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付き合えなくていいのに【取り急ぎ語らせてください。/第5回】

 マンガライターのちゃんめいが、タイトル通り「取り急ぎ語らせてください。」と感じたマンガを紹介する本企画。読み終わった後の鮮度高めの感情のままに書く、というショートコラムになっています。第5回目に紹介するのはイララモモイ先生の『付き合えなくていいのに』です。


 突然ですが、みなさん恋愛における「あっ・・・(察し)」っていつ頃習得しましたか? 例えば、この人多分みんなに同じようなLINEしてるんだろうな。この人、私みたいに距離感近い女性あと2〜3人はいるだろうな…….みたいな。後々自分が傷つかなくて済むように、できれば習得しておいたほうが良い、恋愛における「あっ・・・(察し)」というスキル。

 アラサーになった今では、ある程度そのスキルが身についているなという気がするけれど、大学時代はそんなもの持ち合わせていなかった気がする。それゆえに、うっすら恥ずかしくて、痛くて、しんどい恋愛をたくさんしたように思う。そんな当時の恋愛を再上映されているかのような気持ちになるのが、イララモモイ先生の『付き合えなくていいのに』なのである。

 主人公・えりこは大学生になったばかり。友達と軽音部の飲み会に参加したところ、高校時代に気になっていた同級生・北山と再会する。好きなバンドが一緒なことから、聖地巡礼と称して一緒に出かけたり、バンドを組んだり……..あれ、これ良い感じじゃない? と、えりこは浮き足立つのだが、メッセージの返信が遅いことや、SNSで頻繁にやり取りをしている女性・詩歌の存在を発見し一気に不安になっていく。そんなモヤモヤをした日々を過ごしていると、軽音部の良い人だけどあまり興味ない男鹿先輩からデートに誘われて心が揺らぎ始める。

 おい、えりこ。仲が良いのと恋愛関係になるのはまた別なんだ。そして、北山みたいに、身体的にも心理的にも人との距離感がバグっている人は天性の恋愛上級者だから今の君には無理、もっと装備を増やすんだ。あとな、男鹿先輩は良い人だけど、良い人と好きになる人ってイコールじゃないからな、でもご飯行くくらいならまぁ良いんでないか?

 『付き合えなくていいのに』を読み進めていくと、作中で描かれる恋愛模様、コミュニケーションや発生するイベントがあまりにもリアルすぎて、心のなかでこんなお節介の声が止まらない。そして、お節介の声が止まらないのは、今の私に「あっ・・・(察し)」というスキルがしっかり身についていることの表れなんだろうなと思う。

 えりこを通して思い出す、うっすら恥ずかしくて、痛くて、しんどい大学時代の恋愛。でも、えりこを見ているとそんなに悪いもんじゃないかもなとも思うのだ。「あっ・・・(察し)」というスキルがなかったからこそ、恋愛に突っ走って盛大に空回りしてみたり、よくわからん万能感みたいなものが湧いてきて自信過剰になってしまったり。

 決してスマートではないけれど、喜怒哀楽に溢れてなんてドラマチックな日々だったんだろう。そして、この日々のおかげで、自分が傷つかないための「あっ・・・(察し)」というスキルを習得できたのだから。なんだか必要な修行の日々だったように感じて、うっすら恥ずかしくて、痛くて、しんどい恋愛も誇りに思えてくるのだ。


📚紹介したマンガ

なんで私は、クズばっか好きになっちゃうんだ~!? 誘えば一緒に遊んでくれる。帰るときは「またね」って言ってくれる。私しか知らない秘密も教えてくれる。でも、私のこと好きなわけじゃないんでしょ?そんな「顔良距離感バグり男」に沼っている、もしくはかつて沼ったあなたのための、共感度爆高(ばくたか)ノンストップ・ラブコメディ!!

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