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アニメ業界における労働環境の問題点について(榊正宗)

こんにちは、榊正宗です。アニメ業界における労働環境の問題点について考えを深めてみたいと思います。アニメ業界は、ブラック企業との批判がよくありますよね。確かに、アニメ業界は過酷な労働条件で知られています。しかし、この問題は単純な労働環境の問題ではなく、制作プロセス全体に根深いものがあります。

正社員ではなく業務委託が多い事に関してですが、これはアニメ業界特有の問題から来ています。業務委託は悪いことばかりではなく。短期的には手取り収入が良くなる可能性があります。しかし、それは単に、社会保険などの福利厚生が含まれていない事が理由だったりするので手放しでは喜べません。

つまり、社会保険が高すぎるため、正社員化すると業務委託より賃金が下がる可能性があるため、法的なグレーゾーンを利用して目先の手取りを増やすために業務委託にしているケースがある訳ですが、長期的な視点だとこれは深刻な問題です。

社会保険は会社と折半して支払う仕組みですが、アニメの制作費は最初に決められた予算の中で支払われるので、だいたい予算がギリギリのため、会社負担の金額を引いた額を支払う事になります。つまり社員に負担のしわ寄せが行く訳です。

社会保険の問題については、大手スタジオでは導入が進んでいるものの、まだ普及していないスタジオが多いという現状があります。

なお、国からの社会保険の取り立てはかなり厳しく、小規模なスタジオでは、社会保険の支払いが遅延して倒産するケースも見られるため、経済的な負担が重くのしかかっています。ちなみに私の会社も社会保険の支払い遅延の差し押さえで倒産しました😢

海外アウトソーシングの実態も見逃せません。多くの作業が低賃金の国で行われているため、日本国内での新人育成の予算が不足しているという問題があります。海外のアニメーターの低賃金労働も、この業界のグローバル化に伴う複雑な問題の一面です。

中国では月額5万~10万程度の収入にしかならない単価で動画が発注されています。また、安いだけでなく1日で何千枚もの動画をあげないといけない厳しい納期を強要しているのも大きな問題です。この実態は日本ではあまり知られていません。下手すると業界人も詳しく知らない状態で動画が発注されています。

中国の安さと速度を考えると、国内で社員を採用して新人に動画を描かせるというのは負担にしかならず、教育のために一部で行われているだけです。そのため、だんだん原画スタッフの教育が進まずに国内スタッフが先細りしているという問題もあります。

全ては、アニメスタジオにお金が無いからなんです。

アニメスタジオの資金不足は、業界全体の問題として捉える必要があります。資金が循環しないために、特定の企業だけでなく業界全体が苦しんでいるのです。

なお、ベテランの業務委託については、フリーランスとして複数の会社の案件を受けることが可能で、独立した働き方が可能であることが一つの光明と言えなくもありません。

しかし、これもまた、昨今、条件はかなり良くなっているとはいえ、世界最高峰のアニメ作画技術に対しての支払いとしては十分とは言えません。ここでも業界全体の問題からは逃れられない側面があります。

アニメ業界の持続可能性と労働者の権利保護のバランスをどう取るかという問題は、深く考えなければならない重要なテーマです。スタジオのリスクを低く保ちつつ、スタッフの疲弊を防ぐためには、小手先の手法ではなく、根本的な改革が必要です。

業界全体の健全な発展と個々のクリエイターの権利を守るために、さまざまな角度からのアプローチが求められています。

いや、マジでそろそろなんとかして欲しいですねぇ。

AIの導入については、研究はしていますが、既存の作画のアニメ業界に入れ込むのは、まだワークフロー的に無理かなぁと思ってます。


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