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オンライン診療のこれから〜期待される地域医療での活用〜

こんにちは。メドレー政策渉外部です。

オンライン診療の良さはどのようなところにあると思いますか?
以前、メドレーが生活者を対象に行ったアンケートによると、オンライン診療は待ち時間の短縮や感染対策について利点があると感じている人が多いようです。また、最近では、自治体単位での医療体制の確保を目的に、どのようにオンライン診療を取り入れたらよいかという観点から、様々な指針で触れられるようになってきました。

今回は、具体的にどのような場面で、オンライン診療の活用がより一層期待されていくのか、国から出されている基本方針の内容に着目しながら整理したいと思います。


へき地医療とオンライン診療

各都道府県は、6年ごとに地域の実情に合わせた「医療計画」を作成することとなっており、2024年度〜2029年度は第8次医療計画となります。そのため、本年、厚生労働省は基本方針を公表しています(※1)。

疾病・事業及び在宅医療に係る医療体制構築に係る指針」の中では、5疾病・6事業・在宅医療という各分野に分けて、方針が記載されていますが、6事業の一つである「へき地の医療」において、オンライン診療に触れられています。

へき地における医療は、へき地医療拠点病院(注1)やへき地診療所(注2)などの連携により成り立っています。へき地拠点病院から医師を派遣したり、へき地診療所医師の不在時に代診を行ったり、無医地区を巡回して診療することなどで医療体制の充実が図られています。
代診医派遣や、巡回診療については、オンライン診療で代用できることが、医療計画としては初めて示されました。

医師がへき地に移動する距離や時間は、平時でも大きな負担となりますし、加えて、悪天候時や感染症流行時には医療機関にとって、より一層大きな負荷となります。
もちろん、へき地での診療の全てをオンライン診療に置き換えることを目指すのではなく、対面診療のための医療体制を確保することは大前提です。しかし、生産年齢人口の減少や医師の働き方改革が叫ばれる中、医療リソースの有効な活用と安全な医療を担保するためには、オンライン診療もうまく活用していくことが大事になってくるということだと考えられます。

一方で、へき地と定義される地域の住民は高齢者が多く、オンライン診療を自身のみで実施することは難しいと感じられる方もいます。このような場合、医師が病院や診療所からオンラインでアクセスし、患者側で看護師等がPCやタブレット、スマートフォンなどの操作を支援するD to P with Nという形式で実施されています。
「医療機関が遠隔医療を実施するにあたっては、資金や機器等の整備を含む自治体からの支援が重要」との記載もあり、行政によるバックアップ体制も注目されます。

さらに、2023年5月18日の厚生労働省の通知に、「へき地等においては、特例的に、医師が常駐しないオンライン診療のための診療所の開設を認めることとする」と明記されました(※2)。
一定の要件を満たせば、公民館や郵便局などを診療所とみなして、そこからD to P witih N形式などによって、オンライン診療を実施することが可能になります。これにより、へき地における医療アクセスの課題が改善し、適切な診療につながることが期待されます。

(注1)都道府県知事が指定して設置。全国に345病院(2022年4月時点)
(注2)無医地区等に設置される診療所。全国に1117か所(2022年4月時点)
(参照)厚生労働省HP へき地医療について

※1 厚生労働省HP 医療計画
※2  へき地等において特例的に医師が常駐しないオンライン診療のための診療所の開設について 注)2024年1月16日の通知をもって本通知は廃止されました。詳細はnote「規制改革推進会議とオンライン診療〜通所介護事業所や公民館等での利用が可能に〜」をご参照ください。

感染症流行時や小児医療での活用

第8次医療計画の基本指針では、新興感染症の発生・まん延時の対策としても、オンライン診療の活用に触れられています。感染が疑われる患者や、外出自粛が必要な自宅療養中の患者に対して、オンライン診療やオンライン服薬指導を行える体制を整えることは重要です。

中でも、小児医療においては、新興感染症の発生・まん延時に対面診療が困難となる場合に備え、平時からのオンライン診療の導入を検討するよう記載されています。
さらに、小児科診療は、少子化などをふまえ、近年、集約化・重点化が進められていますが、その結果、医療アクセスが難しくなる地域が生じており、懸念されています。どのような地域でも小児医療を確保できるよう、対面診療とオンライン診療を適切に組み合わせた体制作りも求められています。

オンライン診療が住民の選択肢に加わることで、感染症流行時にも慌てず診療につなげられたり、どの地域に住んでいても子どもの通院がしやすくなると、子育て世代の安心に繋がりそうです。

オンライン診療の活用を促進するための基本指針

2018年に厚生労働省が策定した「オンライン診療の適切な実施に関する指針」は、オンライン診療を実施する際に最低限遵守する事項、推奨される事項などを示したもので、数回の改定を経て、現在もオンライン診療を実施する際の軸となる指針となっています。

2023年6月に厚生労働省は新たにオンライン診療その他の遠隔医療の推進に向けた基本方針を示しました。
この基本方針は、国、都道府県、市町村を中心とする関係者の望ましい取組みの方向性を提示することで、オンライン診療やその他の遠隔医療が、適正かつ幅広く用いられるようにすることに主眼が置かれています。ここでは、患者と医師をつなぐオンライン診療に期待される役割としては、下図のような整理がされています。

また、へき地等の医療においては、第8次医療計画の策定の際にオンライン診療の活用を検討することを、ここでも推奨しています。
国の基本方針によりオンライン診療の方向性が示されたことで、都道府県や市町村がオンライン診療の普及を進める契機となる可能性が期待されます。

メドレーが関わる実証事業

今回、へき地医療とオンライン診療の活用について繰り返しお話ししてきましたが、メドレーは、これまでにへき地におけるオンライン診療の実証にも携わってきました。

例えば、山形県のへき地診療所においては、診療所に設置した受診用タブレットPCで、看護師介助のもと、病院側にいるかかりつけ医とつなぎオンライン診療を行っています。「患者がスマートフォンなどの端末をもっていない」、「自宅の通信環境が整っていない」、「患者自身のITリテラシーに不安がある」といった課題があっても、オンライン診療を活用した医療提供体制を構築しています。
この取り組みについては、こちらのニュースレターもぜひご参照ください。

また、福井県でもへき地を含む医療資源の乏しい地域におけるオンライン診療事業を行っています。こちらは、高齢者施設や自宅で訪問診療を受けている患者に対して行うD to P with N 形式や、診療所の医師と病院の専門医をつなぐD to P with D 形式など、様々なオンライン診療のパターンを実施することで、有効性や課題を検証するものです。

地域の医療体制を構築する中で、オンライン診療を急速に普及させることに抵抗がある場合、実証という形で試行錯誤しながら、地域にあった診療形態として少しずつ広げていくことも一つの方法かと思います。
2022年度から開始した両実証は、2023年度も継続中です。詳細や、その他の地域医療との取り組みについては、こちらのnote記事もぜひご参照ください。

まとめ

さまざまな指針や通知を紐解くと、各地域で策定される医療計画の中で、オンライン診療が必要とされていることに改めて気付かされます。
特にニーズが高まっているへき地医療では、メドレーとしても微力ながら実証に協力させていただきつつ、その答えを探し続けています。
オンライン診療の好事例が蓄積されることで、未来の医療へつなげていけるように、政策渉外部では、引き続き自治体および地域医療との連携に、積極的に取り組んでいきたいと思います。

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