キーワード解説:医療と経済性

寝たきりの状態で10年生きるのと、元気に5年生きてコロリと亡くなるのと、どちらがいいですか?

従来、医療では治療をして患者を健康にすることが目的でしたが、平均寿命がのび、また医療が発達する中で、健康でない状態で生き続けることも多くなりました。このため、寿命よりも生活の質が重要視されるようになってきました。

QOL は、健康に関連すると、客観的に測定できる身体活動と患者自身の主観的なものに大別することができます。身体活動は、ADL (Activities of Daily Living, 日常生活動作) によって測ることができます。また、主観的な QOL は質問紙によって測ることが一般的です。

ADL は、食事、排泄、整容、移動、入浴などの基本的な行為を指します。
朝目が覚めたら、自分で起き上がることができるか、ベッドの上で座れるか (側臥位)、ベッドから立ち上がれるか、などを判定します。
これらは、要介護認定の際にもなされます。

主観的QOLは、SF-36 などの一般的な質問紙や、これの簡易版である SF-12、SF-8、疾患特異的な質問紙である KDQOL (腎疾患)、GOHAI (口腔関連)、DLQI (皮膚疾患) など、非常に多くの手法が開発されています。近年、健康関連QOLを、0〜1の値で推定する手法が登場しました。EuroQOL (ユーロコルと発音) です。

QOL で調整された寿命 (Quality Adjusted Life Year, QALY, 「クオリー」と発音)は、EuroQOL などを用い、QOL が最も高い状態を1、死亡した状態を0として調整した寿命です。例えば、寝たきりというのを QOL=0.2とすると、「寝たきりの状態で10年生きる」ことは 0.2 x 10 = 2 QALY で、「元気に5年生きてコロリと亡くなる」ことは、 1 x 5 = 5 QALY となります。

このように、QOL を考慮して医療費を考える手法は、イギリスで採用されましたが、その他の国では慎重です。

医学部小論文

・昭和大医学部医学科 平成30年度 選抜II期



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