#15 聖夜

残暑が厳しかった秋頃だったでしょうか
ミーグリという最高峰のステージに挑もうか悩んでいた
待望の2ndアルバム発売が決まりミーグリ開催を知る
ライブ参戦も重ねてきたが推しである東村芽依さんと対面して会話するなど画面越しでも心臓が持ちそうにない
そもそもライブ参戦すら職業オッサンという肩書きと自覚で何度も見送ってきたのだから
実際に参戦してみると同世代もいることを知り安堵したのだが…
ミーグリという私的見解では最高峰と言える推し活は
その魅力に惹かれながらも指を咥えて羨望する以外に選択肢はなかったはずだった

日向坂46を応援したい気持ちはライブ参戦を重ねる度にますます強くなっていることを感じてはいた
少しでも彼女達の力になるのならとグッズ購入に課金ゲーム、SNSもはじめた
ハッシュタグの影響力なども大きなものであることを知り微力ながらも一助になればと自分なりの推し活ステージは楽しんでいる

人間ってのはつくづく欲深い生き物だと思う
積み上げた経験値でフィールドに慣れてくると
新しいステージの扉を開けたくなるものだ
おひさまLv.なるものが有るとするならば
最初の冒険ステージをクリアしたLv.5程度だろうが
基準も定かではないが感覚的に…
レベルアップして次ステージをクリアしたい
そんな欲は沸々と湧いてくる
いつかは最高峰ステージの扉を叩いてみたい
その扉の先にある禁断の果実を食してみたい
そんな挑戦欲に駆られる

職業オッサンLv.5というステータスは
二の足踏まざるを得なかった
勇み足で事故りたくないなという臆病風に吹かれながら
最高峰を登攀し終えたおひさま方の歓喜の声
指を咥えながら"いいね"を押していく虚しさ
そんな心境を吐露するように
「ミーグリに人生初参加しようか悩む」と呟いたみた
ありがたくもそんな些細な呟きに頂いたコメントが
ボーナス経験値となって背中を押してくれた
最高峰のステージに挑戦してみようと決心し
2ndアルバムを複数購入するという人生初の経験で更なるレベルアップを試みた

人生初のミーグリ
最高峰のステージをどのようにクリアするのか
情報収集は重要な武装だろう
検索してみると沢山の情報を手に入れることができた
"タブレット"はある
"イヤホン"もある
"本人確認"も問題ない
"場所"
"通信環境"等々
ハード面としての準備=持ち物は既に入手している
いつだって重要な緊張課題はソフト面だ
"何を話せばいいのか?"
"少ない時間で伝えられるのだろうか?"
"推しとの会話はスムーズに進むだろうか?"
何よりも
"心臓が持つだろうか?"
村人Aに話しかけるのとは訳が違うだろう
無謀な挑戦となるのか?
登攀クリアできるのか?
そんな杞憂を抱えたまま最高峰の麓まで辿り着いてしまう

人生初のミーグリは奇しくもクリスマスイブ
クリスマスソングが脳内BGMとして流れだしている
気分は勇者だ

冷え込み厳しい朝から湯船に浸かり身を清め
公式ロングTシャツと推しメンタオルを装備
伝説の剣は手に入れられなかったが
麓の町なるSNSを開くと登攀者の心得を手に入れた
「ミーグリとは戦である」
なるほどと妙に説得力のある心得に勇気をもらい
最高峰への一歩を踏み出した

最高峰第壱之扉がゆっくりと開いていく
もう後戻りはできない
否しない
事前に入手したチュートリアルを読み返す
"待機5人、待ち約5分"と示された推しのバナー攻撃
ドキドキと鼓動が早くなっていく
「待ち約5分って早くない?」と独り言攻撃を放ち
バナー攻撃を退けて最高峰の奥へと歩みを進めていく
"推しである東村芽依さんからどう呼ばれたいか?"
という問いにリアルな名前をひらがなで入力した
そもそも呼んで貰えるかも分からないが
呼んでくれたならこんな嬉しい攻撃はないだろう
後に大ダメージを与えられるのだが…
この時はまだ知るよしもない
"本人確認"なる検閲を突破し待機部屋へと進んだ
"現在14番目、待ち時間約8分"と示されている
鼓動がさらに早くなるのを感じながら
正座スタイルで最高峰の扉が開かれるのを待ち受けた
「次はあなたの番です」との魔法に身体が強張る
未曾有の経験に心臓が爆発してしまいそうだ
カウントダウンがはじまった
神々しいハッピーオーラで身を纏った
軍団長・東村芽依さんがキュートなパジャマ姿で現れた

「おはよー」
「はじめてミーグリ?嬉しい〇〇さん❤︎」
「人生初です!」
「えー嬉しい❤︎あタオルも〜」
「ずっと応援してました!」
「ありがと〜また来てねぇ❤︎」
「また来まーす!」

扉の奥へとフェードアウトする軍団長
見惚れるLv.5オッサン

最高峰第壱之扉からキュン死の生還を果たした
ドンドンとバスドラのようにビートを刻む大きな鼓動
軍団長の魔法が解けない
語尾にハートマークが見えるテクニカルな攻撃

第壱之扉を開けてハッキリしたことがある
推しの"可愛いが過ぎる"という魔法は瞬時にHP1になる
抗いようのない魔法をノーモーションで発動される
その破壊力はご覧の通りだ

今まで職業オッサンという肩書きが故に
敢えて"可愛い"などという形容を避けていたがもう抗う力は無くなっていた
推しの東村芽依さんが"名前を呼ぶ"究極攻撃を繰り出す
その破壊力は凄まじいものだった
ニヤけながら遠のいていく意識の糸を懸命に掴んでいた
"可愛いが過ぎる"
想像はしていたがここまでの破壊力だったとは…
幸せ過ぎる究極の一撃を食らった衝撃に
未だ心の震えがとまらない

第壱之扉からキュン死帰還しても魔法は解ける気配がない
鳴り止まない鼓動
「これが最高峰か…」
しばし余韻に浸りながら第弍之扉に再び挑もうとした

そんな矢先に扉奥からの無差別動画攻撃を受ける
「めいーくりすます❤️」の魔法に心を縛られた

もはや武器も防具もつけずにラスボスに臨むようなものだ
3・2・1とカウントダウンがはじまる
再び神々しいハッピーオーラを放ちながら
軍団長・東村芽依さんがキュートなパジャマ姿で現れる

「めいーくりすます!」
「めいーくりすます❤️おかえり〜❤︎」
「ただいま〜」
「あ!タオル増えてる〜❤︎ありがと〜」
「うん!SASUKE楽しみ〜」
「ありがと〜観てね〜❤︎」
「良いお年を〜」

東村芽依さんいやもうめいめいと呼ばせて欲しい
扉の奥にフェードアウトしていくめいめい
心奪われめいめいの虜となって第弍之扉から帰還した
おそらく黒瞳は❤︎マークに変わっていただろう…

究極魔法"おかえり〜❤︎"
Lv.5オッサンに放つ魔法じゃないよ〜

最高峰第弐之扉からも無事?キュン死帰還したが
もはや第参之扉を開けるチカラは残されていなかった
かけられた魔法は解けることなく心を奪い続けていく
めいめい可愛いが過ぎるよと

「嗚呼、これが最高峰かぁ…」

人生初の"ミーグリ"という最高峰のステージ
次はもっと"おかわり"したいと密かに決心し
職業おひさまLv.5の幕は閉じたのだった


最後に
隠れおひさまからひなたの方へと
歩みを進めた1年間
自分なりに大きく前進したと褒めてあげたい
後押ししてくださったおひさまの皆様に深謝です
明年もまたハッピーな推し活ならぬおひ活を楽しんでいきたいと思います

こんな稚拙な乱文乱筆にいいねをくださった方々にも深く感謝しながら明年もどうぞ宜しくお願い申し上げます

うめぃ🍓

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