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Lifehacking Newsletter #61

ずっとやりたかったのですが、なかなか実現できずに放り出していた「YouTube で書評を行なう」という試みを見切り発車で始めてみました。

動画は10分程度ですから、文章にするよりも作るのが楽ではないかと思うわけですが、実際は撮影し、テロップをつけ、レンダリングして、アップロードして、サムネイルをつけてという作業がありますので、文章を書いて遂行するのとほとんどかわらないというのが実情です。少なくとも今は。

しかしそうした手間をかけても試してみたかったのが、ガジェット紹介のYouTubeがあるのだから、本を紹介する短めの動画があってもいいじゃないかという試みです。ジェットダイスケさんよろしく、「ジャジャン!」と本を出すわけですね。

意外なことに、これがYouTubeを検索してもほとんどありません。淘汰されたというわけでもなく、ないのです。人気のあるYouTube動画はバラエティ番組のような作りになっていて楽しいのですが、本当は夢見ていたのは本についてばかり語っているチャンネルや、模型について語ってばかりいるチャンネルといった、オルタナティブなテレビの役割ですので、ないなら自分で作ってしまおうというわけです。

文字で書く書評は引用とともに、その本の魅力と本質を、ネタバレせずに伝えるのが大切ですが、動画で行う場合はむしろ「こういう面白い本があってね」と飲み会で話しているような距離感で話すことができます。

そうやって紹介するとよさそうな本もいろいろありますので、文章の書評とからめて、量産していきたいと思います。まずは100本!目指します(笑)。

知的生活の構築 (1):ピースを意識してみる

知的生活について考える連載。実質の第一回です。

さて、もともとこの「知的生活」というキーワードは去年亡くなられた渡部昇一氏が1976年に書かれた「知的生活の方法」が日本においてはルーツとなっているといっていいでしょう。梅棹忠夫先生の「知的生産の技術」が1969年ですので、その7年後になります。その渡部氏はこの言葉をP・G・ハマトンの著作から継承しており、19世紀イギリスの知的生活に対する態度がこうして底流に流れ込んでいるのです。

渡部氏は若いころドイツとイギリスに留学し、サー・ウォルター・スコットの邸宅を訪問してその膨大な蔵書を目の当たりにした経験なども踏まえて「私的ライブラリーをもつこと」を本の軸に据えています。

それ以外にもさまざまな知的生活に対する警句や、精神論や、感想は散りばめてありますし、それはそれで面白いのですが、つまるところ「知的生活の方法」とその続編の「続・知的生活の方法」は書斎の精神論といってもいいのです。なにぶん古い本ですから、女性に対する蔑視とも受け取れる表現や、時代の違いからやってくる違和感も多々あるものの、この骨子だけはいまも私達が受け取れるものだと思います。

1970年代、しだいに社会が豊かになって、だれでも情報を受け取ることができるようになった時代に、梅棹先生や渡部氏は未来を豊かにする生き方として「情報との向き合い方」「書斎の精神論」を掲げたわけです。

それをいまの時代に置き換えて考えてみましょう。

2018年現代の「私的ライブラリー」はどういう形をとっているでしょうか? そしてそれはどのようにして維持するものなのでしょうか? それが一つのテーマになるはずです。

今も昔も、書籍の重要性は変わっておらず、重要な本を身銭を切って購入し、自分の知的空間を形成してゆくのが基本であることには変わりはありません。

しかしそれを前提として、私たちがアクセスできる知的情報は昔ながらの書籍だけではなく、さまざまなメディアに拡大しています。電子書籍もそうですが、手軽にスマートフォンのなかにためて持ち歩けるところまできた映画の数々、聴き放題のサービスで無限に選び続けることができる音楽もまた、かつてより遥かに膨大です。

それだけではなく、たとえば漫画、アニメ、ゲームといったものも、ブログ、YouTube、ソーシャルメディアも私達の知的ライブラリの一部をなしています。わたしたちの「私的ライブラリー」は、どうやら本棚よりもずっと大きく捉えなければいけなさそうです。

向き合う情報の幅が拡大していることを前提として、どのような知的生活がありうるか? を考えるのが「知的生活の構築」です。具体的には:

- 収入も右肩上がりではないし、永久雇用もない世界で、自分は10年後の自分のためにどんな知をつみあげればよいのか?
- マイホームなんてのぞむべくもない、この小さな部屋で私は自分のライブラリーを構築できるだろうか?
- この年収のうち、どの程度を書籍の購入にあて、どの程度の時間をかけて読み、どの程度の時間をかけて未来への投資を行えばよいのか?
- 書籍だけでなく、ウェブも、他のメディアも、さまざまにあるなかで「見るべきもの」はどう選ぶ?
- 知へのあこがれは、この時代でどのような意味をもつのか?

こうした問いかけを設定することができるでしょう。

読んだことがないかたは驚かれるかもしれませんが、「知的生活の方法」にはライブラリーを維持するための邸宅の設計図に、知的生活を維持するための食事やお酒のとりかたや配偶者の選び方(もちろん男性視点で自分に都合のよい伴侶を選ぶという視点での)といった話題まで含まれていたのですよ。

それを一つ一つ現代の立場から問い直し、未来への可能性として再提案したいというのが、いま考えていることのベースにあります。

ぜひみなさんも考えてみてください。私の「ライブラリー」はどこにある? 私の「ライブラリー」は、これからどう進化する?

次回からは、上にみたような知的生活の束縛条件のいくつかについて触れていきます。

なにか新しい話題がありそうなときに、それを荒削りな形で放り出すコーナーがこちら「早期警戒情報」です。

撮影後にフォーカスを変更することができるカメラ、Lytro を覚えているでしょうか?いまはハイエンドVRカメラに会社の方向性を変えたようですが、ライトフィールドカメラという種類のデバイスとしてはパイオニアの機種でした。

Lytroは一枚の写真の中に深度の情報ももっていますので、普通に印刷したり、「JPEG ファイルを開く」といった感覚で見ることはできません。専用のアプリを利用して見たい場所に焦点をあわせるという閲覧をしなければいけません。

一枚の写真のデジタル情報に、スマートフォンなどの計算力をかけあわせて閲覧する新しいメディアなので、こうしたものを Computational Photography などと言ったりします。

さて、最近アメリカで発売された Apple の Homepod の性能が話題になっているのですが、これはこれで単一スピーカー(2つ購入してステレオにする機能は今後リリース)であるにもかかわらず部屋の空間構造を認識してビームフォーミングをしてくれます。

redditのオーディオオタクスレッドでのHome Podの検証

いうなれば、こちらは Computational Audio というわけです。スピーカーにA8 プロセッサを組み込んだからこそできるわけですね。

こうした、既存メディアに安価な計算パワーを掛け合わせることでエンハンスされた体験ができるものがしだいに増えているような気がします。Computational などと頭にわざわざ付けたりせずとも、常識になりつつあるわけです。

Lytro だって、いまはとても面倒な技術ですが、AR 眼鏡が一般的になればむしろ必須になるわけで、いまはピースがそろいつつある時期といってもいいでしょう。

時代は AI みたいな風潮がありますが、機械学習やチャットボットの技術はそれとなく使うことができる出口を探している段階です。Z80 プロセッサが洗濯機に入っていて消費者としてはそれに気づかないというレベルにまで進んでいる真っ最中というわけですね。

この無言の「Computational」が頭についている分野がいまいろいろ立ち上がっているので、このあたりを注視していると来年あたりのCESを予想することもできるのではないかという気がします。

早期警戒情報でした!

今週は、Modul でSpotifyについての記事がでています。

踊れる曲?歌詞の少ない曲?Spotifyのプレイリストを自動で生成するサービスがすごい | Modul

また、電子雑誌 “flick! digital” のカバンの中身紹介しますというコーナーで登場しております。

電子雑誌 “flick! digital” の「鞄コーナー」で紹介されました

また、5刷5万部を達成した拙著「ライフハック大全」のAmazon Kindle版がただいま半額セール中です!3月8日までですので、興味があるというかたはこの機会にどうぞ。

ライフハック大全―人生と仕事を変える小さな習慣250


ライフハックLiveshow #268 はSpaceXのFalcon Heavyについて、HomePodファーストレビュー、ツイッター初の黒字の詳細、インテルの新しいスマートグラスについての話題などです。

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