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体験記事「ボーダレス・アートミュージアムNO-MA」

以前アールブリュットの記事でも紹介した、滋賀県にあるボーダレス・アートミュージアムNO-MAへ念願叶って行ってきました。

開催中の展覧会は奇しくも「アール・ブリュット-日本人と自然-BEYOND」

「アール・ブリュット-日本人と自然 BYEND-」のポスター

(画像はボーダレス・アートミュージアムNO-MAより)

ボーダレス・アートミュージアムNO-MAと旧増田邸、まちや倶楽部の3カ所で展示会が行われていました。それぞれの場所ごとに気になった作品を紹介していきます。

ボーダレス・アートミュージアムNO-MA

町屋の和の雰囲気の中で見学します。

ガムテープで封をされた段ボール箱がいくつも積み上げられ、塔のようにそびえ立っている。8段くらい。手前には封の開いた段ボール箱が1つあり、中にはシュレッダーされた紙がパンパンに詰まっている。
『箱』廣川 照章「アール・ブリュット-日本人と自然-BEYOND」展

箱いっぱいの紙飾りを毎日運んで持ち帰る教え子を思い出す。この方の部屋は箱で溢れかえっているみたい。

2階の和室に展示されている3枚のキャンパス作品。赤色や青色、水色、黄色、緑色といった色のあるカラフルな作品。花のようなうずまき模様や葉っぱの形が見える。
『花』曲梶 智恵美「アール・ブリュット-日本人と自然-BEYOND」展
作品の拡大画像。キャンパス地にピンク色な青色、赤色、黄色、黄緑色などで鱗のような模様が描かれ、その上に、赤色や青色、黄緑色や黄色といったカラフルな紐や毛糸が貼り付けられている。
作品の拡大画像。キャンパス地の色とその上に貼られた紐や毛糸が組み合わさって、花のような、渦のような、ペイズリーガラのような不思議な模様になっている。

キャンパスに貼り付けられた細かい紐やレースや毛糸が重なりあう立体感に惹かれます。

黒いポストカードサイズの紙に、白色で描かれている絵が100枚近く並んでいる。宇宙や月を旅している?様子や、ユーフォーがあったかと思えば、海で釣りをしているような場面も描かれている。ほとんどのカードにはキースヘリングが描いたような棒人間がいる。
『無題』葛西孝之「アール・ブリュット-日本人と自然-BEYOND」展

ポップな感じのポストカード。コレは欲しい…売ってなかったのが残念。釣りに行きたい気持ちからイメージが膨らんで、ついには宇宙で釣りをされてます。何が釣れるんやろ。

『コオラル2』浅野 春香「アール・ブリュット-日本人と自然-BEYOND」展
作品の拡大画像。遠目にはわからなかった、赤の上に黒と白や、青の上にピンクといった、指先よりも細かい水玉で画面が埋め尽くされている。

自分はこういう細かいものの重なりが好きみたいです。近づいて細かい模様に目を凝らす。草間彌生さんみたいなカラフルなドットがたくさん。

蔵の中は鶴川さんの個展スペースみたいになってます。

ペンにセロテープが巻き付けられたオブジェのようなものが20本近くテーブルの上に立っている。太さはバラバラだが、350ミリの缶ジュースくらいの太さのものもあり、全部自立している。上からスポットライトの光が当たり、影が放射状に広がって、なんだか荒廃した建物のようにも見える。セロテープを巻いているので丸く、中にはスカイツリーや通天閣みたいな形をしているのもある。
『無題』鶴川 弘二「アール・ブリュット-日本人と自然-BEYOND」展

独創的なオブジェのような、崩壊したビル群かカッパドキアようなのは、ペンの上部から先端までセロテープをグルグル巻きつけたもの。セロテープどのくらい使ったんやろう?ともったいない精神が顔を出しちゃいます笑。

『無題』鶴川 弘二「アール・ブリュット-日本人と自然-BEYOND」展
白い横長の紙の上半分が縦書きの文字で埋め尽くされている。「おしごといてるあいらに」「エジックペン赤エエネ」「ジョジアカフエオレエエネ」「セロテープエエネ」といった文章が繰り返される。下半分は赤い水玉と十字架のような線がある。

この展示会のキービジュアルにもなっている作品群。赤いドットと線や文字からなる独特の世界観。2枚目の作品が、谷川俊太郎さんの絵本『もこもこもこ』みたいで、「もこ」っていう擬音語が聞こえてくる。「ちからうどん」の文字を見つけてほっこりしました。

旧増田邸

元々は靴屋だったそうで、ボランティアのおじちゃんが解説してくれました。

『無題〈いきものシリーズ〉』高橋 舞「アール・ブリュット-日本人と自然-BEYOND」展

なんにでもビニールテープを巻いた作品。靴や鳥の剥製や木彫りの熊など。あとは瓶の中に布を詰め込んだ作品。高橋さんの日誌も読めます。

白い横長の紙に、黒や紫や青、水色の切り絵の犬が貼られている。犬は全部で20匹ほど。犬の隙間を「ますやまかずお」というひらがなが埋め尽くしている。
『SHIMIZUYA VIOLET』升山 和明「アール・ブリュット-日本人と自然-BEYOND」展

どの作品にも「ますやまかずお」のお名前がクレジットされています。ポップな感じの作品が気に入りました。

作品群の写真。A4サイズからポストカードサイズの作品が8枚掲示されている。遠目から見るとコンピュータグラフィックで描かれたような曲線と直線が交錯する白黒の作品。
『無題』ノナカミホ「アール・ブリュット-日本人と自然-BEYOND」展

間近で見るとボールペンの細かい線がよくわかり、あえて塗ったり塗らなかったりがあることに気付く。

毛のような草のような糸のようなものが風に吹かれてきる作品。真ん中にある卵型の丸い空白部分がなんだか長い髪が風に吹かれている女性のように見えてくる。

上の作品は眺めていると、顔はないはずなのに、なぜかボッティチェリの『ビーナスの誕生』が浮かんでくる不思議。

有名なボッティチェリの作品、ビーナスの誕生の画像

(画像はきくドラより)

台の上に置かれた青い紙一面が白い文字、ひらがなで埋め尽くされている。遠目から見ると大英博物館のロゼッタストーンのように、象形文字か楔形文字が刻まれているようにも見える。
『日々の出来事』森川 里緒奈「アール・ブリュット-日本人と自然-BEYOND」展
作品の拡大画像。文字通りひらがなで埋め尽くされている。「まにくろさんりおなさんこあつうらのみつとり…」のような文字の羅列。「つ」や「ん」の文字の隙間は半濁音のような円で埋められている。

森川さんは文字を書いた後にまるで隙間を埋めるかのように○を描くのだそう。

一見黒縁メタルフレームの眼鏡に見えるが、実はセロテープでできた眼鏡。30個くらい重なって置かれている。
『無題』高丸 誠「アール・ブリュット-日本人と自然-BEYOND」展

セロハンテープと黒マジックでつくられた眼鏡。眼鏡好きとしては見逃せません。15分ほどで完成し、数千本はあるそう。そして高丸さんはつくった眼鏡を掛けて過ごすそう。高丸さんのお顔を見たことないのになぜか想像してしまう笑。

まちや倶楽部

手すりで囲まれた広場の内側に藁が敷き詰められている。手すりに沿って進んで行くとお皿やトースターがあり、そこにイヤホン付きの食パンポーチを近づけるとオーディオドラマが流れる。ドラマは全部で4つ。お皿などの近くにはドラマの内容に対応したしらすやクレヨンなどの触れるものが設置されている。
『私の一日』ごまのはえ+『お母さん』柴田 貴子「アール・ブリュット-日本人と自然-BEYOND」展

パンを持って手すりにそって反時計回りに回る。ザクザク藁を踏む音が室内に響く。お皿やオーブンにパンをタッチするとオーディオドラマが流れる。私とお母さんとゴルフ猿(頭からプロゴルファー猿の映像が離れない笑)とパンをめぐるまるで不思議の国のアリスのような訳の分からない物語。触れる工夫もあらました。

3つの異なるお母さんの絵が奥に飾られている。手前には手すりに沿った位置に、それぞれのお母さんのシルエットに対応した木の板が設置されていて、触って形を確認できるようになっている。
(青色がないからお母さんになれない!)

なんだかストーリーが耳から離れず、最後まで聞き、ついでにまちや倶楽部内のTREE CAFEさんとのコラボ商品、しらすと大葉とマヨネーズのオープンサンドもテイクアウトしてしまいました。

しらすと大葉とマヨネーズのオープンサンドの写真。大変美味しゅうございました。

他の気になった作品も紹介。

高速道路の降り口のような作品。緑背景に白い文字。「出口は追越車線へ」「迷甲乙の恋Makotsunokoi」「出口EXIT 500m」という文字と出口を示す道路図と矢印があり、出口の先には割れたハートがある。
『迷い甲乙の恋』鈴村 恵太「アール・ブリュット-日本人と自然-BEYOND」展

出口に行くと失恋してしまうやん笑。鈴村さんは旧日本道路公団オリジナルの書体「公団文字」がパソコンのフォントになかったことから、独自に文字の制作を始められたそうです。

大人の上半身くらいある大きなキャンパスに油絵具が塗りたくられている。抽象的な雰囲気。
『無題』今村 花子「アール・ブリュット-日本人と自然-BEYOND」展

高さを調整してじっくり鑑賞できます。目の前で向き合い、しばらく眺めていると、上の方の黒い部分が蜘蛛の糸を掴む腕のように見えてきた。彼は無事抜け出せるのか?

200枚近くの飛行機の絵が巨大な白い布に貼り付けられ、吊るされている。作者の西澤さんは幼い頃に飛行場の近くに住んでいて、ずっと飛行機を眺めていたそう。リアルな描写の飛行機の絵は、誰も下から見上げた構図になっている。
『飛行機との対話』西澤 彰「アール・ブリュット-日本人と自然-BEYOND」展

飛行機への愛が伝わってくる。子どもたちの作品展で並ぶ電車の作品を思い返す。

まとめ

最初は初めてのアール・ブリュットということで若干身構えていましたが…なんだか働いている支援学校の作品展のような雰囲気で緊張もほぐれ、楽しんで鑑賞できました。

「これだ!」とビビッときてじっくり観た作品もありますし、そうでない作品もあります。でも有名な美術館の展覧会なんかに行っても僕はそんな鑑賞スタイルなんですよね。作品との距離が近いので本当にじっくり観られるのが良かったです。

3ヶ所とも近江八幡の街中に自然と馴染んでいる感じで、まちや倶楽部の中にある雑貨屋さんで買い物をしていたときも店員さんと「なかなか見応えある展示でしたよねー」とお話しました。

そしてnoteの画像に説明文を付けられるようになったので、VoiceOverなどのアクセシビリティ機能で読み上げられるようにと思い僕なりの解説をつけてみました。もちろん『目の見えない白鳥さんとアートを見に行く』を意識してます笑。

楽しい展示会でした。おすすめですよー。

また機会があれば訪問したいです。

ボーダレス・アートミュージアムNO-MAさんは、TwitterやYouTubeでも展示会などの情報を発信されています。ぜひそちらもご覧ください。



表紙の画像は記者が撮影した、ボーダレス・アートミュージアムNO-MAの写真です。