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沖縄の離島 伊江島🏝️で30人乗りの船に絵付けをしてきた話

2023年4月末、こどもたちに海の中を見せるためのグラスボートの絵付けのために沖縄の離島、伊江島を訪ねてきました。

フリーランスのイラストレーターとして働くようになってから初めての出張。30人乗りの船ということで、1週間かけて私の制作史上最大サイズの作品を手がけてきたので、クライアントの許可のもと、制作方法や制作過程をご紹介します。

この記事はこんな人におすすめです
・ウォールアートをやってみたい
・地方での制作をしてみたい
・イラストレーターの仕事に興味がある
ぜひ最後まで読んでみてくださいね。

01|ヒアリング

今回のクライアントであり、船の船長である「伊江島のランボー」こと古堅幸一さんから完成イメージや詳しい要望を聞き、提案に活かします。幸一さんとは4年ほど前に一度お会いしていて、その際、初対面なのにお任せで塩工場の看板を任されたというご縁があります。以来年に数回連絡をとっており、今回のご依頼に繋がりました。

(06:30~幸一さんのシーンです。めちゃくちゃ面白いのでぜひ笑)

ランボーで脱線しましたが、今回の依頼内容の詳細は以下の通り。

要望

・こどもたちが喜ぶようなもの
・伊江島の良さを盛り込みたい

サイズ確認

港に行き、船のサイズ感や、どこにイラストを入れられるかを確認

船の特徴

・船底の大きなガラス面から、伊江島の海の中を見られる
・30人乗れるサイズでかなり大きい
・各階に客室・デッキ・船長室がある3階建ての構造
・船にはすぐ絵が描けるように下地塗装済み

子どもから大人までみんなが楽しめる船です

制作期間

私のスケジュールを確保できたのが、自宅のある神奈川から伊江島までの往復の移動含めて8日間。(他のお取引先様には、1ヶ月くらい前からメールで出張の予定をお知らせし、その間の進行や連絡が遅れる旨をご承知おきいただきました)幸一さんも協力してくださるとのことで、2人でこの期間内で完成まで持っていけるように想像しながら図案を考えます。

02|完成イメージ作成

初日はほとんど移動で終わってしまったため、2日目から作業開始となりました。まずは港で船を確認。伊江島の魅力を私自身が感じ、表現するため、ハイビスカス園やゆり祭り会場にも訪れ資料の撮影をさせていただきました。

顔よりも大きそうなハイビスカスも咲いていました
丁度ゆり祭が始まる直前で、朝のゆり畑を独り占めできました

制作方法

ヒアリングした内容をもとに、iPadを使い完成イメージを制作します。使用しているのはProcreateというアプリです。iPadで用意することで、イラストの位置やサイズの調整を幸一さんにも見ていただきながら進めることができます。

港で撮影しておいた船の写真にiPad内でイラストを重ねたもの

制作のポイント

①伊江島の魅力を盛り込む
伊江島に訪れる人が増えるように、魅力を知ってもらえるように、以下のモチーフを配置しました。
・グラスボートから見れる魚たち
・島ゆりとハイビスカス
・波しぶき
・太陽と城山
全体としては島に向かって元気よく飛魚が飛んでいくようなイラストになっています。船の左右でデザインを少し変え、間違い探や絵探しとしても楽しんでもらえるようにしました。

②簡単に修復できる
・船に描く絵…汚れ・掠れ・日焼けなど劣化する可能性が高い
・伊江島での使用…私が修復に行くのが難しい
そこで誰でも簡単に修復できるように、ペンキは混色をせず、缶から出したそのままで使うことに決めました。

③船名SHIMAを見やすい配色で
船には決められた範囲に船名を表示する必要があり、今回はそこへ船のロゴをコントラストの高い配色で明記しました。

03|道具調達

伊江島でもペンキなどを扱っているお店はありますが、色数や用途が限定されるため、品揃えの良い沖縄本島のお店に行くことになりました。
伊江島⇄本島(本部港)の行き来は、フェリーを利用して約30分ほどでできます。本部港からは、車で国頭方面へ向かいました。

買ったもの

店員さんに船の絵付けで使う旨を伝え、紹介されたペンキの中から船のベースのオレンジに対して見やすい色を考慮してペンキを購入しました。

・水性ペンキ(黒・空色・アイボリー)
・筆(平筆サイズ3パターンほどと丸筆)
・マスキングテープ
・ホワイトボードマーカー
・鉛筆

04|船に下書き

天候の都合で、実際の船への絵付けは4日目から始まりました。

プロジェクターを使用せずにイラストを書き写す方法

iPadに描いた絵を大きな船に描き写すにあたり、iPadと船の両方にガイドラインを引くところから作業は始まりました。
(プロジェクターを使用するともっと簡単に描き写せるのですが、伊江島や幸一さんの雰囲気を知っていたため、あまりハイテクにしたくなかったのと、前回の看板絵付け作業となんとなく同じようにしたかったため分割書写し法にしました)

特にロゴを入れる船の先頭は傾斜がかかり曲面になっているので、難易度が高く時間がかかりました。正解かは分かりませんが、私は以下の写真のような方法で進め、かなり綺麗に書き写すことができました

まずはiPad内に平面的に描画
ロゴとガイドラインを1レイヤーにまとめ、曲面に沿うように変形
船にガイドラインを再現

このガイドラインを頼りに、「Sは縦2/横2の交点から上に1/5程度上がったところからスタートか…」と考えながら書写しを進めます。

スケールがかなり大きいので、近目で見ると結構ざっくりしています

05|着彩

着彩は、幸一さんにも手伝っていただき、急ピッチで進めていきました。塗りむらが出たので、あちこち並行して塗りながら乾くのを待ち、各箇所3回づつくらいは塗り重ねました。港は風も日差しも強く、手元がぶれやすく、かなり忍耐を要する作業でしたが、ほぼ丸4日かけて塗りを終わらせました。

塗り1回目時点の様子
描きにくい場所は脚立に乗って…

大小さまざまな脚立を駆使し、それでも描きづらい場所は脚立から船に向かって板を渡して制作しました。高いところが割と好きだったので良かったです(笑)脚立は必ず船に結びつけ転倒を防ぐなど、幸一さんにとっては当たり前であろうことも、私としては勉強になりました。

船の周りには足場がずらり

06|完成

最後にイラストのアウトラインをきちっと整え、見栄えを調整して完成です。正直、天候がもう少し良い日が多ければ、もう少し完成度を上げられたとは思うのですが、、限られた条件の中での制作としては満足いくものができました。

幸一さんには「上等上等」というたくさんのお褒めの言葉と、心のこもった「ありがとう」、それから最高の笑顔をいただきました。最後までずっと隣で制作してくださった幸一さんに私の方こそ「ありがとう」を伝えたいです。

ぜひ晴れた空の元・透明な海の上で見てほしい!
幸一さん・奥さまの由美子さんと完成記念にパチリ⭐️
2人でこっそり書いたサインは一生の思い出です

イラストレーターとして活動を始めて2年。このような夢のあるビッグプロジェクトにお力添えできたこと、素晴らしいご縁ができたこと、本当に光栄に思います。

船は2023年6月から運行予定です。
幸一さん・由美子さん夫妻は、船の運行を含む、塩工場を体験施設として拡大する計画の資金をクラウドファンディングで募っています。返礼品は幸一さんが30時間かけて作る、美味しくてミネラルたっぷり、そして縁起の良いお塩。ご興味ある方はぜひチェックしてみてください。

そして沖縄へ行かれる際は、ぜひ伊江島にも足を運び実物をご覧になって来てくださいね!幸一さんにも会われて、ゴリゴリの方言や島の文化を体感されることをお勧めします。

ここまでお読みくださった方、長文にお付き合いくださりありがとうございました。

サポートを頂けたら、学校などで子どものために使えるイラストを制作したり、ノウハウをシェアしたりしてお返しします!