医学論文の読み方 書評

背景:医学論文の読み方について、これまで多くの参考書を参照したが、一冊で網羅されていることはない。

さらに、医学論文でよく見られる研究デザインであっても、必ずしも十分解説されていない。例えば、ランダム化比較試験 (RCT) では、群ごとに前後の測定値が存在するため、単純に介入後の数値をt検定で行うことはできない。このため、統計的には以下のような手法が存在している。

・前後の差を t 検定
・前後の比を t 検定
・two-way ANOVA
・ANCOVA

このことを解説している参考書は殆どない。さらに、これらの適否について解説している参考書は、レビューした範囲では存在していない。

そこで、まずは現在市販されている医学論文の読み方・書き方やそれらに関係する統計の本などをレビューして見た。

方法論:日本で出版されている、医療系に特化した論文の書き方、読み方、統計の書籍を収集した。扱われている研究デザインを調査し、扱われている統計を調査した。キーワードは、索引から本文を確認し、説明がされているかを確認した。キーワードは、概ね医師国家試験で出題されているキーワードとした。

keywords: 感度と特異度, サブグループ解析, 二重盲検, バイアス

今後調査する keywords: ITTとper protocol, 交互作用, 声明 (CONSORT など), ファンネルプロット(出版バイアス), フォレストプロット, ロジスティック回帰

調査の予定のないkeywords: 傾向スコア, パラレルデザイン(ランダム化比較試験), モニタリングと監査

医学論文の読み方

わかってきたかも「医療統計」…だけど論文読めません!!

研究デザインごとに、Abstract を読み、さらに Tables and Figures を読むことを推奨している。PICO/PECO に焦点を当てて簡単にしようとしているが、実際には PICO/PECO だけでは解説しきれていない。

論文を正しく読むのは結構難しい

「わかってきたかも」がアブストラクトと図の斜め読みを解説しているのに対し、本書は「アブストラクトと図の斜め読みは危ない」と警鐘している。一通り、医学論文の読み書きができるようになってから、改めて読みたい本。

扱う統計: 統計は扱われているが、重要視されていない。

扱う研究デザイン: ランダム化比較試験, 観察研究

keywords: サブグループ解析, 二重盲検

医学論文の書き方

臨床研究の道標

(旧版についてのレビュー)

扱う統計: オッズ比とリスク比, 回帰モデル, 寄与割合, 傾向スコア, 

扱う研究デザイン: メタ分析以外のEBM研究デザイン

keywords: 感度と特異度

医学論文のための研究デザインと統計解析

研究計画書作成とマーカー研究(スクリーニング)にそれぞれ1章を割り当てているのが特徴。

必ずアクセプトされる医学英語論文

論文の書き方を手取り足取り解説している。論文を書き上げた後で、投稿する前に確認に用いると良い。

研究方法

ゼロから始めて一冊でわかる!みんなのEBMと臨床研究

本書は、医療関係者向けに、疫学研究や臨床研究を読む上で必要な情報を網羅している。ただし、論文を読むというよりは、統計を実際に計算して理解するアプローチになっており、統計の教科書としても使うことができる。

扱われている統計:EBMで用いられるほぼ全ての統計、ただしANOVAは詳しくは解説されていない。

keywords: ITTとper protocol、感度と特異度、二重盲検法、リスク比とオッズ比、ロジスティック回帰

統計

Rによる心理・調査データ解析

扱う統計: 相関係数, chi-squared, t, one-way ANOVA, two-way ANOVA, 重回帰分析, クラスタ分析, 因子分析

扱う研究デザイン: 明示的に研究デザインは示されていない。

「相関係数」と「無相関検定」がわけて説明されている。相関関係の場合、p値よりも相関係数が重要である。

相関で層別解析が解説されている。層別解析は、全体の中からある要因で層に分け、その層内で解析を行うというサブグループ解析の一つである。例えば、加齢による影響が考えられるときに、65歳未満と65〜75歳、75歳以上の3層に分けて解析を行う。本書では、相関についてのみ解説されているが、他の解析でも用いることができる。

翻訳書

医学英語論文の読み方

テーマごとに、短い章立てとなっていて読みやすくなっている。

読む技術:論文の価値を見抜くための基礎知識

かなり網羅的な解説書だが、帯には「四則演算ができれば」とあり、統計学の数学的な解説は省かれている。

扱う統計: 統計は扱われているが、重要視されていない。

扱う研究デザイン: EBMのすべての研究デザインに加え、経済分析や定性的研究にも独立した章がある。

JAMA 医学文献の読み方

医療者がどのように論文を評価するかについて焦点が絞られている。

扱う統計: 統計は扱われているが、体系的には書かれていない。尤度比やオッズ比、感度と特異度の解説は詳しい。

keywords: 感度と特異度, サブグループ解析, 二重盲検

臨床研究を正しく評価するためには

「臨床研究」に特化しており、基本的にランダム化比較対照試験について書かれている。一通り、医学論文の読み書きができるようになってから、改めて読みたい本。

扱う統計: 統計は扱われているが、重要視されていない。

扱う研究デザイン: メタ解析, ランダム化比較試験, 観察研究

keywords: サブグループ解析, 二重盲検

医療専門職のための研究論文の読み方:批判的吟味がわかるポケットガイド

第1章から第6章までは、基本的な知識と心構えについて書かれている。第7章からは、サーベイ(横断研究のこと)、コホート、臨床試験、症例対照研究、メタ分析についてであるが、基本的知識がある人向けに「批判的吟味」をするためのポイントが書かれている。

扱う統計: 統計は扱われているが、重要視されていない。

扱う研究デザイン: 全てのEBM研究デザイン

keywords: サブグループ解析, 二重盲検, バイアス



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MedEngWriter

博士(医学)。医学部医学科英語学非常勤講師。元大手予備校および医学部専門予備校小論文講師。専門は老年学とまちづくり学。「医学論文の読み方」と「医学部小論文」を書いていきます。ベストセラーよりロングセラー。目標は、京大に介護福祉学科を作ること。

医学論文の読み方

本には書かれていない、教科書的でない「医学論文の読み方」を紹介します。
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