キーワード解説:高齢化

受験生の皆さんは「高齢者」と聞いて、何歳以上をイメージするでしょうか?高齢者とは、ほとんどの場合は65歳以上を指します。なかには、60歳以上とすることもあります。なお、65歳以上を前期高齢者、75歳以上を後期高齢者、85歳以上を超高齢者、100歳以上を百寿者とわけることもあります。

わが国で高齢化が進んでいることは、聞いたことがあるでしょう平成26年度高齢社会白書によりますと、わが国の総人口は、平成25(2013)年10月1日現在、1億2,730万人と、23(2011)年から3年連続の減少ででしたが、65歳以上の高齢者人口は、過去最高の3,190万人(前年3,079万人)となりました。この結果、総人口に占める高齢者の割合(高齢化率)は 25.1 %(前年24.1 %)と過去最高となりました。

平成24(2012)年1月に国立社会保障・人口問題研究所が公表した「日本の将来推計人口」によりますと、高齢者人口は今後、「団塊の世代」が65歳以上となる平成27(2015)年には3,395万人となり、「団塊の世代」が75歳以上となる37(2025)年には3,657万人に達すると見込まれています。その後も高齢者人口は増加を続け、54(2042)年に3,878万人でピークを迎え、その後は減少に転じると推計されています。この推計通りであれば、皆さんが医療従事者になったころもまだ高齢化率が高まり続けることになります。

高齢化の課題

医歯薬看護学部の小論文でも、高齢化はたびたび取り上げられるテーマですが、課題と解決策には、政治学的や社会学的なアプローチと医学的なアプローチがあります。ここでは、医学的アプローチに特化してみましょう。

現在、「フレイル」「ロコモーティブシンドローム」「サルコペニア(筋量と筋力の減少)」と言った言葉が聞かれるようになりましたが、高齢者は病気や怪我をしやすくなっています。例えば、嚥下反射という不随意運動が衰え、唾液が肺に入りやすくなり、知らず識らずのうちに誤嚥性肺炎を発症してしまいます。また、高齢者は典型症状を示さないことも多く、従来の成人を対象にした診断基準が適用できないこともあります。

こうした課題に対して、生活習慣を改善することで、「フレイル」の状態から要介護の状態に移行させないようにする取り組みが求められています。具体的には、運動療法、栄養療法を始めとした予防的な取り組みを広めることです。特に、高齢者の場合は、「運動よりも家事や移動、余暇活動の方が、それ自体の活動量が少なくても、他の生活時間や活動に影響してそう消費エネルギーが高められ」(大内尉義ほか「新老年学第3版」p. 665)ることがわかっています。

基本チェックリスト

基本チェックリストとは、各自治体が行う介護予防事業について、近い将来、要支援・要介護状態となるおそれがある高齢者(65歳以上)の方で、
介護認定を受けていない方(特定高齢者・二次要望対象者)を選定するために、厚生労働省が作成したものです。それぞれの自治体は、このチェックリストを対象である高齢者に送付し、介護予防が必要となる人には、各自治体独自のプログラムを実施しています。

バスや電車で1人で外出していますか
日用品の買い物をしていますか
預貯金の出し入れをしていますか
友人の家を訪ねていますか
家族や友人の相談にのっていますか
階段を手すりや壁をつたわらずに昇っていますか
椅子に座った状態から何もつかまらずに立ち上がってますか
15分間位続けて歩いていますか
この1年間に転んだことがありますか
転倒に対する不安は大きいですか
6ヶ月間で2~3kg以上の体重減少はありましたか
BMIは18.5未満か? (BMI=体重(kg)÷身長(m)÷身長(m))
半年前に比べて堅いものが食べにくくなりましたか
お茶や汁物等でむせることがありますか
口の渇きが気になりますか
週に1回以上は外出していますか
昨年と比べて外出の回数が減っていますか
周りの人から「いつも同じ事を聞く」などの物忘れがあると言われますか
自分で電話番号を調べて、電話をかけることをしていますか
今日が何月何日かわからない時がありますか
(ここ2週間)毎日の生活に充実感がない
(ここ2週間)これまで楽しんでやれていたことが楽しめなくなった
(ここ2週間)以前は楽にできていたことが今ではおっくうに感じられる
(ここ2週間)自分が役に立つ人間だと思えない
(ここ2週間)わけもなく疲れたような感じがする

基本チェックリストのポイントは、「できますか」と聞かずに、「していますか」と尋ねることです。可能であってもしていなければ、要介護のリスクが高いと考えられています。

医学部小論文における出題

医学部やその他医療系の小論文として、頻出テーマである。医学部医学科では、高齢化に対する対策、高齢者に対するコミュニケーションから医療経済などがテーマとして出題される。看護・リハ専門職では、図表の読み取りも頻出である。



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