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ブブとミシェル〜雨あがりの天使〜【取り急ぎ語らせてください。/第1回】

 マンガライターのちゃんめいが、タイトル通り「取り急ぎ語らせてください。」と感じたマンガを紹介する本企画。読み終わった後の鮮度高めの感情のままに書く、というショートコラムになっています。第1回目に紹介するのはコドモペーパー先生の『ブブとミシェル 〜雨上がりの天使〜』です。


 子どもの頃、童話が怖かった。例えば、かわいい赤ずきんちゃんがおばあさんのお見舞いへいったかと思いきや、おばあさんがオオカミに食べられていたり、しまいにはオオカミの腹を裂いたり、腹に石を詰めたり……。あれ? なんか急に違くない? と。うまく説明のできない、突如ぬるっと境界線を越えてやってくる残酷的な展開がたまらなく怖かった。でも、いつの間にかやばい世界に足を踏み入れてしまったみたいな。怖さと同時に、あの「なんかやばい」という感覚は子どもにとっては良い意味で刺激的で。怖いのに好んでよく読んでいた。

 そんな、子どものときに童話に抱いた感覚を彷彿とさせるのがコドモペーパー先生の『ブブとミシェル 〜雨上がりの天使〜』だ。切り絵や万年筆を駆使して描かれている本作は、温もりを感じる筆致、小さな村でミートパイを焼きながら生計を立てる少年……というメルヘンらしい雰囲気とはうらはらに、堕天使が空から落下してきたり(しかも地上に落下した堕天使は数日後に死ぬ)、その肉を加工してミートパイにしたり(え、具って堕天使だったんかい)。この暗雲がすぐ隣にある感じ! たまらんね。

 他にも、細かすぎる背景描写や世界観設定、この世界で鳴り響く不思議な歌の存在であったり……。子どもの時に童話に感じた刺激はもちろん、「秘密の裏路地を見つけた」みたいな心が湧くポイントがたくさん植っているのである。あと、表紙の質感も素敵なんですよ。ざらっと古書みたいな感じで、なんだか本当にあったのかもしれない、秘密の、謎の昔話に触れているみたい。私と同じように、子どもの頃に童話が怖い! でも好き! というぐるぐるした思いを抱えていた人にはぜひおすすめしたい一冊。


📚紹介したマンガ

「日曜日の朝に堕天使が降ってくる」両親を病で亡くし、孤独に生きる少年ミシェルの住む土地では、土曜日の夜から雨が降り、その雨は日曜日の朝になると堕天使に変わる。堕天使の死骸が散乱するところで卵を見つけたミシェル。そして生まれたブブ。心に深い傷を負った少年と無邪気な堕天使による愛と絆の物語。

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