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『この地獄をいきるのだ うつ病、生活保護。死ねなかった私が「再生」するまで。』読了

過酷な職場環境で働いて、心を病んで自殺未遂を経験した著者。生活保護受給に至るまでに、仕事を失い、精神障害、親との軋轢、貧困、希死念慮などの絶望や苦悩を味わっていく。職務復帰を経て、生活保護廃止決定するまでの経緯が、事細かく描写されている。

生活保護に関する本を読んだのは、私にとってこれが2冊目。初めは、和久井みちるさんの『生活保護とあたし』を読んだ。

上記の本を読もうと思ったきっかけは、小林エリコさんの記事が目に止まったからだった。と同時に、その時初めて小林さんのことも知った。身内に生活保護を受けている人がいること、自分自身が希死念慮に苛まれていたことも重なり、小林さんの本が読んでみたくなったので購入した。

普通に働いて、普通に生きたかった。

本の帯に書かれた文字に、ただただ同感した。壮絶な体験を、赤裸々に記してくれたことは、決して容易なことではないと思える。読み進めていくと、感情が絶え間なく動いてるのを感じる。読むのに時間がかかったが、自分の生きづらさを言葉にしてもらえたように感じて、とてもありがたかった。

私は、社会人になってからよくつまづくようになった。だから余計に、みんなが普通に働けて、普通に生きているように見えるときがある。だからものすごくうらやましくて、たまらなくなる。「隣の芝生は青い」というか、誰かが恵まれているように思えてならない時がどうしてもある。ただ自分のフィルターを通しているから、実際そう見えるだけなのだ。それぞれの辛さは可視化出来ないからわからないだけで、それぞれの地獄は誰にでもある。

有資格者であったとしても、こんなケースワーカーは嫌だ

福祉を専攻して、熱心に学んできて現場で奮闘してるワーカーだっていると思うけど、無知で鈍感で無理解なワーカーが、サポートすべき人を追い詰め、窮地にたたせていると思うとやるせなくなる。あと、男性が思う以上に、女性が男性を脅威に感じていることを、わかってもらいたいなあって描写があり、読んでいてすごく憤りを感じた。「妻子がいるから大丈夫」いやいや、そうじゃねーよ!って苛立った。

役所の人事が、何年周期で変わるのかあまり詳しくないけど、専門職の重要性をもっと周知していって欲しいし、変えていけないだろうかって色々考えさせられた。

衝撃だった 第3章「お菓子屋さん」とクリニックのビジネス

MRとクリニック、デイケアの闇を垣間見たような気がしてとても興味深かった。だけど、患者の立場になって読んでいくと、恐怖と怒りでグチャグチャになり非常に苦しくなった。癒着って、あちこちの現場で起こっているのかもと、つい想像してしまいおぞましく思えた。一体、人をなんだと思ってんだろう。しかも、心を病んだ人をフォローする側の人たちが…。

偏見や差別が消えてなくなればいい

生活保護法の条文はとても立派だ。
「すべて国民は、この法律の定める要件を満たす限り、この法律による保護を、無差別平等に受けることができる」
                第5章 普通に働き、普通に生きる より

不正受給や、保護費をパチンコ代に費やす人がいるなどと問題提起としてあげられている。確かに問題ではあるけど、それは少なからず、偏見や差別を助長していると思う。あと、生活保護のことや、疾患や障がいをちゃんとわかってもいない人が、自分の無知をさらけ出しつつ、世間体だの恥だの云々噂したり、言いふらしているのをあちこちで見かけたことがある。腹立たしさが一周して、呆れ果ててしまい、ものすごくうんざりさせられる。

以前、私は身内の人から、生活保護を受けるまでの経緯や、その体験で感じたことなどを話してくれたことがありました。生活歴の聴取を受けた際、思い出したくもない過去のことや離婚したこと、仕事のことなどなど、根掘り葉掘り聞かれて「こんなことまで話さなきゃいけないの?」と思ったと話していた。ひどいケースワーカーに当たらなかったのは幸いだったけど、ある種の屈辱感を味わったと言葉の端々から痛い程伝わってきた。

生活保護を受けることに、どうして引け目を感じないといけないのか。引け目を感じたり、自分は生き恥だと思って生きていくということは、辛く寂しく悲しいことだ。

言い方が脅しみたいになってしまうが・・・将来、いつ、自分が貧困に陥るかわからない。この国では、誰もが、最低限度の生活が保証され、健康で文化的な生活水準を維持することができるのだ。誰でも、「普通」に働けて、普通に休んだり、それぞれ居場所があって、人と関われる世界になればいいのに。

話が変わりますが・・・こちらも最近6話までは読み終えました。

家族劇場を読んでいると、やはり生きづらさの根底は家族にあるのだとわかる。

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