コラム:PICO/PECO

近年、Evidence Based Medicine の流れの中で、リサーチクエスチョンの作り方の技術として PICO/PECO という方法が流行っている。

ところで、これをさらに「論文を読む」技術として利用する方法が多く提案されている。しかし、これには弊害があると考える。そこで、PICO/PECO とはどのようなもので、これを「読む」のに使う際に、どこに問題があるか考察する。

PICO/PECO とは

PICO/PECO は、リサーチクエスチョンを作る際のチェックリストのようなものである。以下のような例を考えてみよう。

例:イチョウ葉エキスは認知症に効くのか?

この時、「イチョウ葉エキス」と「認知症」だけでは、リサーチクエスチョンにならない。そこで、PICO/PECO に当てはめると、

Patient: 認知症患者

Intervention/Exposure: イチョウ葉エキス

Control: 未設定

Outcome: 未設定

となる。そこで、対照群として、同じく認知症患者を設定し、Outcome として、認知機能の検査であるMMSEなどを設定する。

PICO/PECO に足りないもの

PubMed 等でキーワードから検索すると「タイトル」「アブストラクト」がでてくる。タイトルには、P や I が含まれていることが多く、さらに「研究デザイン」が書かれていることが多い。これは、CONSORT や PRISMA といった研究デザインのガイドラインが、できる限りタイトルに研究デザインを明記することを推奨していることによる。

さらに、アブストラクトを読み進めると、目的、研究方法に PICO/PECO が書かれており、その後に結果と結論が続く。

また、メタアナリシスの場合、アブストラクトまでよんでも、C や O がはっきりしないこともある。論文によって C や O の設定が異なり、複数の設定がなされている場合、アブストラクトでは簡潔に書かれすぎていることがある。つまり、メタアナリシスに PICO/PECO が向かない。

RCT やコホート研究であれば、PICO/PECO は十分情報をカバーしているだろうか?実は、P (Patient, Participant, Population, Problem) は、実に様々な情報を含み、Setting と呼ばれることもある。対象者の年齢層はどうなのか?それは母集団を代表しているのか?入院中なのか地域在住なのか?こうした情報までカバーして、はじめて臨床的示唆が得られる。例えば、どんなに素晴らしい研究であっても、イギリスで行われた研究であれば日本で適用できるかはわからない。P という一文字には、そのような多様な意味が込められている。

つまり、PICO/PECO で不足している情報としては、研究デザイン、セッティングがある。また、PICO/PECOは、メタアナリシスには使いづらい。こうした点に注意する必要があるだろう。

まぁ、一言で言うと、PICO/PECO はもうそろそろ終わりじゃないの?ということです。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?