さとさん笑顔

一人ひとりの探究心が創り出す豊かな世界を目指して学校創りをしている藤原さとさん

すべての人が“その人らしさを発揮できる学びの場やプログラムを創出することで、よりよい社会の為に活動している藤原さとさんにお話しを伺いました。


プロフィール
出身地:香川県丸亀市
活動地域:首都圏・全国
経歴:日本政策金融公庫にて中小企業・新規事業融資に従事後、米国留学中に国際労働機関(ILO)のマイクロファイナンス部門で少額融資のスキームを調査。帰国後、ソニー(株)本社経営企画管理・戦略部門で、海外企業とのビジネスアライアンスに携わる。長女出産後ヘルスケアビジネスコンサルタントとしてミャンマーで女性のがん死因トップである乳がんの検診事業立ち上げ等を行う。2012年度都内区立保育園父母会長。
2014年「こたえのない学校」を設立。2014年から2017年までアメリカ在住。アメリカの教育現場において、インタビュー・リサーチを行う。
慶應義塾大学法学部政治学科卒
米国コーネル大学大学院公共政策学修士(M.P.A.)
現在の活動:
一般社団法人 こたえのない学校代表理事
一般社団法人 Learn by Creation 共同創設者 理事
座右の銘:手放した分だけ何かが必ず入ってくる(特にないので、本日の気分)

記者:本日はどうぞよろしくお願いします

藤原さとさん(以下藤原敬称略):よろしくお願いします

ミッションは『良質な探求学習の一般普及』

記者どのような夢やVISIONをお持ちですか?
藤原:わたしたちのミッションは良質な探究学習の一般普及なのですが、「探究心」というものは、本来、子どもも大人も関わりなく、誰しもが持っているものと考えています。でも、こうしたワクワクする挑戦的な心は、これまでの教育上の慣習などから抑圧されてしまうこともあります。特にこれからの時代は、不確実性も増していくので子どもたちが自分自身を大事にして、一人一人がよりよい未来を作り上げていくようにしないといけなくなってきていると感じています。その時にとても大事になってくるのが探究心で、それをゆっくりと育てていけるような社会をつくっていきたいと思っています。
記者:具体的にはどんなことに取り組んでいますか?
藤原:スタート時は、小学生のための探究的な学びの場をつくっていたものが徐々に展開し、今は探究的な学びをどのように学校現場で作り、実践していけばいいのかと悩む学校の先生や民間教育者向けに短期・長期のプログラムを実施したり、教育委員会や企業向けに研修をすることが増えてきています。今、時代が要求する探究学習、つまり自ら問いを立てたことについてとことん考えてみたり、自分がやってみたいと感じたことを実行していく学びは、実は私たちが学校であまり経験していません。どちらかというと、みな答えの決まっているものをどれだけ制限時間に正しく解くかというトレーニングを受け続けてきたのではないでしょうか。さらに、そういうことが得意な人が学校という場に順応しやすいこともあって、先生になりやすいという傾向もあります。なので、「答え」が定まっていない学びというものは、どういうものかが体感として分からないケースも多いため、長期のプログラムでは先生たちが、「教え手」ではなく一度「学び手」となって探究的な学びを実際体験しながら学ぶというようなことをしています。ただ、先生はもともとは子どもが大好きで、すべての子どもの成長を心から喜ぶという特性を持っており、「なぜ自分は教師となったのか」という自分の原点を思い出したり、「子どもの幸せを本当に考えた時に自分は何をすべきか」をとことん考えることで大きく変わっていきますね。
記者:今興味をもったれていることはなんですか?
藤原:探究の方向性ということに興味を持っています。法人を立ち上げた当初は「探究」という概念そのものに夢中になりましたが、数年前からふと疑問に思うようになりました。つまり、「探究」というのは原子力爆弾の開発にも使えるし、クローンベビーを産み出すことにもツールとしては使えてしまう。単なる自己利益の追求にも使えてしまう。しかももともと人間の思考に沿ったものなので、パワフルなだけに良くない方向性にいくと、逆向きに走ってしまう。それではまずいのではないかと考えはじめました。

それまでは社会構成的な考え方、「人は経験によって自らの意味合いを構築していく」というものに共感をしていて、そういった中で「善く生きること」を実感していけば良いのではないか、と安易に考えていましたが、もっともっと強力になにか指し示すものがあってもいいのかもしれないとモヤモヤしていた時に、サンフランシスコにあるMillennium Schoolという中学校を訪れ、深いインスピレーションを感じました。

その学校では成人発達理論を応用してカリキュラムを作っていて、たとえばピアジェなどは人間の発達は「脱中心化」の方向性に向かうといっていますが、だんだんに自己中心性を手放し、自我(エゴ)を適切に取り扱うことによって、人間として成長する、ということを教育の軸としていました。最終的にその成長は霊性まで含んでしまうのですが、「真・善・美」ともいうような実在の世界を指し示していました。

今、人工知能時代を勝ち残るための探究学習とかグローバル社会に対応するための教育もありますが、もっと大事なことは、「美しさ」や「正義」、数学者の岡潔さんなんかも仰っていますが、人間の情緒やそのなかでのバランス感覚のようなものが人には必要で、そうしたものを育んでいかなければならないのではないかと考え始めています。「だれかを押しのけてでも自分がのし上がろう」「だれか自分の出したゴミは拾ってくれるだろう」という自分の気持ちに違和感を持つことだったり、「人のために生きた方が、最終的には自分も幸せになれるし自由になれる」という実感だったりします。人の気持ちや痛みがわかる子ども達を育てたいし増やしていきたいんです。


 そうした感性と探究学習が結びついた時になにか大きなことが起きたらおもしろいですね。わたしは大学の卒業論文のテーマがプラトンの「国家」だったのですが、その時は「哲人」なんているわけないじゃないか、と思っていました。ただ、今にして思うことは「哲人」というのはだれか一人の超越者がいるのではなくて、たくさんの哲人がいてもいいのではないか、ということ。社会を司る一人のリーダーではなくて小さな哲人をいっぱい作りたいと思っていて、それを教育で実現したいと考えています。

さとさん一人


記者:
どのような団体を運営し、目標や計画をたてていますか?
藤原:私、計画を立てるのが好きでないんです。ソニーで予算と中期計画を立てる部署に2年いたので技能的にはできます。ただ、私の法人みたいな規模でそれをすることに意味があるのか分からないですね。計画を立てても全然その通りにならないですし。それよりもメンバーや関わっている人たち、そして私がその時々に何をやりたいかっていうほうが大事だと思っています。あまり何年っていう計画は立ててなくて、むしろハプニングを待っているし、ハプニングを楽しんでいることが多いです。

そんな中で日々気を付けていることは、予定をパツパツにしないことです。本を読む時間やぼんやりする時間を作ったりしています。スケジュールでいっぱいだと、チャンスが舞い込んで来た時に受けとれない。だからあそびをつくっておくんです。いいアイディアはタスクまみれの時は殆ど思い浮かばないです。

何かに熱中していたり妄想にふけたりしているときの方がうまくいきます。具体的に何人でやるとか、何個のプログラムやるとか売り上げを上げるとかあまり考えず、ただ赤字にならないようには気をつけています。あとは自分の経験にあまりひっぱられすぎないように、先人の知恵や実践者の経験を尊重することは意識してやっています。
記者:夢やビジョンをもったきっかけは?そこにはどんな発見や出会いがありましたか?
藤原:サラリーマンをやっているときに世間的には面白いと思われる仕事をやっていたのですが私自身のココロが揺さぶられないんです。どうしても他人の評価が気になりながら仕事をしている自分に気が付き、「何のために仕事をしているのか?」「私は何者なのか?」と自問自答を繰り返す日々でした。この様な中で結婚をし、出産をして子育てが始まりました。そうすると今度は子育てで24時間を埋め尽くされるわけです。「自分のスペースが欲しい。」と思っていた時に子どもが通う保育園の父母会の役割が入ってきました。それで園の取り組みやっていたら楽しくなったんです。
そうしながら私の中で子育ての目標が見えてきました。それは、子どもが「自分の何者かがわかり、それを社会との接点の中で表現する手段を持てるようにすることだ。」と。私のように大人になってから苦労するよりも、子どもの頃から自分を見つめる環境に身を置くことで「自分はどうやって生きていくのか」自分で考えていくことが結局は、早期に社会貢献できる子どもになると思ったんです。そこから大人と子どもを繋ぐツールを探していたら探究学習というものを見つけて学び始めました。そして2014年から「こたえのない学校」を設立し活動をスタートしました。

記者:最後に読者へのメッセージをお願いします。

藤原:十代のときは私みたいな変な人と結婚する人はいないし、子どももいないだろうと暗い未来を想像していました。思春期らしいおかしな妄想ですが。食べるために手に職をつけないと思って真面目に勉強していました。そんな私にまさか子どももいて、自分の団体をもってやっているなんて当時の私には全く考えつかなかった人生が今あります。
想像より実人生の方が大変なこともあったけれど楽しかったです。予測が付きにくい時代は不安に思うかもしれないけど、そういう時代だからこそ、楽しむ気持ちを持つことが大事だし未来を変に予測しようとするとおかしくなるから、「答えは自分で作り上げるんだ」くらいの方が精神的に解放された気持ちで生きていけると思います。何が起きるかわからないから楽しみにしていてください。

記者:本日は貴重なお話しありがとうございました。

藤原さとさんの情報はこちらです。
↓↓↓
https://kotaenonai.org/

さとさん3人

【編集後記】
インタビューの記事を担当した、高橋と美談と吉村です。
お話しを伺っていると社会の構造から学校を変革する教育という大きな視点からの話しにすごく共感が生れました。これからの更なるご活躍を心より期待しております。

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この記事は、リライズ・ニュースマガジン“美しい時代を創る人達”にも掲載されています。
https://note.com/19960301/m/m891c62a08b36






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