方法を提案し、KPIを設定します。

大事だと思っているのは、インフルエンサーの投稿そのものへの反応だけでなく、それを通じて広告主の売上や流入、認知度向上に貢献できたか?をできる範囲でメジャラブルにすることです。
広告主が単一商品を展開していれば時期別の比較、複数商品を展開しているのであればプロモーションしている商品とその他の比較、など工夫します。
あるコスメは、プロモーションを行ったカラーが他のカラーの10倍以上売れた、という実績もありました。

(2)幅広いニーズに応える
  →応え続けることで自社のソリューションスペースを広げていく

顧客から求められたことがそれまで事例が無い内容でも、それが本当に顧客の成果に繋がること(かつ正しいこと)であれば、まずは「できます」と答えてきました。
そしてその発言を裏切らないよう、後で必死に実現方法を考えていました。
「他社では断られたのに、お願いできて助かった」と顧客から言ってもらえることは誇りでした。

一度実現できればそれが自社の提案の引き出しにもなるので、「顧客の課題解決をすること=自社のソリューションスペースを広げ他社と差別化ができる最高の機会」と考えてポジティブに取り組んできました。

リピート顧客の売上比率が上がっていくと毎月売上が積み上がっていきますし、何より評価していただけることが嬉しいので自分のモチベーション向上にもつながりました。

(3)安心、信頼
  →オペレーションで事故を起こさない+マージンをボラない

どちらも当たり前の事ではありますが、その当たり前を担保し続けることが広告主からの信頼に繋がります。

オペレーション上で万が一ミスが発生してしまったら、それを事実そのまま広告主に伝える真摯さと、最速でリカバリーする対応力が必要です。

9.インカミングが増えすぎて対応できない状態に

リピートのお客様が積み重なって発注量が増えたタイミングと、メディア経由のアクション増加のタイミングが重なったことでリリース後9ヶ月後には問い合わせ対応を満足に行えない状態になっていました。

営業担当は私だけだったのですが、もう1社経営していたので費やせる時間は0.5人月のみだったこともあり、リピート顧客の対応で対応リソースが埋まる状態になってしまっていました。

サービスのリリース当初はマッチングモデルを目指していたので、営業リソースを確保しないと成長が止まってしまうという事は想定していなかったことでした。
営業組織を作り組織を拡大していく意思決定に対しては、自分の中でかなり悩みました。

‐ 私は営業戦略や広告商品の設計を行うのは好きな一方で、営業組織のマネジメントは不得意分野である
‐ もう1つ経営している会社で色々と新規でWEBサービスを作ろうとしていたこともありFind Modelには最大で50%程度のリソースしか避けない中で経営から組織作りまでやりきれるか、不安
‐ 一度広告営業の組織を作ってしまうと、広告事業以外への事業ピポッドがしづらくなる

ちょうどそのころ、尊敬するトップクリエイターの方とお話しする機会がありました。私の覚悟の弱さを見抜かれたのかもしれません、

「業界構造を変えたいと思うなら、変えた後もその業界を支え続けていく信念が必要」
「その信念がないなら、流行りにのってあぶく銭を稼いでいるだけの人と大差ない」

そう言われて、その通りだと思ってしまいました。

広告主にもインフルエンサーにもメリットがあることをやっているという自負はありましたが、このビジネスをやり続け業界を支えていくことが自分に出来るのか?を自問自答するようになりました。

10.複数のM&A関連会社からの声掛け

ふとしたタイミングで、創業当時から顧問として入って頂いていた方に悩みを相談したところ「事業の拡大フェーズに強い会社にオーナーを譲って、意思を引き継いでもらうという選択肢もある」というアドバイスを頂き、確かに良い譲渡先が見つかるならそれもありかもしれない、と考えるようになりました。

それまでにM&A関連の打診はいくつかあったので、検討のために数社に会って話をしてみました。当時ちょうどM&A仲介をする会社や個人が増えていたタイミングだったのですが、正直怪しい会社もあったので、勝手ながらチェックリストを作成しました。

前編は以上です。この続きは後編をご覧頂ければと思います。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?