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書籍紹介『見えない地球の暮らし方−見えない・見えにくい人のリアルな日常レポート集−』

『見えない地球の暮らし方−見えない・見えにくい人のリアルな日常レポート集−(メルマガ色鉛筆グループ)』という本の紹介です。


メールマガジン「色鉛筆」

この本は公益社団法人京都府視覚障害者協会 情報宣伝部 メルマガ色鉛筆グループが月2回程度発行しているメールマガジン「色鉛筆」のセレクションになっています。

(画像は京都府視覚障害者協会より)

「色鉛筆」には仕事、恋愛、家事、育児、趣味、旅行、スポーツ、介護、IT、支援機器、便利グッズ・・・など多岐にわたるレポートで、視覚障がい当事者の方の赤裸々な声が掲載されています。

つまり、この『見えない地球の歩き方』はそんな見えない・見えにくい方々の声がたくさん集まった本なんです。

過去にも視覚障がいの方の本を紹介してきました…が、こんなにたくさんの視覚障がいの方の声が出て一度に読める本は他にはないと思います。そして分量は山盛りです笑。

本の目次より

目次は以下の通りです。

自分の見え方見えにくさを知ろう   ~イラスト編 ~
はじめに/小寺洋一

第 1章  人と情報につながることからはじまる一歩へ
歩行  勇気を出して踏み出せば
点字ブロックは私たちの道しるべ
白杖を棺桶に入れる覚悟はあるのか
制度情報  活用しようサービス支援機器
だれがこおりをとかすの?
見えないのではなく見てはいけない
私と京都ライトハウス
工夫  楽しく暮らしたい触れる聴く味わう匂う感じ方いろいろ
食べる私
現状と妄想
バリアがいっぱいのデート
点字で開くワンダーランドへの扉
メイクと私
見え方体験  フォント ❶ 明朝体
見えない・見えにくい五七五

第 2章  光を求めてさらに一歩
教育
 ハイテクアナログツールはいろいろ
ぼくらのキャンパスライフ
就労  私たち働いています
もともと見えにくかった、さらに見えにくくなった私、どうにかこうにか奮闘中
見えにくくなって仕事を辞めた時の思いと今
休職して気づいたこと
今になって見えたもの
見える人の中で働くということ
障害者いいやつばかりじゃない
結婚  一人より二人で
色鮮やかに描き出せ
見え方体験  フォント ❷ ゴシック体
見えない・見えにくい五七五

第 3章  自分らしさを求めて
余暇
 趣味スポーツを楽しむ
まわりを巻き込み、楽しんで
夢中囲碁在り
人生の伴走者(パートナー)とともに
こんなことやってみた。すると ~ヨガ編 ~
ブラインドテニスを楽しむ
見え方体験  フォント ❸ 教科書体
見えない・見えにくい五七五

第 4章  見えにくさってどんなこと、つながって、分かち合って
ロービジョン
 見えにくい世界で見えるもの
私にとっての笑い、あなたにとっての笑い
見えている今のうちに
写真、苦手にはなったけれど…
共感  安心して語る傾聴する仲間との出会いに支えられ
弱視あるあるを共有する「まあまあ見える、そのリアル」
弱視あるあるを共有する「見えにくいってあれこれ微妙」
弱視あるあるを共有する「見え方、見えにくさを説明するのって難しい」
見え方体験  読み速度  いろいろなフォント
ボタン

第 5章  絆、素顔のままで語らせて
自己受容
 心に鏡を置いてみた、すると
人生万事塞翁が犬
父の日
次に変わるのは
愛しき My bitter home
ゆっくりゆっくり私とおしゃべり  気付けば可能性はすぐそばに
最後の一皿
見え方体験  読み速度  いろいろなフォント
君の名は

第 6章  言葉のつばさ
創作
 文章で描く世界  そこに見えない壁はない
ともだち
いざ、立ち食い寿司屋へタイムスリップ
エール  セルフケア応援団へこたれつつ絵筆、へこたれてもゆるくイラスト体験を/まるこいなお
心の言葉たち/福場将太
当事者の方達の熱意と底力に乾杯/吉野由美子

おわりに  寄り添い歩き言葉を編む、それが力になる/石川佳子
表紙説明
推薦の辞

いろいろなタイトルが目を引くことでしょう。

これだけたくさんの視覚障がいの方のお話がオムニバス形式で載っている本は他にはないのでは?と思います。

いろいろなエピソードがあります

よくある視覚障がいを乗り越えて…という前向きなお話ばかりではありません。

中には視覚障がいをなかなか受け入れられない人の葛藤も描かれています。

でもそんなエピソードも含めて、いろいろな人のお話が集まることで、遠い世界に思えていた「視覚障がい」の世界がなんとなく身近に感じてくるのではないでしょうか。

見えない・見えにくいというのは非日常、当事者の声が集まって本になるというのも非日常です。そう思ったらつながったのが非日常の「祭」でした。ぜんぜんちがうのにつながりました。祭は晴れ晴れしく、この本もちょっとそういうところがあるからかも知れません。ですが、晴れだけではなく曇りや雨の面も入っています。それが当事者の声ならではのことだと思います。

「はじめに」より

本の中にはいろいろな視覚障がいの方がいます。


眼瞼痙攣という困難な状況に負けず、当事者団体を立ち上げる熱意のある方がいます。

視覚障がいを支えるボランティアへの感謝に気づかれた方がいます。

バリアいっぱいのデートで、路チューをしたい思いが溢れて出て止まらない方がいます笑。

諦めていた読書を音声で、点字でチャレンジする方がいます(僕も村上春樹大好きです)。

夫にメイクを強要する方もいます(夫婦円満の秘訣なのでしょう)。

いろんな失敗談とはげましが載っています(パン屋と思って隣のお店に入った失敗に「ホールインワンじゃなかったけど、バーディーやね」という返しは秀逸ですよね笑)

大学での学びも様々です。

働いている途中に眼の病気がわかり、職場の支援で仕事を継続する方も、休業や退職される方もいます。視覚障がいのある状態で働き始める方ももちろんいます。みなさんそれぞれの悩みや工夫があります。

趣味もスキー、囲碁、マラソン、ヨガ、ブラインドテニスと十人十色です。

視覚障がい者同士の待ち合わせで、場所を間違えていたり、意外に近くにいるのにお互いに気づいていなくて出会えないのはあるあるだと聞きます。

趣味の写真への未練の話があります。

まぁまぁ見える弱視ならではの大変さがあります。見えていないことを咄嗟に誤魔化してしまう気持ちもあります。見えないことでの悩みは本当に人それぞれなんです。なので見えにくさを伝えるのって難しいんですよね。

視覚障がい者の天敵、停車中のトラックがいます(ミラーや開いているドアに気づかずぶつかった方が何人いることでしょうか)。

目が見えなくなった当事者だけでなく、その家族にももちろん悩みや葛藤があります。

障がいを受容すること…言葉で言うほど簡単なものではないはずです。

かつてのお気に入りだった駅中の立ち食い寿司屋さんに行くべきかどうか悩んでいる人の話があります(なぜかこの立ち食い寿司の話は記憶に残またいます。次のエピソードと繋がっているからかも。気になった方は、「いざ、立ち食い寿司屋へタイムスリップ」を読んでみてください)。


どうです、僕が紹介したのはほんの一部だけですがいろんな方のいろんな想いがあふれている本なんです。

まとめ

できるだけリアルなエピソードを持って伝えるというのが色鉛筆の編集コンセプトなのだそうですが、その通りリアルなエピソードがたくさん溢れています。

そしてそんなエピソードが手紙を書いた方も受け取った方にも、痛みをともなうこともある共感が響くのではないかなと思います。同じ悩みに、似たような壁にぶつかっているのは自分だけでないと思えることは、苦しんでいる自分自身を支えてもらうようなことなのかもしれません。

編集で、セレクションで、章立てで、校正で数えきれないほど原稿を読み返してきた。それなのにここにあるレポートは、私の心に「はじめて」の繊細さで寄り添い続けている。それはなぜなのか、明確な答えはわからない。あえて、おそらく、あいまいな形で言うならば、そこに魂の疼(うず)きがあるからではないだろうか。色鉛筆ライターの一人一人が「私も独りぼっちでした、でも、大丈夫、誰かとどこかとつながれば、あなたは一人じゃない」というメッセージをもって、言葉を紡ぎ、世に放たれたからではないだろうか。

「おわりに」より

本のタイトルにある「見えない地球の暮らし方」はもちろん一人ひとり違うのでしょうが、でもこの本を読んでいるうちに、なんとなく見えない・見えにくい世界のことがわかってくるような気がする不思議。

気になった方はぜひ手に取ってみてください。

現在Kindle版はなんと0円で販売されていますよー。

第2集も販売されています。



表紙の画像はAmazon.co.jpより引用した本の表紙です。