静かな雨の降る夜道を歩いている。傘は握りしめている。長靴も別の手に提げている。しかし傘はささず靴下で歩いている。道ゆく人が自分を振り返っているが、足もとだけを見つめているのでとくに気にならない。雨のせいで闇の紺色と街灯の金色があちこちに散らばっている。黒い靴下が濡れて光り、硬質なものに見えてくる。うつむいたまま歩き続ける。雨が冷たいのは不快だが暗い気持ちではない。むしろ前へ進む一歩ずつに期待がある。

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