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読書道とは寝ることと見つけたり。寝落ちしない読書法あれこれ

 三度の飯より本が好きだ。だから一生かけても読みきれない量の本が存在していて、今なお増え続けているという現実にたまに震える。あぁ、読みきれない。時間がない。それなのにまた、寝落ちしてしまった。。。。

 読書の歴史は寝落ちの歴史と言っても過言ではない。横になって本でも読むか、と思って2、3頁進んだあたりで人はもう寝ている。読書はまどろみと共にあり気がつけばみんな夢の中。でも、それじゃますます読み終わらない。うつらうつらしながら読み、読みながら眠るというのもある種の贅沢ではあるが、もっと読みたいというという欲望とまた眠ってしまったという後悔を幾夜も重ね、寝落ちしない読書法を試行錯誤してきた。これは、読みたいと眠いの狭間でもがいてきた漢の記録である。

 読書と寝落ちの歴史は古い。全く個人的な記憶によると中国の官吏登用試験、科挙(598年〜)の受験勉強で眠くなると錐で太もも刺して眠気を覚ましたというお話があるから、実に1400年以上も前から、人は睡魔と戦いながら本を読んできたと言えよう。しかし、なんぼなんでも錐は嫌だな、痛いし。

 どんなに眠くとも、1ページでも良いから毎日読む、そんな覚悟とも言える習慣を元伊藤忠社長の丹羽さんが本に書いていたけれど、そもそも読書は習慣だ。毎日読む癖さえつければ、自然と読むようになる。でも寝落ちはこれとは別問題。習慣化された後も一生の付き合いになるのが寝落ちなのだ。現代人は忙しく皆疲れているので、寝落ちは常に君の側にいて囁くのだ、横になりながら本でも読もうって。横になって本を読む、これは今から寝落ちしますとほぼ同義と心得よ。

 だからといって椅子に座って読むのが良いかというと必ずしもそうとは言えない。ソファで読み始めた人は3分後には横になっているし、その2分後寝落ちしているものと相場が決まっている。床に座って読むのも、ほぼ同じ。ちゃんとした椅子なら、と思うかもしれないが、10分後にはそのまま前のめりに船を漕ぎ始めるのが眼に浮かぶ。オットマンのついた安楽椅子みたいなものはやや快適な寝落ちを演出してくれるだけで、寝落ちしたくない読書家にとっては悪魔の誘惑だ。

 じゃあどうするのか、と。我々の読書は睡魔には抗えないのか。否!効果の程はまちまちだが、試行錯誤の結果、3つの読書法の有効性が証明されている。(当社比)

その1。バランスボール読み!

 読んで字の如く、バランスボールに座りながら読書する。するとどうだろう、普通の椅子に座るよりは体全体に緊張感が生じて寝落ちしづらくなる。しかしながら、慣れてくると次第に、無性に、横になりたくなってくる。なんならバランスボールに背中を預け、いやちょっと背中伸ばしたいだけ、と自分に言い訳しながら段階的に横になっていってしまうことからは逃れられない。しかもたまに本当に転がり落ちそうになるのでお気をつけあれ。

その2。二宮金次郎読み!

 寸暇を惜しみ、薪を背負いながら本を読む姿は読書家の鑑。その姿を単純に再現し部屋の中でウロウロ歩きながら読むのが通称、二宮読みだ。動いている限り寝落ちはしないという点ではバランスボール読みよりも有効だが、如何せん庶民の部屋は狭い。数歩で方向転換を余儀なくされる姿はさながらルンバの如し。何も考えずにまっすぐ歩きながら読むのならまだしも、数歩〜数十歩で方向転換を繰り返し、障害物を回避することになるので気がつくと歩き回るほうに神経使っていて、読んでいる内容が頭に入ってこないという本末転倒の事態に陥りがち。なるべく直線を確保し単純な往復を繰り返すのがおすすめだが、10往復もする頃にはちょっとバカバカしくなってしまうのがこの方法の弱点。いや別に、歩かなくてももう眠くないし、と立ち止まり座った瞬間、数分後横になり出して寝落ちに誘われる。

その3。スクワット読み!

 様々なスタイルを試行錯誤した結果、もっとも寝落ち対策に効果的なのがこのスクワット読みである。これも読んで字の如しではあるが、本を正面に構え、ゆっくりとスクワットをする。膝が直角になるように。上体が前に屈まないよう、本は手を伸ばし正面に構えるのが正しいスタイル。重い本だと、正面に構え続けるだけで腕がプルプルしたりするが、なんか鍛えられている気がしてくるし、太ももと腹筋が刺激され読みながら筋トレ&ダイエット効果が期待できる一石二鳥な読書法がこれ。真面目にやればやるほど、覚醒してくるので寝落ちに負けない最強の読書法なのだけど、太ももの限界が読書の限界とならざるを得ない。足が限界を迎えると座らざるを得ないのだが、座りとは横になる行為へつながる序章である。その後の結果は推して知るべし。

 結局我々は睡眠を避けて通ることはできないのだから、寝落ちしない読書などというものは存在しないある種の幻想、読書家の夢物語に過ぎないのかもしれない。それでもなお飽くなき抵抗を重ね、頁を繰ることでしか読書家の無聊は慰められない。

 ちなみに、ご紹介した読書法は用法用量を守って正しくお使いください。あまりやり過ぎると、慢性的な睡眠不足で飲み会の最中に寝落ちするようになります。筆者は最近寝落ちを繰り返し、酒に弱くなったともっぱらの評判ですが、飲みながらの寝落ちが良い仮眠になるようで帰宅後、飲み直しながらの読書が捗ったりしています。たまたま「読書」というキーワードで検索したら出てきた見出し画像がまるで自分の日々を体現したような画像だったのでついこんな愚にもつかないことを書いてしまった!

 それでも、今夜も読むのだ、寝落ちするまで。

自分の好きなことを表明すると、気の合う仲間が集まってくるらしい。とりあえず、読んでくれた人に感謝、スキ押してくれた人に大感謝、あなたのスキが次を書くモチベーションです。サポートはいわゆる投げ銭。noteの会員じゃなくてもできるらしい。そんな奇特な人には超大感謝&幸せを祈ります。