うつくしきヤングケアラー(若き介護者)のお話。

タイミングが合わず、なかなか参加できずにいた認知症カフェ※に久々に顔を出した。

すると、見たことのある顔。すぐに私が関わっている認知症カフェのほうの第1回に参加してくださっていた方だと思い出す。認知症のおかあさまのメインの介護者である彼女とそうでないお姉さんとの間には温度差があって、それがおかあさまへの介護にも少なからず影響を与えているかな?という印象があって、心の片隅にひっかかっていた。人目を引くレベルの美人姉妹だったし。

認知症カフェというのは、連絡先を聞くわけでもなく、気にかかっても相手に来てもらわなければこちらからはアウトリーチできないもどかしさがある。最初からどんどん吐き出してくださる方はともかくも、なかなか吐き出せないという方だっている。何度か来ていただくうちに、ようやく問題点にたどりついて、行政につないだり、専門職につないだりすることが可能になることも少なくない。

たまたまお隣に座ったこともあって、「その後、お母さまはいかがですか?」と尋ねると、人と話をする場に出てきたのも久しぶりという彼女の口からは、次々と、父親の介護に続き、母親の介護とこの10年、ほぼひとりで担ってきた両親の介護のお話がとめどなくあふれる。30代後半から40代前半を仕事もほぼできず、ひたすら介護に向き合ってきた彼女がたんたんと、でもときに目の端に涙を浮かべながら語る介護のお話は、大変なことも語られているのに、不思議と悲壮感はなくて、両親が仲の良い素敵な夫婦だったこと、お母さまが認知症が進んでも変わらず穏やかでやさしい母であることに光が当たる。

「久々に、こんなに魂のうつくしいひとにあった」という感慨深さのようなものを残して、彼女はデイサービスから帰ってくる母を迎えるために足早に帰って行った。

この人を救いたい、とか、ささえてあげなくっちゃとか、そんなへんな正義感からではなくて、「この人とともだちになりたい」という気持ちがぽかりと浮かぶ。そもそも誰かと純粋にともだちになってみたい、この人ともっとおしゃべりしたいなんて気持ちに駆られたのはいつぶりだ。

彼女があまり外へ出られないのなら、「おうちにあそびにいっていいですか?」って聞けばよかったなぁ。でもいきなりそんなこと言ったら警戒されちゃうか。どこまでどんなふうに相手に踏み込むのかはかりかねて、はかりかねているうちに、手を伸ばし損ねて、あとであのときもう少し踏み込めばよかったって思うんだ、たいてい。今回は、それはいやだな。


※ヤングケアラー
狭義の意味では子どものケアラー。18歳~30代くらいまでのケアラーは若者ケアラーといい、子どもケアラーと若者ケアラーを総称してヤングケアラーと呼ぶことも。上記の彼女はこの定義でいくとヤングケアラーには当てはまらないものの、「介護を主に担っているのは上の世代の方が多くて、私の世代で介護をしている人に滅多に会えない。介護を担っていない同世代とは共通の話題がなくて、どうしても疎遠になってしまう。すると、ますます人と会うのが億劫になってしまう」とは彼女のことば。10代20代のヤングケアラーはサポート体制づくりが進みつつあるけれども、30代後半~40代くらいの比較的若い介護者のところは手薄になりがち?!

※認知症カフェ
オレンジカフェとも。オレンジカフェの名前の由来は、高齢化に伴う認知症の人の増加を見越して、2012年に策定された『オレンジプラン』(平成25年~29年までの『認知症施策推進5か年計画』)から。2015年には『新オレンジプラン』(『認知症施策推進総合戦略』)がスタート。行政主体・市民団体主体・介護施設や医療機関主体、家族向け・当事者向け、週一開催・月一開催と形態はさまざまなれど、認知症のご本人やご家族の日々生活が少しでも望むものとなるよう、おしゃべりしたり、相談したりできる場所として、オレンジプランでも推進。


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