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三河安城駅を定刻通り通過しました

 毎月第2土曜日、午前9時発の「のぞみ」で大阪へ。日帰りで東京にとんぼ返り。10年前、8ヶ月間これを続けた。

 大阪の叔母の病状が悪化した。幼い頃から可愛がってくれた、大切な人だ。私が見舞ってしんみりと昔話をしたら、叔母は自分の病気の深刻さを意識することになる。私は新幹線での2時間半で気持ちをまっさらにしてから、病室に入ることにしていた。

 車内販売のカートを覗き、富士山を車窓から眺めるお決まりの新幹線タイムも楽しむようにしたけれど、何よりも定例の車内放送を聞く時が一番ホッとした。名古屋到着の前の「ただいまこの列車は三河安城駅を定刻通り通過しました」の放送。今月ももう少しで叔母に会える。

 不安や切なさに必死に蓋をしようとしていた私に、定刻放送が「心安」を運んでくれた。その後、幸運にも叔母は退院でき、今も一病息災の日々を過ごす。年末に訪ねる時は「こだま」に乗って、三河安城で下車してみようか。