学術誌「ナショナルジオグラフィック」の3千万部超えに、アメリカの知識層の厚さを見る

3千万人を超える読者を持つ学術誌「ナショナルジオグラフィック」

アメリカの雑誌メディアを発行部数のみならずWebへの訪問数やvideoの視聴数などで多角的に計測したmedia360°のデータを解析し、前回アメリカの雑誌メディアを取り巻く状況を解説しました。
解析していて突出してすごかったのが学術誌「ナショナルジオグラフィック」の誌面および電子版における発行部数です。なんと31680(単位:千 2018年6月次点)もあります。なんと3千万を超える人たちが誌面および電子版を見ているということになります。

普通のメディアは、当たり前ですが雑誌の発行部数よりもWEBサイトへのアクセスの方が多くなります。10万部の雑誌を有料で売るよりは100万人の無料ユーザーをWebで獲得するほうが難易度が低いからです。

事実、アメリカの多くの雑誌メディアはすでに電子版を合わせた誌面よりも、Webサイトへの流入の方が多くなっています。
これは2018年6月と前年同月を比べた「ナショナルジオグラフィック」のビジター数グラフ(出典:360°media data)になりますが、一番左の誌面と電子版のビジター数が真ん中のMobileWebに比べて圧倒的に高いことが分かります。

購読している層は、経営層や専門家など年収の高い人々

これだでけもすごいのですが、この発行部数を見た時に子供ウケしているのかもしれないと思いました。しかし、このグラフはあくまで「ナショナルジオグラフィック」のみであって、子供向けの誌面とトラベル版という別の2つの雑誌も出版しています。
その3誌をならべた数値がこちらになります。3つ合わせるとなんと4千万を超えるのです。

「ナショナルジオグラフィック」を学術誌と書きましたが、wikipediaによるとこのようにあります。

月刊誌として年間12冊発行されており、それに加えて付録の地図を発行している。また、時に特別号も発行している。地理学、人類学、自然・環境学、ポピュラーサイエンス、歴史、文化、最新事象、写真などの記事を掲載している。
wikipedia


自然・環境学にサイエンス、歴史、「ナショナルジオグラフィック」は文字通り学術誌なのです。以下のリンクから日本語訳された日本語版のバックナンバーを見ることが出来ますが2018年8月号のテーマは睡眠、6月号は海に流れ出るプラスチック、5月号はピカソと、人文学、環境学、そしてアートと学術教養の雑誌であることが分かります。

https://natgeo.nikkeibp.co.jp/nng/backnumber/

媒体資料によると、購読している中心の読者層は年収の高い管理職以上のビジネスパーソンであり、Generation Zと言われる1990年半ば以降に生まれた若い世代も取り込めているということです。

National Geographic ranks #1 in reach of:
Men
Generation Z
Postgraduate degree
Influentials
Emerging Millennials (Millennials with
HHIs of $100,000+)
Self-employed Professional/Managerial
媒体資料より


さらに細かくデモグラフィックを見ていきます。

出典:ナショナルジオグラフィック媒体資料

男女比は男性が56.5%、女性が43.5%となっていて、男性が多いものの女性の購読者もかなりの割合が存在することが分かります。次が世代です。年代別で見ると65歳以上が21.3%とボリュームゾーンになっているものの、その他の年代は均一に分布しており、世代別に見ると1990年代中頃から2000年代中頃までに生まれたGeneration Z世代が8.2%、 1980 年代から 2000 年初めまでに生まれたミレニアルズ世代が33.2%とボリュームゾーンとなっており、1960年代初頭または半ばから1970年代に生まれたジェネレーションX世代が18.3%となっており、1940年代半ばから1960年代半ばに生まれたboomers世代が29.5%となっています。
現在消費の中心であり、働き盛りでもあるミレニアルズ世代の読者が中心であることが分かります。

また、年収についても$100,000-以上35%となっており年収も高い構成になっています。職業もトップマネージメントが3.1%、管理職/専門職が24.6%教授職が15.2%など経営層および管理職の比率が高いことが分かります。

つまり、読者の中心層は所得の高いビジネスパーソンもしくは教授などの専門職ということになります。

ここまで読者のデモグラフィックを延々説明してきて言いたいことは、所得の高いビジネスパーソンが学術誌である「ナショナルジオグラフィック」をこんなに読んでいるってすごくないですか!??3千万人以上も誌面か電子版でお金を払って見ている人がいるってすごくないですか!???

ちなみに「ナショナル ジオグラフィック」の特徴のひとつは、まるでアート作品のような高品質な写真です。


ナショナル ジオグラフィックの特徴は学術誌でありながら絵や写真を多用した雑誌だという点で、1905年1月号に掲載されたロシア帝国の2人の探検家 Gombojab Tsybikov と Ovshe Norzunov によるチベット探検時の写真をページ全面の大きさで掲載したことにその特徴がよく現れている。
(中略)
最高品質の記録写真を掲載してきたことでも知られている。写真の掲載基準はきわめて厳格で、カメラマンの撮影してきた大量の写真のうち、誌面に載るのは1万枚から1-2枚という。
wikipediaより

つまり、Web/モバイル版の数値よりもはるかに誌面/電子版の部数が高い理由のひとつとして、学術誌のみならずアート作品として写真を楽しめるから、という側面もあると思います。
さらに、この読者層のデモグラフィックから考えると「ナショナル ジオグラフィック」はアメリカのビジネスパーソンや専門家などにおける一種シンボル的な雑誌となっており「この雑誌を読んでいることへのステータスやラベリング」という役割もあるのでしょう。(日本においてはビジネス本の一部はこういった役割になっているように思います。)

とはいえ、専門家ならまだしも、経営層や管理職といったビジネスパーソンによって一般教養しか得られない(ビジネスにとっては実践的な知識ではない)雑誌を購読しているということのは日本では見られない現象だと思います。これは、アメリカの知識層の底の厚さを物語るべき事象ではないでしょうか。こういった教養やアートといった知恵は、実践的ではありませんが後々漢方薬のように人生のターニングポイントに影響を与える本です。

果たして日本のビジネスパーソンの何割が自然・環境学にサイエンス、歴史といった学術誌を読んでいるでしょうか。こういった一般教養やアートへの興味や理解の差が、後に大きく差をつけることになるのかもしれません。

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とりさん

株式会社トリノ 代表取締役 メディア専門家。映画情報メディアの編集を経て、事業会社にて新規事業の企画立案に従事。現在はアプリサービスを手掛けながら、複数のメディアの立ち上げ、コンサルを行う。 https://twitter.com/toriaezutorisan

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