めぐるファッションラボの経緯と伝えたかったこと ー序章

2016年秋。当時私(INHEELS 岡田)が入居していた千駄ヶ谷のシェアオフィスCo-Labに鎌田安里紗さん、通称ありちゃんがいそいそとやってきました。INHEELS(当時)の布田とのわたしたちは早速予約したホワイボード付きの会議室に入って、「さて。」とミーティングをはじめました。

きっかけはその数週間前、ありちゃんが「繊維のこと知りたいです。授業してください!」と言いはじめたこと。ご存知の通りエシカルファッション関係のイベントではひっぱりだこの彼女、金髪にまつげエクステの「元ギャルモデル」というビジュアルと、慶応義塾大学大学院生、SFC非常勤講師で博士課程という優秀な頭脳から紡ぎだされるわかりやすい言葉を武器に、様々なトークショーに出てはその世界の「顔」として認知されています。彼女はしかし、エシカルファッションの理念は語れるけれど実際のデータや現実の問題点をあまり知らないことを気にしていました(そんなところも真面目で、ありちゃんらしい悩みだなあと思います。ちなみに今となっては沢山の現場に赴き、もう私よりも「実際のところ」、というのを知っていると思います)。インフルエンサーとして、そしておそらく研究者としてもそこをカバーしたいなぁと思っていたんでしょう。そこで身近にいたのが、エシカルファッションブランドINHEELSを運営し、理念もありつつきれいごとではどうにもならない実際のデータや現実の問題に溺れている私だったようです。そんな背景から、なんだかんだもう6ー7年もこのフィールドでやってきた私たちなりの知識を持ち寄って、エシカルファッションに関する勉強会を開催しようということになりました。

ホワイトボードに様々なアイディアを書きなぐるうち、世界各地で出会った生産者の話や起業家情熱ストーリー等「ゲストスピーカーの体験談にインスパイアされる」系の会は私達に求められていない。ここはゲストスピーカーを講座に呼ぶよりも、参加者同士で座って学んで考える、大学のゼミみたいな場が私たちに求められているのではとまとまってきました。敷居を下げて沢山の人に来てもらうというよりは、自分自身も発信者になりたいレベルのコアなチームを作っていくイメージ。エシカルマフィアなんて言葉も出ました。ググれば出てくるような基本的なフェアトレードやエシカルファッションの知識はすっとばして、もう1周か2周した人たち向けの考える場をつくろう。もともと岡田の知識のよりどころとなっていたKate FletcherとLynda Groseの”Fashion and Sustainability: Design for Change” がちょうど「循環するファッション 新しいデザインへの挑戦 Fashion and Sustainability」(江戸 克栄 (監修), 田中 里尚 (監修), 文化学園大学 服装学部USR推進室 (翻訳))と和訳されたから*、それを活用し、章立てを使いながら学生に戻ったつもりで勉強していこう。循環するファッション、ぐるぐるめぐるファッション、考えすぎて頭がぐるぐる、、研究会、ゼミ、ラボ・・・めぐるファッションラボ!と、名前も決まりました。
(英語いける方はぜひ「Fashion and Sustainability:Design for change」も読んでみてくださいね。和訳版は残念ながら廃盤みたい(さすがニッチ)、アマゾンでは中古品の値段が釣りあがっているようです・・・)

フェイスブックに投稿した募集要項もフレンドリーさはほぼなく、本気の人だけどうぞ、逆にそうじゃない人は間違えて来ない様に変な気を使って書きました。こんなマニアックなことみんな興味ないよね、4人くらい集まればいいよね。と思っていたらなんとすぐに20人超え。ありちゃん、布田と私のグループラインでは「え、もうこんなに?締め切りましょうかどうします?」と慌ただしくやり取りしたことを覚えています。

そうしてエシカルファッション勉強会「めぐるファッションラボ」は当時下北沢にあったINHEELSショップを会場に第一回が開催されました。最初は手探り状態ではありましたが、手応えを感じるのは「こうだと思っていたけれど他の考えもあることがわかった」と言ってもらえること。「エシカルファッションについて勉強したり、ファストファッションのドキュメンタリー映画 トゥルーコスト を見たりして積極的にファッションを楽しむことに罪悪感を持ってしまったけれど、本来ファッションは美しい芸術や楽しいエンターテイメント。エシカルファッションも新しいクリエイティブの源泉と捉えることができて気持ちが凄く楽になった」「ファストファッションは悪フェアトレードは善と、ある意味善悪2元論で考えていたけれどそうとも言い切れないことがわかった。沢山の人がそれぞれの立場で最善を尽くしている」、「化学繊維は環境に悪くて天然繊維はいいと思っていたが、そうとも限らないことがわかった」、「テクノロジーはナチュラルとはほど遠い概念だし人の仕事を奪うから良くないものと思っていたけれど、そうとも言えないことがわかった。テクノロジーに対する印象ががらりと変わった。」など。ファッションのプロから高校生まで様々な人が参加し、ディスカッションベースで進めていく中では他の受講生の意見に納得したり驚いたり、または自分が発した言葉に気付かされることも多い様です。

(写真 4期生@東京)

東京4期・京都1期を開催し、のべ100名程(ダイジェスト特別版を入れれば200名程)の受講生からの驚きや感動またはスルーといった様々なフィードバックから主催者側も学び、毎回内容を調整してきためぐるファッションラボ。エシカルファッションを取り巻く環境はこの先どんどん変わっていくだろうけれど、いま伝えたいこと、考えるヒントになること、悩んでいる人はそれが軽くなるかもしれないことを詰めこんだ文章をまとめました。

(写真 3期生@京都受講生の華さん IG@087km より。岡田(左)と鎌田(右))

このNoteでは、エシカルファッションを語る為の基本的だけれど見逃されがちな知識が見につくはずです。それは必ず皆さんが将来の方向性やプロジェクト案、新しいクリエイティブなアイディアを練るのに役立っていきます。また、エシカルファッションをはじめから「いいもの」として広めていくスタンスではなく、他の視点等も交えて多くの立場から語っていくため、結局どうすればいいの!となるかもしれません。正義なんて人それぞれ。混乱するかもしれません。でもそれはバランスがよく説得力のある意見を形成するために必要なプロセスだと考えます。「エシカルファッションは善」「ファストファッションは悪」「フェアトレードは善」など、コミュニティを悪い意味で宗教化させ近寄りがたくしてしまう善悪2元論を超えて、もっと肉厚な知識を溜め込みましょう。そしてたくさんの立場や意見がある中、最後に頼りになるのは「自分が大切にしたいこと」です。ファッションや外の世界を勉強していたら、いつの間にか自分の心と対話しているのが毎回の講座最終回。このNoteの中でも自分で考えるポイントは明記していくつもりです。

この内容がめぐるファッションラボ卒業生の復習のためだけではなく、興味があるけれどしっかりした知識を身につけたい人、将来関連する仕事をしたりブランドを立ち上げたいと思っている人、自信をもって自分の考えを語れるようになりたい人、まわりの人にうまく説明出来るようになりたい人、ファッションの仕事をしているけれどエシカルファッションにも興味がある人など、なるべく多くの人の助けになれば嬉しいです。

ちなみにめぐるでは基本的に1日6時間x2日間の受講で20000円、学生の皆様からは10000円頂いていました。その同じ内容を無料で配布するのも今までの参加者の方に不公平かと思い、少しですが課金させていただいています。その価値はあるかと思いますので、ご理解いただければ幸いです。また、正確性にはなるべく勤めていますが、万一明らかな認識やデータの間違えがあった場合はご連絡いただけると嬉しいです。

目次
1 材料をどう選ぶか?その1
2 材料をどう選ぶか?その2
3 材料をどう選ぶか?その3
4 製造工程でできること その1
5 製造工程でできること その2
6 モノの動かし方を考えよう
7 意外と大事な家でのケア
8 愛せる服、着ていますか?
9 美しい捨て方とは・・・
10 形を変える服
11 ファストファッションとどう向き合う?
12 テクノロジーで可能になったこと

内容本編はこちらから読むことができます。(全てまとめで1000円、個別記事12本は各100円です)

購読、コメントなどお待ちしております!

*本の情報はこちら
原著
Fashion and Sustainability: Design for Change Paperback – March 21, 2012
by Kate Fletcher (Author), Lynda Grose (Author), Paul Hawken (Foreword)

和訳版
循環するファッション 新しいデザインへの挑戦 FASHION & SUSTAINABILITY – 2014/1/18
KATE FLETCHER & LYNDA GROSE (ケイト・フレッチャー&リンダ・グロース) (著), 江戸 克栄 (監修), 田中 里尚 (監修), 文化学園大学 服装学部USR推進室 (翻訳)





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Yuka INHEELS

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