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教材紹介【国語】「ミチムラ式漢字カード」

以前書いた「見えない子はどうやって漢字を学んでいるのか」という記事にもあった、ミチムラ式漢字カードについて紹介します。


漢字の覚え方はひとつじゃない

漢字苦手な子ってたくさんいます。僕自身も漢字が苦手で苦労しました。

漢字といえばドリルや練習帳にひたすら書くイメージがありますが、あやふやなまま書いて練習すると間違った字を覚えてしまうこともありますし、なにより書くことや漢字の形を覚えることが苦手な子たちにとって苦行以外のなにものでもありません。

そもそも漢字は書いて覚えないといけないものなのでしょうか?

別の記事でも紹介しましたが、人はそれぞれ得意な認知の方法があります。目で見て覚えるのが得意な人もいれば、耳で聞く方が得意な人も、書いたりして身体の感覚で覚えるのが得意な人もいます。

漢字は書いて覚えるという固定観念から一度離れて、子どもたちの得意な覚え方を探してみませんか?

唱えて覚えるミチムラ式漢字学習法

漢字が苦手な子も取り組みやすい、部品の組み合わせ方を唱えて覚えるのが、ミチムラ式漢字の学習法です。

考案者の道村先生は盲学校の後、小学校へ転勤され、そこでの視覚障がい児への指導経験を生かした漢字学習に取り組みミチムラ式漢字学習法を作り上げてこられました。

そんな唱えて覚えるミチムラ式漢字学習法には、3つのポイントがあります。

(画像はHugKumより)

1.「部品」の組み合わせを唱えて覚える

漢字が苦手な子には、線を一本ずつ書き写す子がたくさんいます。それで間違った形を覚えてしまうことがあります。覚えている漢字の一部が違ったり、線が一本多かったり、少なかったり…。

そうではなく、漢字は部首をはじめとするいくつかの部品の組み合わせからできています。ミチムラ式では、その組み合わせを唱えることからはじめます。

部品を覚えていくと漢字を写すのも、形を正確に覚えていくのもとってもスムーズになっていきますし、覚える負担が少なくなるんです。

どんなに難しい漢字でも、パーツでバラバラにすると「基本漢字」「部品」「カタカナ」で構成されています。

たとえば「遊」という字なら、「ほうへん、ノ、いち(一)、こ(子)、しんにょう」というパーツに分けられます。

「一」「子」は基本漢字で、残りは部品とカタカナ。それをひたすら唱えます。部品を唱えるうちに「ほうへん」「しんにょう」といった部首も覚えることができます。

小学校で習う漢字は全部で1026字ですが、そのうちの90%は3年生までに習う基本漢字と部品の組み合わせで構成されています。ですから3年生までしっかりと覚えれば、あとはグッと楽になるのです。

HugKumより

(画像はHugKumより)

しかもこの唱え方は書き順に一致しています。個別の部品の形や書き順は覚えておく必要がありますが、唱えておけば形だけでなく書き順も覚えられるって一石二鳥ですよね。

2.部品を覚えることで漢字のなりたちを知る

漢字の部品とその意味を覚えてくることで、漢字のなりたちを知り、イメージして記憶することができるようになります。

例えばよく「親」という漢字は「木」の上で「立って」子どもの様子をそっと「見ている」という「親」の姿という風に言われますよね。そんなイメージです。

(画像は日本語教師は見た!より)

そんななりたちのイメージがあると覚えやすくらそして思い出しやすくなりますよね。

「部品」の意味がわかると、その漢字のなりたちがわかります。

たとえば「遊」の「しんにょう」には「人が道を歩く、進んでいく」という意味があります。また「ほうへん、ノ、いち(一)」はセットで「旗がなびく」という意味がありますから「遊」という字は、目印の旗の近くを子どもがあちこち歩き回る様子から「遊ぶ」ことを表しているのです。こんなふうに漢字のなりたちがわかれば、頭の中はすっきりと整理されるでしょう。

HugKumより
ミチムラ式漢字eブックに収められている「遊」の字の成り立ちのイメージイラスト

(画像はHugKumより)

3.「漢字のタイトル」を唱えて音読みと訓読みを覚える

ミチムラ式では、その漢字を使った同音異義語のない熟語と音読み、訓読みを示した「漢字のタイトル」が設定されています。

これは視覚障がいの方がパソコンやスマホなどを使って音声読み上げで漢字変換するときにも覚えるものなんですよね。

(画像は日立ケーイーシステムズより)

そしてこのタイトルの訓読みから熟語を覚えておくことで、その漢字の意味のイメージが広がります。

たとえば「遊」なら「遊園地のユウ、あそ_ぶ」が、漢字のタイトルになります。小学校3年生ぐらいだと、訓読みは思い浮かぶけれど、音読みがなかなか出てこないことがしばしば。なぜなら学校では訓読みを先に習うため、音読みは習得しにくいからです。

また、音読みには同音や似た音が多く、音読みしかない漢字も多いので、音読みにセットした熟語を覚えることによって、その漢字が使われる場面や意味を知ることができるのです。

そして、4年生以降は音読み熟語が圧倒的に増えるので、音読みができないと、教科書を読むことすら難しくなります。ですから、漢字のタイトルもひたすら唱えて、音読みと訓読みをマスターしていきます。

HugKumより

どうです?ミチムラ式に興味が湧いてきましたか?

ミチムラ式漢字カードの紹介

そんな唱えて覚えるミチムラ式漢字学習法を学んでいくのに役立つのがミチムラ式漢字カードです。

おもて面
うら面

(画像はHugKumより)

カードのおもて面には、漢字一字と部品の組み合わせ方(書き方)、うら面の上段には「漢字のタイトル」下段には1,2年生は使われている言葉、3年生以上は同音異字が書かれています。

使うときは、「うら面→おもて面」という順番。たとえば「観」なら、うら面で「カンキャクのカン」と読み上げてから、表面の「ノ・ニ、ふるとり合体、みる」と唱えます。

目をつぶって何度も唱えて、その文字が頭に浮かぶようになったら、そこで初めて書きます。

HugKumより

(画像はHugKumより)

とにかく、まずは何度も唱えて、部品の場所を確認します。書くのは最後で、頭に浮かんでいるものを再現するのです。漢字を見ながら書き写すのはやめましょう。

ちなみに漢字カードの部品の組み合わせは、基本的に教科書の書き順どおりに構成しているので、唱えたとおりに書けば、正確な書き順も身につくようになっています。

HugKumより

先ほど説明した3つのポイントが全部押さえられていますよね。しかも部品の名前と書き方を表す部品カードもあります。

(画像はHugKumより)

基本漢字とこの部品カードの形や書き順をきっちり覚えてしまえば、小学校6年間の漢字学習法で覚えないといけない量がぐーっと減ります。

書くのが苦手な子も唱えながら楽しく覚えられます。僕も道村先生の研修会に何度か参加し、それまで漢字はもちろん書き順も苦手でしたが、「右」の書き順「いちくち」と「左」の書き順「いち」を唱えて覚えました。もう右と左の書き順は間違えません!

(画像はかんじクラウドより)

しかも、光村図書・東京書籍・教育出版の国語教科書大手3社に対応しているので、それぞれの教科書に登場する順番にカードが並んでいます。便利です。

(画像は漢字クラウドより)

さらに2024年度版からは漢字カードplusにはQRコードが付き、読み込むと詳しい解説を読むこともできるそうです。

(画像はInstagram@michimura_kanjicloudより)

ミチムラ式漢字カードの特徴や、説明と使い方についてはこちらで詳しく紹介されています。

購入はこちらのかんじクラウドのオンラインショップから。

漢字eブックもあるよ

コロナワクチンを機に「ミチムラ式漢字eブック」という学年別の電子書籍も販売されています。

タッチペン一つで、文字の「読み方」や「書き方」の音声を聞けたり、その文字の組み合わせの解説やなりたちを読めたり、イメージ画像を見ることができたり、五感をフルに使って学ぶことができ、読み方ごとの豊富な語例集もあります。電子書籍なので関連するページへ簡単に移動もできます。

なぜミチムラ式漢字eブックが、発達に凸凹のある子たちに向いているのでしょうか。それは、彼らが文字を書くのが苦手で、とりわけ漢字を書くことにエネルギーを消耗してきたからです。ですから彼らにただ漢字を書かせるという意味のわからない単純作業をやらせてはダメなのです。

だからといって彼らがどこに興味を持って、どこに食いつくかはわかりません。耳から聞くのが好きなのか、目で見るほうが好きなのか、それもわからない。

でもミチムラ式漢字eブックは、音声を聞く、解説を読む、画像を見る、といったチャネルがたくさんあるから、彼らの興味に合ったものを見つけやすい。結果的にその子に寄り添った教育を実現できるのです。

HugKumより

だから書いて覚える以外のいろんなチャンネルでさまざまな子たちにフィットできるんですね。

漢字eブックが気になった方はこちらから。Apple製品にも、Android版もあります。デモページも閲覧できます。

まとめ

唱えて覚えるミチムラ式漢字カード、そして漢字eブックを紹介させていただきました。いや、いろんな記事でミチムラ式のことを紹介していたのに、せっかくつくった教材紹介マガジンでもっと早くに紹介しないといけなかったと反省しています。

ただそのお陰で盲学校時代にはまだなかった漢字eブックや漢字カードplusについても紹介することができました。

僕自身も小学生の娘が書き順で混乱しているのを見て漢字カードのことを思い出し、一緒に唱えています。

書いて覚える以外の方法の一つとして、おすすめの教材です。漢字が苦手なと感じている子にぜひ試してもらえたら…なんて思っています。


ミチムラ式漢字学習法についてはこちらのかんじクラウドのホームページから

またX(旧Twitter)やFacebookInstagramでも情報を発信してされているのでそちらもぜひ覗いてみてください。


参考にしたサイト

1.かんじクラウド「ミチムラ式漢字学習法」

2.HugKum「発達障害の子にも有効な漢字学習法「ミチムラ式」とは?。書かずに漢字が覚えられる仕組みを開発者の道村静江先生に訊いた」



表紙の画像はミチムラ式漢字学習法かんじクラウドより引用したミチムラ式漢字カードの写真です。