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【特集・前職候補者の「今期の業績」を見てみよう!】学究肌な政策通 安全保障問題のエキスパート―宮城6区・小野寺五典候補

投票には、選挙運動での信条や政見・政策や人物の経歴を踏まえた「未来の選択」の要素とともに「過去の業績評価」という側面もあります。
今期、衆議院48期に宮城県の前職衆議院議員はどんな活動をしていたか。役職などの目に見えるだけの経歴だけではなく、それがどんな内容を持つのか、国会での活動や政党での活動の実際や実態も考慮しながら、政策だけにとどまらない、その政治家の個性も含めた政治家全体としての活動を、公的な情報に基づきながら振り返ろうとするものです。

今期の各候補者の業績や活動を振り返るこの企画【リンク先は記事一覧】。トップ・バッターは、宮城県の前職国会議員で唯一、二度の大臣経験者でもある小野寺五典氏に登場してもらいましょう。

おことわり

・文責・著作権は、筆者(池亨)に属します。また評者の所属先にも一切関係しません。
・資料協力:海辺の図書館 庄子隆弘さん
・本批評は、特定の候補者への支持投票を呼びかけるものではありません。

宮城県第6区 情報

宮城6区には他に、日本共産党公認 内藤たかじ候補が立候補しています。内藤候補について知りたい方は、ぜひ動画インタビューを覧ください。

小野寺五典候補は、メディアージが申し入れを行った独自インタビューについて取材NGとの回答をいただいております。ボートマッチのアンケートには回答いただきました。

自民党「安全保障政策」の顔

 稲田朋美防衛大臣の時期、「日報隠蔽問題」で揺れた防衛省を立て直すため、第3次安倍内閣で二度目の防衛大臣を務めた小野寺氏。いまではすっかり自由民主党の安全保障政策を担う「顔」と化した感があります。BSのニュースでは論客としてコメンテーターを務め、また各新聞へのコメント・談話や雑誌に論考を寄せており、東北福祉大学助教授出身であることもあって「学究肌の論客」のイメージが定着しつつあります。
 しばしば「気仙沼モンロー主義」ともよばれる出身の気仙沼市を始めとした盤石な支持のもと、「名望家」的政治家として目先の選挙や地元対策ばかりに専念することなく、得意の安全保障分野や外交といった政策を追求する「政策」通の顔は、今期でも遺憾なく発揮されたと言えるのではないでしょうか。そのなかでとくに注目されたのは、全国に二箇所(山口県および東北では秋田県の新屋演習場)の、イージス・アショアの配備をめぐる「迷走」においてでした。

イージス・アショア問題の「迷走」をめぐって

 他国からのミサイルを迎撃するイージス・アショアは、小野寺氏の一回目の防衛大臣就任時に導入が閣議決定されたもので、配備を前提にして百二十数億円の調査費がすでに使われていました。それが後任の河野太郎防衛大臣によって、2020年6月15日突然の配備停止の決定に至ります。候補地になっていた山口・秋田の地元住民に迎撃ミサイル発射後、確実にブースターを演習地内に落とすと防衛省は説明していたのですが、「確実に演習地内に落下させることができない」恐れがあるとの判断からでした。根回しなしの突然の停止決定に対して、小野寺氏は自民党の国防部会と安全保障調査会の合同会で「しっかり説明がなければ承服できない」と不快感を示したと報道されています(東京新聞 2020年6月16日Web記事)。
 なお、イージス・アショア配備をめぐっては、アメリカから調達する際の総費用が不透明であることや技術的な不透明さも指摘されていました。

 そうしたなかで、この停止をめぐって論点提示や問題の指摘を各所で積極的にしていたことは、この政策の妥当性やこれに対する賛否を脇に置くとしても、着目される点でしょう。防衛相の「(ブースターは)落下しないから大丈夫」との説明に対し、それが到底いいきれないこと、政治が説明の正面に立たなかったことを問題視し、反省しています。
 しかし、この住民への説明の前提の食い違いがどのようなところから発生したのかについての決定プロセス究明は十分とはいえません、このできごとは日報問題と同じく防衛相内での政策決定過程のプロセスの不透明さを印象づけましたし、結果とはいえ小野寺氏の指揮監督責任は免れないでしょう。
同時に小野寺氏は代替案として「敵基地反撃能力」論を提起しましたが、憲法や国際法に反する先制攻撃のおそれを指摘する議員もおり、さらに難しい課題を背負うことになったといえます。

政策通の顔の一方で

 こうして、安全保障政策を中心とした「ハイ・ポリティクス」な分野の活動が非常に目立つ小野寺氏ですが、それ以外の活動がやや見えにくいことも否めません。もちろん政党の組織運動本部長として縁のない地方選挙の候補者のマイクを握る、ということもされていますし、農林水産業が盛んな6区の利害を反映して、農林水産分野での大臣などへの要請もされているのですが、全体としての日本の方向性や他分野の政策についてどうお考えなのかが見えてこないこともあります。Twitterのアカウントもお持ちですが、発信の空白期もあり、もう少し有権者向けに小野寺氏の信念や構想や関心のありかをソフトに概括的なもので良いので、体系的に提示することがあってもいいのではないかとも思いました。この辺はご本人よりも事務所の体制づくりの問題かもしれません。

 最後に小野寺さんの実績の背景となる政治姿勢を象徴すると思われる、今期におけるふたつの印象的なツイートをご紹介しようと思います。

こちらはテレビ討論後の所感を述べたものですが、対決する野党議員との討論で率直にこう言える、ある種のスポーツマンシップを感じさせます。

 自身も入閣していた安倍政権期に起きた財務省決裁文書改ざん問題について「法の理念も制度も覆す」ものであり、公文書の正しい保存は「健全な民主政治を進めるにはまず国民が真実を知ることだ」という福田元首相の発言に対するものです。

 このような実績と姿勢をもとに、どのように有権者に臨むのか、再選の暁には今後も注目してゆきましょう。

データ

小野寺五典 候補【宮城県第6区】自由民主党公認(当選回数7回)
個人WebサイトTwitter

衆議院 第48期 2017(平成29)年10月22日〜2021年10月19日
国会会期 第195回国会〜第204回国会
質問・出席回数は、政治学者菅原琢氏作成のWebサイトによる。

国会役職 外務委員会 筆頭理事
政府役職 防衛大臣(2017年8月〜2019年10月)
委員や理事として所属した委員会 
予算委員会(53回出席、 発言回数2回)
安全保障委員会(27回出席 発言回数2回)
外務委員会(31回出席、筆頭理事として19回出席 発言回数1回)
情報監視審査会(2回出席)

注意:政権与野党どちらに所属しているかの違い、政府や国会の役職によって、議員としての出席や発言回数は異なりますので、あくまでこれらの数値は参考に留めてください。与党議員は質問主意書を出さないのが慣行となっています。野党のほうが発言回数・質問主意書数が多くなります。

政党役職 安全保障調査会 会長 (2018年10月〜令和2年9月)
     農業基本政策検討委員会 委員長
     組織運動本部長(2020年9月15日〜2021年10月1日)
     総務会 副会長

2021年衆院選(宮城県選挙区)特集について

2021年衆院選(宮城県選挙区)に関する情報発信のまとめ
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*池亨(いけ・とおる) 1977年、岩手県一関市生まれ。埼玉県で育つ。宇都宮大学教育学部社会専修(法学・政治学分野)、東北大学大学院情報科学研究科博士前期課程(政治情報学)を経て、東北大学大学院法学研究科博士後期課程満期退学(政治学史・現代英国政治思想専攻)。修士(情報科学)。現在、㈱日本微生物研究所勤務。これまでに、宮城県市町村研修所講師(非常勤)、東北工業大学特別講師ほか。著書に『新幹線で知る日本』(天夢人刊)。

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